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第143話 会長との対談

商会の会長との対話がメインです!

俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。

Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。

ふとしたきっかけで、ヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオ・ヴェヌトイル様と話をする機会を得るのだった。


ヴェヌトイル商会本部・応接室——————


(まさか、ヴェヌトイル商会のトップとこうして話せる機会を不意に得る事ができるなんて……。何たる僥倖だ。エレーナ、マジで感謝する!)


手掛かりを掴むために商会の本部まで来たものの、ゲルグオ様がエレーナの姿を見た事で、友好的に振舞った。

その変化に驚いたが、今こうして話し合える機会を手にする事が出来た訳だ。

それから応接室に繋がる奥のドアが開いた。


「お待たせしたね……」

「いえ、滅相もございません」


応接室に、ゲルグオ様が現れた。

その様相は最初に俺達に見せたモノと打って変わり、安心感を持って欲しい思いを込めた気さくで抱擁感を感じさせようとするための笑顔だった。

それからゲルグオ様もソファーに腰掛け、俺達と向き合った。


「まずは、我が商会まで足を運んでいただき感謝する」

「こちらこそお招きに預かり、ありがとうございます!」


俺達はゲルグオ様に対し、礼儀正しく挨拶をした。

まさかヴェヌトイル商会のトップとこうして話ができるのは、幸運そのものだ。

それ自体は喜ばしい事だが、これだけでは終われない。


「初めてヴェヌトイル商会の本部まで来て、その直営店舗を複数見て回りましたが、どこも素晴らしいです!品揃えも良いですし、希少価値が高い武具やアイテムもありますので、見ているだけで楽しい気持ちにさせてくれました!」

(本当に見ただけで買ってはいないけどね……)

「そうか……。お眼鏡に叶いそうなモノが見つかりそうで何よりだよ」


俺はまず、ゲルグオ様の心を解し、警戒心を下げさせる事から始めた。

相手は商会のトップ、引いては商売を生業とする商売人の中でも百戦錬磨。

いきなり切り込むよりも、まずは懐に入り込むためのきっかけを掴んでいく。

下心を見せず、対等もしくは良質な取引をしていきたい姿勢をしっかり見せていくのは営業の基本。

前いた世界で営業の仕事をしていた時のノウハウの一部を使わせてもらう。

少しの間、互いの緊張を解すためのやり取りを交わしていた。

しかし……。


「なるほど……。そう言う事ならば、君とはそれ以上話す事は無いように思えるが……」

「いえ、それは……」

(ダメだ。切り込むタイミングが掴めない……)


会話を持たせる時間は数分しか持たなかった。

相手は相当な勢いで力を付けているヴェヌトイル商会のトップであるゲルグオ様だ。

数多の商売は言わずもがな、損得が絡んだ話にはかなり敏感であるが故、会話の落としどころや体裁よく話を切り上げるための立ち回りの上手さは流石であった。

実際、俺自身もゲルグオ様のような地位も信頼も高い相手との交渉を交えた話し合いは今まで経験がなかった。

俺達の印象をこれ以上悪くさせないようにするためにも、ここで切り上げるしかないと思った時だった。


「そんな事はございませんわ。わたくしから見ても、ヴェヌトイル商会が扱う武具やアイテムはどれも魅力的に感じますよ……」

「!?」

(エレーナ?)


エレーナは不意にゲルグオ様を、ヴェヌトイル商会を持ち上げるような発言をした。


「最近ではお父様が治める領地でも、ヴェヌトイル商会の販路を含め、様々な恩恵をもたらしていると、拠点にしているティリルでも良い評判を生んでおります。お陰様で冒険者だけでなく、民の方々にも良い方向へ向けていると存じております。それもゲルグオ様の手腕あってのものと感じております」

「はっ?それは恐れ入ります……。ハイレンド伯爵家のご令嬢からそう評価を頂けて私も嬉しく存じます……」

(え?エレーナには、てか何だ?権力者の関係者には随分と低姿勢なような……)


エレーナと相対している時のゲルグオ様は随分と低姿勢になっているように見えた。

ヴェヌトイル商会はこの数年で勢いを付けており、発足当初を含めれば若い部類の組織であるのは周知の事実だ。

今では貴族とも取引していると言われているが、取り入るきっかけを掴もうと必死に見えたとも思えた。

良く言えば上手くやるためのご機嫌取り、悪く言えば媚を売っているとも見て取れた。

小物と断ずるつもりは一切ないが、これも商売魂の一種とも思えなくはなかった。


「我々もティリルを含め、商会の発展の為に、健全な商売をしていけるように努めております。我が商会も武具の生成も担うようになっておりますので、それを活かして益々の発展とご愛用される皆様に重用頂けるように努めております!」

(エレーナがハイレンド伯爵家の実子と分かっていての振る舞いと思うが、これは……)


ゲルグオ様の振る舞いや発言そのものはしっかりとしながらも毅然としているように見えるため、商会のトップとしての威厳はしっかりと保てているのは分かる。

だが、媚を売るのに必死とも見て取れる。

媚を売ると言う表現自体、聞こえが悪いのは分かっているつもりだ。

そのままに聞けば、弱者が強者に取り入るための狡いやり方と見えるのは確かだ。

だが、言い換えればそれは、生き延びる及び今以上の発展を目指すための必要な行動とも見られる行為でもあるのだ。

今でこそ勢いのある有名な商会として名を上げてきたヴェヌトイル商会も、一つのミスで凋落する可能性だってゼロではない。

チャンスを掴むために取り入ろうとするのは、ビジネスとして当然の事だから。

それからゲルグオ様が話を進めていく。


「さようでございますか。ウェシロスにて、ヴェヌトイル商会が持つ商隊の馬車をお見かけしたのですが、武具だけでなく、食材やお洋服等も取り扱われているのですね」

「えぇ、お陰様で……」

()()()()も取り扱われているのでしょうか?」

「!?」


エレーナが不意に放った一言に、ゲルグオ様はほんの一瞬だけだが、表情が少し崩れてしまったように見えた。


「お目が高いですね。その通りです!今年からは自家製栽培による植物系由来のアイテムの生成にも着手しております!本格的な流通はまだ先にはなりますが、ゆくゆくは……」

「そうなんですね!それは楽しみにしております!」


ゲルグオ様は即座に表情を持ち直してその場を取り繕い、エレーナは営業スマイルのように柔和な微笑みを見せた。

それから数十分、ゲルグオ様とエレーナの談話が中心になった。


「ゲルグオ様、そろそろお時間が……」

「あぁ、分かった。もう少し話をしたいと思っていたが、時間が来てしまった。いやぁ、良い時間を過ごせましたよ」

「いえ、わたくし達も楽しく為になるお話が聞けて良かったです!」

「申し訳ないが、私はこれから幹部の皆様と会議がある。案内は秘書にお願いするよ」


そう言ったゲルグオ様は部屋を出て、俺達も秘書さんに連れられて出口まで案内された。

正直、エレーナがいなかったらせっかくのチャンスを棒に振っていた可能性が非常に高かった。

本当に感謝している。


「エレーナ、マジでありがとう。お陰で助かったよ……」

「お役に立てて何よりです。それに、ヴェヌトイル商会が今後どのような動きをしていくかを抽象的とは言え、聞く事ができたのは収穫だと見ていますよ」


俺が感謝の言葉を伝えると、エレーナは微笑んでくれた。

するとクルスが少しだけ俺に近付いてきた。


「トーマさん、ゲルグオ様の表情をずっと見ていたんですけど、自家栽培や植物のお話が出た時、一瞬だけ動揺しているように見えました」

「俺もちょっと見えたよ……」


やはりクルスも見逃していなかった。

元々クルスは他人の機微を感じ取る事に長けており、ゲルグオ様の微細な変化を怪しまれない範囲でよく見ていた。


「話に出ていた植物や自家栽培のビジネスに何かヒントがありそうだな……」

「ウィーネスさん達にも報告しましょう!」

「そうだな……」


俺達は僅かながらの手掛かりを得る事ができた。


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