第142話 ヴェヌトイル商会の会長
商会の大物が登場します!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
俺達がウェシロスに着いて情報収集に取り組んだ翌日—————
「ヴェヌトイル商会の本拠地。改めて見ると、中々デカいな……」
「はい、急拡大した有名な商会だと改めて思いますね……」
俺達はウェシロスを本拠地にしているヴェヌトイル商会の本部の前に足を運んだ。
集めた情報を元に、俺達は仮説の段階ではあるが、ヴェヌトイル商会について調べてみる事になった。
ウィーネスさん達からヴェヌトイル商会が関係しているかもと聞かされ、まずはザックリからではあるが、どんな実態をしているかを確かめてみる方針になった。
頭から疑う気は毛頭ないが、行方不明になった冒険者達の手掛かり探るには避けて通れないとも思っている。
俺達は本部の建物や倉庫、関連する店舗をこっそりと見て回った。
「それで、来たのはいいけど、どうやって調べようか?」
「こっそり倉庫等に入れば、間違いなく突き出されますよね……」
「そりゃそうだ!」
「クルス。アンタの【気配遮断】スキルで潜入とかって出来ない?」
「それは無理だろう。商会の本拠地や倉庫の周りは衛兵が常に警備している事に加えて、ネズミ一匹や【気配遮断】スキルを使った相手の侵入だって感知してしまう魔道具も至る所に設置されているんだ。見つからないように動くのは極めて難しいよ」
「そうよね……」
俺達は商会本部のロビーにあるベンチで休んでいる。
やはり勢いのある商会なだけあって、セキュリティにも力を注いでいるのが分かる。
今のヴェヌトイル商会は他の小売店へ売り物を卸しているだけでなく、直営の店舗もウェシロスで構えている。
軌道がいい方向に乗せていき始めた辺りからは武具や魔道具、冒険で役立つアイテムの生産も商会で担うようになってきており、業績はうなぎ登りになっている。
近隣の貴族階級や土地を持っている地主まで、お金持ちを相手に商売するようにもなっているのだから、勢いが止まる事を知らないのも納得できる。
「トーマさん、どうしましょうか?」
「そうだな……。街に戻って、もう一度情報を集める事にしよう!ウィーネスさん達には俺から結果を……」
「会長!おはようございます!」
「「「「「「おはようございます!」」」」」」
(え?何?)
内部を調べるのが困難と判断した俺は昨日と同じく情報収集をしようと思って出て行こうとした瞬間、一人の職員が声を張り上げた。
それから続くように多くの職員が背筋を伸ばしてロビーの道の真ん中を空けてお辞儀している。
何事かと思って俺達が様子を見ていると、正門からコッコッと足音を鳴らしながら誰かが来た。
「トーマさん、あの方がヴェヌトイル商会の会長、ゲルグオ・ヴェヌトイル様ですよ」
「あの人が……?」
俺はエレーナから小声で説明された。
秘書一名と実力者と思わす護衛数名を引き連れて先頭を歩いているのは、ウェシロスに拠点を置くヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオ・ヴェヌトイルだ。
波に乗る商会の会長なだけに、白がかかった灰色の短髪をオールバックにしており、口周りに生えた髭もよく整えられ、威厳を感じさせる中年の男性だ。
紺色をベースに立派な服装に身を包んでおり、如何にもお金持ちだと思わせる。
発足当初は小さな商会だったが、ゲルグオ様の代になってからはその辣腕と技量で組織を大きくする事に成功し、今ではビュレガンセ国内でも注目の商会として名を馳せている。
「会長、本日のスケジュールですが……」
「あぁ、まずは……ん……?」
「会長?」
ズンズンと進んでいるゲルグオ様だが、何かが目に付いたのか、不意に足を止めた。
すると俺達の方に歩み寄って来た。
「君達、冒険者なのかね……」
「は、はい……」
「一体どういった要件でここに来ているのかね?」
「視察ですね。実は、最近勢いを付けているヴェヌトイル商会がどんなものなのかを少しだけ見ておきたいと思いましてね……」
「視察か……。それなら良いが……」
ゲルグオ様は淡々と話を進めると、エレーナに視線をやった。
「一つお伺いしたい。そちらのお嬢さんは、ハイレンド伯爵家のご令嬢であるエレーナ・ハイレンド嬢とお見受けするが、間違いはないでしょうかな?」
「「「「!?」」」」
「はい。わたくしは、エレーナ・ハイレンドと申します。ヴェヌトイル商会会長とお会いできて光栄に存じます……」
「やはりか……」
ゲルグオ様の質問に対し、エレーナは丁寧かつ淑やかに応対した。
すると周囲の職員がエレーナの存在を知ってざわめきを起こし始めた。
身分の高い肩書を持った相手にも、緊張一つしないで礼儀正しく接するエレーナを見て、彼女が改めて貴族令嬢である事を思わせた。
「いや~、まさかこんな所でかのハイレンド伯爵家のご令嬢とお会いできるとは、今日は気分も運も良い!」
「「「「……?」」」」
さっきまでのゲルグオ様は厳かながらも淡々としていたのだが、エレーナを見て友好的かつ鷹揚な表情を見せた。
「遠路はるばる来ていただけて私も嬉しいよ。先ほどは警戒させてしまったようで申し訳ないね」
「いえ、滅相もございません!」
「せっかくの機会だ。少し茶でも飲んでいかないかね?」
「え?」
(ヴェヌトイル商会の会長が誘ってる?それって……)
俺達はゲルグオ様の思わぬ申し出に驚いた。
だが、俺はこうも思った。
(もしかしたら……)
俺はセリカ達に視線を送ると、彼女達はできると言う意味を込めて頷いてくれた。
「分かりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます」
「そうか……。応接室までご案内してあげなさい」
「かしこまりました」
俺がそう言うと、ゲルグオ様は気さくな笑顔を見せ、秘書さんに指示を飛ばした。
それから俺達は促されるままに応接室に案内された。
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