第147話 マーカスの名前
このマーカスと言う冒険者ですが、後に目を離せない人物となっていきます!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
ヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオ・ヴェヌトイル様と話をする機会を得た末、手掛かりを得る事が出来た。
拠点にしているウェシロスの宿——————
「え?【ティア―オブテティス】に所属しているマーカスさんが……?」
「まぁ、少し挙動不審なところはあったけど、まだ確証は持ち切れなくてね……」
「何とか探ってみようと思っている。トーマ達の方はどうだ?」
「俺達の方も、確信はまだ持ち切れていませんが……」
俺達はウィーネスさん達と合流して成果を報告し合った。
そうして結果や思った事を伝えた。
「それが本当の本当ならば、看過できないな!」
「本当にそうなら、見過ごせないって言うか、スルーしていい事ではないわね!」
「えぇ、そうですね……」
(マーカスさんの事も気になるな……)
ウィーネスさん達も調査の結果、明確な手掛かりこそないものの、ウェシロスに拠点を置いている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のBランクパーティー【スターレック】の一員であるマーカスさんの様子がどこかおかしかった事を共有された。
俺達も調査の結果を伝えた。
「大きな商会が在庫管理のために小さな土地を丸ごと保有しているパターンは珍しい事ではないけど、どこか妙だよな……」
「もしかして、急激に拡大している事と冒険者達が行方不明になった事と何か関係あるのかな……」
「まだ憶測の段階よ!第一に優先すべきなのは、アタシ達と同じくギルドに所属する冒険者達の行方を掴む事!明日は【ティア―オブテティス】に赴いて、ヒルダさんに進捗を共有しに行こう!」
「「「「「ハイ!」」」」」
ウィーネスさんはそう言って話を切り上げた。
ウェシロスを拠点にしてから数日経っているが、気になる話や事実は数点掴めても、決定打となる要素が見つからないのが現状だ。
分かりやすく現すならば、判明している数々の要素となる点が浮いたままの状態と言ってもいい。
何か一つの繋がる線があれば、解決に向かう可能性も高まってきた。
何にしても、ギンゼルさん達の足取りをどうにかして見つける事が改めて急務となった。
同時刻———————
ウェシロスから少し離れた場所に大きな屋敷がある。
爵位を授かった貴族が住まう屋敷のように大きく立派な外観をしている。
その屋敷内の一室にて、ゲルグオ様を含めた3人の男性が食事をしている。
一人は濃紺を基調にした仕立ての良い服装に身を包んだ青年であり、もう一人は茶色を基調にしているが、若干の使用感を思わせるスーツのような服装をしている体格の良い青年であった。
「最近はどうだ?お前が所属している冒険者ギルドの冒険者達は活躍できているか?」
「はい。私が所属する【ティア―オブテティス】の冒険者の皆様は、ヴェヌトイル商会の直営店で手に入れている武具やアイテムのお陰で成果を出しております。かく言う私も、クエストで大きな成果を安定的に出せるようになっております……」
「それならばいい。キゼオロの足も引っ張るなよ……」
「心得ております……」
「そうでなきゃ困るよ。俺が将来的にはもっと大きく有名になるヴェヌトイル商会の会長の座を継いで、お前が冒険者としてウチが扱う武具やアイテムの凄さを証明していくのが必須なんだからしっかりやれよ……」
「はい、義兄様……」
そう呼んでいるのは、冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属するBランク冒険者であるマーカスさんだ。
普段の冒険者として活動しているような鎧姿ではなく、お金持ちの息子のような上質な衣服に身を包んでおり、所作も良い。
しかし、その表情には少なからぬ陰りがあった。
「ちなみに、何度も言うが人前ではお前がヴェヌトイルの名前を出すなよ。子宝に余り恵まれなかった父上が、跡継ぎを用意するために産んだ愛人のガキがヴェヌトイルの名前を語られちゃ堪ったものではないからな。そうですよね、父上……」
「あぁ。商会の息子、いや、私の義理の息子の分際でヴェヌトイル家の足を引っ張るような真似をするのは許さんからな……」
「はい……」
マーカスさんはゲルグオ様と義兄のキゼロオ様にプレッシャーと家族関係を否定されるような言葉をかけられ、平身低頭になっている。
「お前に期待しているのは冒険者としての実力と我々が手掛ける商会の系列店が扱う武具やアイテムの素晴らしさを広めていく事だ。それ以外に価値はないと思え……」
「はい……」
そこにあったのは家族団欒の食事なんかではなく、ビジネスライクな会食のような雰囲気であり、明らかに肩身の狭い空間に身を置かれているマーカスさんだ。
テーブルに出されている食事やワインは豪勢であり、いかにも美味しそうだが、マーカスさんはそれらを味わう余裕もない様子だった。
「ご馳走様でした……」
「明日の朝には出て行きなさい。誰にも見つからないようにするようにな……」
「承知しました……」
「それから、お前のパーティーのリーダー君にもよろしく言っておくようにもね……」
「はい……」
ウェシロスに拠点を置く冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に籍を置くBランク冒険者、マーカス・クレヴァン。
しかし、それは冒険者として活動するための名前である。
(俺は一体……。いつまでこの呪縛に縛り続けられなければならないのか……?)
彼の本名は……。マーカス・ヴェヌトイル。
破竹の勢いで名を轟かせているヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオ様の義理の息子だった。
しかし、その関係は血が繋がっていない事を加味したとしても、家族と呼ぶには余りにも淡泊であり、冷ややかであった。
そして、マーカスさんの歩んできた人生は、幸福とは胸を張って言える内容ではなかった。
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