第137話 行方不明になった冒険者達
新たな展開です!
冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】・ギルドマスター執務室—————
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんがいる執務室に呼ばれている。
そこにはBランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさん達の姿もある。
「それ、本当なんですか!?」
「あぁ。【ゴーファイターズ】の面々が行方知れずになってしまったんだ……」
カルヴァリオさんから告げられたのは、俺達と同じギルドに身を置いているCランクパーティー【ゴーファイターズ】の面々が行方不明になってしまったと言う衝撃的な報せだった。
【ゴーファイターズ】は以前にウェシロスへ赴いた際、面識が出来た冒険者パーティーだ。
『重戦士』のギンゼルさんと言う方がリーダーをしており、メンバー全員が謙虚でしっかりした人物だったのは覚えている。
見知った仲となっただけに心配だ。
瞬間、新たに面識を持ったBランクパーティー【デュアルボンド】のイアンさんとイオンさん達の話を思い出した。
「イアンさんとイオンさん達がウチのギルド以外の冒険者パーティー数組がクエストに出向いた先から帰って来ないってお話を聞いた事がありますね……」
「その通りだ。今までは他所のギルドで起きた事だったからともかく、今回はウチのギルドに所属する冒険者がその被害を受けたんだ。看過はできない」
「我々と同じギルドに所属している冒険者達がそのようなトラブルに巻き込まれているとなれば、このまま見過ごせないですね……」
俺とウィーネスさんはカルヴァリオさんに向かって懸念となる要素を言葉にして伝えた。
「本来ならばBランクパーティー二組で向かって欲しいところだったんだが、【ブリリアントロード】以外のBランクパーティーは現在、クエストに出向いて不在なんだ。それで、先のダンジョン攻略の経験をしてきたトーマ達にお願いをしているんだ」
「今回の仕事って、行方不明になってしまった者達を探し出すって事でしょうか?」
「あぁ。今回は君達に行方不明となった【ゴーファイターズ】の捜索及び今回の事件の詳細を調査して欲しい!」
カルヴァリオさんはそう言って頭を下げた。
自分がギルドマスターを務めるギルドの冒険者が今頃どんな被害を受けているかを考えているからこそ、その誠意が伝わって来る。
俺はセリカ達に向け、受けるかどうかのアイコンタクトを送ると、全員が縦に首を振った。
ウィーネスさんもパーティーメンバーの皆に確認した結果、俺と同じだった。
「承知しました。引き受けます!」
「我々も同じくです!」
「ありがとう!私も全力でバックアップするから、早速動いて欲しい!」
俺達はカルヴァリオさんからの依頼を引き受ける事になった。
イントミスの一件以来、捜索や調査がメインとなるクエストになり、対象が行方不明になった同じギルドの冒険者パーティーとこれも毛色が違ったような内容だ。
今回は【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさんが取り仕切る事になり、彼女と同じメンバーにして古参メンバーであるバダックさんとリエナさんが補佐を務める形となった。
俺達はすぐにギルドを後にした。
「アタシ達のギルドに所属している冒険者パーティー【ゴーファイターズ】の行方が分からなくなったのは、ウェシロスよりも東にある小山と聞いているけど、他に行方不明とされる他所の冒険者ギルドの冒険者達も、その近郊で足取りが分からなくなってしまった訳だが……」
「聞けば聞くほどに謎が深まりそうな話ですよね……」
事が事なため、俺達はウェシロス行きの高速馬車に乗った。
馬車の中ではウィーネスさんがカルヴァリオさんから聞いた話のあらましを纏めている。
「モンスターに襲われたって線とかは無いですよね……」
「その可能性は薄いと見ているわ。モンスターに襲われただけならば、誰かしらが生き残って状況を伝えるなりする方法も取れるし、何よりその結果はギルドに伝わっているのが当たり前のシステム、つまり冒険者の消息が途絶える事は、冒険者ギルドの仕組み上あり得ないのよ……」
「そもそもクエストで出向いているにもかかわらず、成功か失敗はともかくにしても、何の連絡も無しにそこからの足取りが掴めない事そのものが問題なんだよ。クエスト中に滑落事故や自然災害に巻き込まれるケースはあれども、生死不明が何日も続くのはギルド側が捜索に動くには充分な事なんだ……」
「確かにそうですよね……」
リエナさんとバダックさんはモンスターに襲われた線は無いと言う理由を丁寧説明してくれた。
仲間と連絡が取れない、行方や足取りが分からないと言う状況はどんな人間でも不安を覚えてしまうのは当然だ。
他の冒険者ギルドで起きた事だから自分達の身を守る事に集中すればよかったが、俺達のギルドから出て来たならば話は別だ。
同じギルドの冒険者として、助けに向かうのは抱いて当たり前の事だから。
「……」
「ウィーネスさん?大丈夫ですか?」
「え?」
「ずっと押し黙っていますけど……」
陽気でコミュニケーション能力が高いウィーネスさんがいつも以上に悩んでいる様子を見ていたセリカは彼女を案ずる言葉を掛けていた。
「いや、何でもないよ!アタシそんなに暗い顔してた?」
「してたよ」
「マジで暗い顔してたぞ」
ウィーネスさんは取り繕っているが、リエナさんとバダックさんは事実を指摘した。
今回は10人体勢で動き、そのリーダーとして今回はウィーネスさんが務める事になった。
自分のパーティーだけならばともかく、俺達の事も危険から守らなければいけないプレッシャーを感じているのだろう。
それから落ち着いた空気が流れ……。
「今回の行方不明となってしまった冒険者パーティー数組の捜索やその事件の調査って知った時、只事じゃない何かがあるのはすぐに理解できた。トーマ達は覚えがあると思うけど……」
「はい、覚えてます……」
(闇ギルドか……。嫌な事を思い出しそうだ……)
ウィーネスさんは今回の調査は普通ではない何かを直感的に感じている様子だった。
確かに今回の調査は闇ギルド関係していても決しておかしい話ではないのは俺も理解している。
俺達が拠点にしている領地は撲滅に動いているが、他の領地は進んでいるところもあれば、停滞しているところもある。
もしも犯罪や恐ろしい事件に巻き込まれているのではないかと言う事を考えれば、帰って来ない冒険者達がどうなっているのか不安で仕方がないはずだ。
そして、まだ決まった訳ではないが、俺達もその事件に手を突っ込もうとしているかもしれない状況にある事も……。
「でも、俺達だって助けたい気持ちは同じですよ!まずはギンゼルさん達を探して連れ戻す事を目標にしましょう!」
「トーマ……」
俺は何とかして場の雰囲気を明るくするための決意を示した。
それから数秒後……。
「うん、そうね!まずはギンゼル達を見つける事を第一目標で取り組んでいこう!改めて今回はよろしくね!」
「ハイ!よろしくお願いします!」
「やっとウィーネスさんらしくなりましたね!」
吹っ切れたのか、いつものウィーネスさんらしい明るく快活な笑顔と元気を取り戻しており、セリカ達の顔にも喜びが見えた。
隣で見ているリエナさん達も微笑ましい様子だ。
「まずはウェシロスに着いたら宿を取って、冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に赴こう!あそこのギルドも行方不明者を出しているから、事情を話せば協力してくれるかもしれないし、情報も共有してくれる可能性だってある!」
「でも、他のギルドとの共同クエストではないと思うんですけど……」
「カルヴァリオさんの事よ!先んじて何か手を打ってると思うわ!」
ウィーネスさんは目的地に着いたらどんなアクションを取るか、簡潔ながら的確に説明してくれた。
普段は明るく快活な姉御肌のウィーネスさんだが、実は聡明で視野も広く、何より状況判断力も早くて正確だ。
こうして見ると、ギルド内でも人望が厚いと言われるのも分かるし、セリカが姉のように慕うのも納得がいく。
Bランクパーティー【ディープストライク】のリーダー格であるケインさんとは違った安心感があるとも思っている。
(俺達も気を引き締めないとな……)
俺は気持ちを切り替えて臨む事を決めた。
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