第150話 救急搬送された同胞
事態が動き出そうとしています!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
ウェシロスに入り、捜索を始めてから数日————————
冒険者ギルド【ティア―オブテティス】・執務室——————
「なるほど……。関連しそうな要素はあるけど、決定的となる証拠は無いと……」
「はい……」
「でも、何もないところから少しずつ前進しているのは確かよ。引き続き協力して頂いて本当に感謝しているわ……」
「いえ、とんでもございません」
俺達はウェシロスに拠点を置いている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダさんに現状の報告をしている。
俺達は深刻な表情をしているものの、ヒルダさんは柔和な表情で、手を貸してくれている事に感謝していた。
「その集落のような場所、クジャール伯爵家の領地の一部よね……?」
「クジャール伯爵家?」
ヒルダさんの口から貴族の名前が出てきて、俺はエレーナの方を見た。
貴族関係になったら、親交のある伯爵の爵位を持つロミック様の娘であるエレーナに聞く事にしている。
「クジャール伯爵家はこのウェシロスを中心にいくつもの町や村を治めている貴族と言うのは聞いた事があります。わたくし自身は面識ございませんが……」
「そうか……」
流石のエレーナも、クジャール伯爵家に関する情報はそれほど持っていなかった。
ヴェヌトイル商会は数年前から宝石や高級な嗜好品なども取り扱い始めるようになり、
それをきっかけに貴族を始めとする富裕層との取引も拡大していったとの事だ。
クジャール伯爵家もその顧客の一つらしい。
「そのクジャール伯爵家の当主であるポドルゾ様はヴェヌトイル商会とも親交が深く、その派閥貴族とはよく取引しているって聞いた事があるわ……」
「クジャール伯爵家かぁ……」
伯爵貴族と言うこれまた予想外な要素が出た事で、俺達の表情も引き締まっていく。
それから俺達はその集落へ再び足を運ぼうとした時だった。
「失礼します!」
「はい、どうぞ!」
扉がノックされ、ヒルダさんが入る許可を出すと、一人の女性が入ってきた。
【ティア―オブテティス】のギルド職員だ。
「どうしたの?」
「それがですね……」
ギルド職員がヒルダさんの下に近付き、耳打ちしている。
次の瞬間……。
「それは本当なの?」
「はい、確かに先程入ってきた情報です!」
「分かったわ。ありがとう!仕事に戻りなさい!」
「失礼します!」
ヒルダさんが確認し終えると、ギルド職員は仕事へと戻っていった。
するとヒルダさんは、俺達に向かって真剣な眼差しをしながら口を開いた。
「皆、聞いて欲しい事があるの!」
「はい……」
俺達は固唾を飲んで向き合う。
「ギルドの近くにある治療院で、行方不明になっていた冒険者の一名が意識不明の重体で運ばれたわ。その人物はあなた達が所属する【アテナズスピリッツ】の冒険者らしいのよ」
「「「「「え?」」」」」
正に青天の霹靂と言っていい報せだった。
俺達が探している同じギルドのメンバーが見つかったという内容だった。
しかし、意識不明の重体と聞かされて驚きがただただ湧いてくる。
「ウェシロスの治療院はここから出てすぐに東よ!行ってあげて!」
「分かりました!皆、行くよ!」
「「「「「ハイ!」」」」」
ヒルダさんに治療院の居場所を教えられると、ウィーネスさんに促される形で俺達も駆け出していった。
「一体なんだって急に……」
「分かりません!でも、行ってみるしかないです!」
息を切らしながら走る俺達は運ばれたと言われている治療院へと辿り着いた。
「すみません!冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属している冒険者が運ばれたと聞いて参りました!我々と同じギルドの仲間なんです!」
「少々お待ちください!確認します!」
中に入るや否や、ウィーネスさんは受付の女性に詰め寄る。
確認が終わり、教えられた部屋の扉の前に辿り着いた。
しかし、扉は固く施錠されており、『治療中』の電灯がついたままだ。
「まだ治療中か……」
(一体、誰が運ばれたんだ……?)
俺達は祈るような気持ちで治療が終わる時間を待ち続けている。
着いてから数時間後……。
「あっ。電灯が消えた」
「治療が終了したみたいですね……」
治療が終わった事を教えるように、電灯の光が消えた。
そして扉が開くと、治療したであろう人物が数名出てきた。
「あの、運ばれてきた冒険者と同じギルドに所属している者です!容体は……」
「まずは一命を取り留めました。ただ、今日が山場になるかと……」
俺達はそれを聞かされて、その場で一時は押し黙った。
それからストレッチャーに乗せられた患者を見て、俺達は絶句した。
「ぎ、ギンゼルさん!?」
それは捜索対象となった俺達と同じギルドの冒険者であるギンゼルさんの酷くやられ、変わり果てた姿だった。
治療を施された事で傷は概ね治っているものの、顔の右半分は包帯でグルグル巻きにされており、左腕は指先から肘の下までが欠損している。
意識不明の重体となっているギンゼルさんを乗せたストレッチャーは淡々と入院させるための部屋へと運ばれた。
「何だよ、あの様は……」
「酷い……」
「何をされれば、あんな……」
セリカ達も恐ろしさと憂いが入り混じったような表情をしており、俺自身も深刻な顔をしている。
そこへ治療をしたと思われる主治医の男性が歩み寄ってきた。
「あの、もしかして、患者様の関係者でございますでしょうか?」
「はい。そうです……」
「同じギルドの冒険者です」
「分かりました。詳しい状況をご説明いたしますので、どうぞ別室へ……」
「「はい!」」
同じギルドに所属し、それぞれの冒険者パーティーの代表として、俺とウィーネスさんの二名が話を聞く事になった。
セリカ達は待合室にて待機する事になった。
俺とウィーネスさんは主治医に促される形で別室に案内され、すぐに運ばれた際の状況を含めての説明を受けた。
「治療は一通り終えましたが、今日が山場だと思って頂きたいです。ただ、右眼は潰されており、左腕の上腕部分は無かったがために欠損してしまったままとなってしまいました……。」
「そうですか……」
「ウェシロスの近辺にある海辺で発見されたとの事ですが、腕は水棲系のモンスターによって失ったと捉えてよろしいでしょうか?」
「そう考えられるのが妥当でございます」
主治医曰く、腕は水棲系のモンスターによって噛み千切られたと説明された。
続いて……。
「加えて、患者様にはこのような物が検出されました……」
「「ん?」」
主治医から見せられた検査結果を示す紙を見た。
「これって……?」
俺はその結果を見せられ、衝撃が身体中を駆け巡った。
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