第152話 凄絶な光景(前編)
頭の中でイメージしながらご覧になっていただければと思います!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
そんな中、捜索対象であったギンゼルさんが見つかるも、意識不明の重体であり、“ニコテク”と言う違法薬物が検出されるという事実も発覚した。
「ギンゼルさん、息を吹き返してくれますかね……?」
「主治医の話によると、今日が山場になるって言ってたんだ。生きながらえてくれるか、死ぬかなんだけどな……」
「そうですか……」
夕方、ウェシロスを拠点にしている宿で俺はクルスと同じ部屋にいる。
正直、ギンゼルさんが意識不明の重体で運ばれたって事実だけでも衝撃なのに、加えて違法薬物が彼の体内から検出と衝撃だらけだ。
「クルス。あのさ……」
「はい?」
「前にあの集落へ赴いた時、クルスって馬車の一台を凝視していたはずだけど……。ん?」
俺はクルスに気になっていた質問をしようとした中、若干強いノック音がして扉を開けた。
「トーマさん!クルス!」
「セリカ!皆、どうした?」
そこにいたのは真剣味の中に焦燥が混じったような表情をしているセリカとミレイユ、エレーナがいた。
「治療院で意識不明だったギンゼルさんが……」
「「!?」」
俺達は治療院へと駆け出していった。
駆け付けた時にはウィーネスさん達が先に待っており、俺達は不安と助かって欲しい願いを抱きながら病室に入っていく。
「失礼します!」
「トーマ!皆!」
「ギンゼルさんが……」
「落ち着いて!」
ウィーネスさん達が落ち着かせようと窘めてくれた。
俺達はすぐに落ち着き、視界に映る光景を見渡す。
「来てくれて……ありがとう……」
「ギンゼルさん……」
そこには目を覚まし、上体を起こしたギンゼルさんの姿があった。
しかし、逞しい身体つきの大半は残しつつも、顔の右眼は眼帯を付けられており、左腕は指先から肘の下までが欠損した、余りにも痛々しい様相だった。
それでも、生きていて良かった気持ちの方が勝った。
「生きていてくれて、本当に良かったです……」
「ありがとう……」
俺はギンゼルさんの下に歩み寄り、彼が前にかざした右手を取った。
様相はおぞましさが残りつつも、生命が無事で本当に何よりだ。
それから数分が経ち……。
「ギンゼル、今回は本当に大変だったわね……」
「はい……」
「生きていて何よりですよ……」
「ご心配おかけしました」
ギンゼルさんは申し訳ないような表情をしているが、今はそれをされてもこっちが申し訳ない気がしてならない。
助けるために、動いているのだから。
それからウィーネスさんが口を開いた。
「ギンゼル、一体何があったの?もちろん、言いにくいなら……」
「いえ、その……クッ!」
ウィーネスさんに諭されるままにギンゼルさんが語ろうとした時、彼は咄嗟に口を覆っており、必死な様子だった。
吐き気を堪えようと必死にも見えた。
「ハッ……ハッ……」
「ギンゼルさん……。ご無理は……。何なら明日とかでも……」
「いえ、話します。話させて下さい!俺が見て味わった事を聞いて欲しいのです!」
「「「「「……」」」」」
そして、聞かされたその経験した話は、余りに凄惨な事だった……。
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回想———————
ギンゼルさん達はクエストのためにウェシロスとティリルの間にある農村まで足を運んでいた。
同じ仲間であるアミナさん、ケニーさん、ネイカさんと共に一緒に達成せんと意気込んで臨んでいた。
「オラ!」
「ハッ!」
「援護するわ!」
「「「「「グギャァアア!」」」」」
ギンゼルさん達は農村に被害を及ぼしているモンスターの討伐をするため、近くの竹林まで赴いていた。
そして、見事な連係プレーでスムーズにモンスター達を倒していった。
「ふう、これで全部だな……」
「流石ね!ギンゼル!」
「回復するから待ってて!」
「ありがとな!」
脅威となるモンスターもいなくなり、達成感に包まれ、後は依頼主に完了を報告してギルドに戻るだけとなった。
その時だった……。
「「うぐ?」」
「アミナ?ケニー?」
農村に戻ろうとした時、アミナさんとケニーさんの肩に一本の矢が突き刺さっていた。
『アーチャー』のギフトを持ち、気配を探る事に優れているはずのネイカさんですら全く気付かないほどの一射だった。
その瞬間……。
「冒険者を見つけたぞ!」
「4人か……。見た感じ近接戦や魔法が得意そうなのもいるな!」
「え?」
「何なんだ?お前達は!?」
ギンゼルさん達が気付いた時には、下卑た笑みを見せながら武器を構えるならず者達がその周囲を取り囲んでいた。
人数は5人おり、その内の一人のリーダーらしき男性が明らかに突出した不気味な覇気を纏っていた。
黒衣に身を包み、フードで顔は隠れているが、ギンゼルさん達が強敵と認めるには充分なモノだった。
それ以外の4人も同じくフードで顔は中々見えない格好をしている。
「一体何者だ?」
「名乗る必要はない……。我々の目的のために捕まってもらう!やれ!」
「「「「ヒャハハハ!」」」」
ギンゼルさん達はいきなり襲われ、先手を打たれたアミナさんとケニーさんを守りながら戦うのは流石に分が悪すぎた。
「ぐっ!」
「キャ!」
「ギンゼル……。ネイカ……」
数の差に加え、状況の悪さもあってギンゼルさん達はボコボコにされてしまった挙句に縛り上げられてしまった。
「しっかりと拘束しろ」
「「「「「ヘイ!」」」」」
「皆に手を出すな!」
ギンゼルさんの叫びも空しく、全員が口や視界を閉ざされ、最早抵抗も難しい状況となってしまった。
そして、なすすべなくどこかへと連れ去られてしまった。
「うぅ……。ここは……?」
眠らされてそれから何時間が経った頃には、ギンゼルさんは一つの部屋にいた。
薄暗い明かりのみが灯された石造りの一室であり、広さもそこそこにあった。
ギンゼルさんは木製の柱に縛り付けられた上に、手首には禍々しい模様が刻まれた腕輪を付けられている。
「気付いたか、お前さんも……」
「ここは一体……?」
ギンゼルさんの隣には一人の冒険者らしき男性であり、その人も同じ状況だった。
見渡すとギンゼルさんを除いた、男性2名と女性2名がおり、同じように身動きが取れない状態となっている。
装備からして、全員が近接戦に向いたギフト持ちだと直感し、全員がいくらかの傷を負わされており、恐らく自分と同じ経緯で捕まっている事を悟った。
加えて、俺達の腕には歪な紋様をした腕輪をはめられている。
「やぁ、お目覚めかね?諸君!」
「!?」
部屋の天井近くには、大きな映写機のような魔道具があり、そこには仮面を付けた一人の男性が映っている。
「何だここは……?これはどういうつもりだ?」
「そう慌てなくてよい……」
会話もできる事から、映像に映る人物と繋がっているのだけは理解できた。
「俺の仲間はどうした?何の目的でこんな事を!?」
「アタシの仲間が3人いるはずよ!どこにやったの?」
ギンゼルさんの隣で縛られている冒険者の男性と女性が声を張り上げる。
いきなり見覚えのない不気味な部屋で縛り付けられたらそう言い出すのは当然だ。
「全く冒険者と言うのは野蛮でしょうがない。では説明してやろう……」
映像越しの男は相手を蔑むように口角を釣り上げている。
そして、ある言葉を告げた。
「今から冒険者の諸君らで……。デスゲームをしてもらう……」
(は……?)
余りにも現実感が乏しく、衝撃的な言葉をぶつけられ、ギンゼルさん達は呆然となった。
そして、短いようで長いような凄惨な光景を見せられる事になってしまう……。
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