第132話 物騒なお話
大きな事件が忍び寄りそうな予感です!
鍛錬から数日後、クエスト帰りの夕方の時だった。
「採取された素材がクエスト通りのモノである事が確認されました。これをもちまして、クエスト達成となります」
「ありがとうございます!」
俺達はCランク向けの採取系のクエストの完了手続きを終えて報酬を受け取っていた。
今回はティリルより少し遠い山まで赴いていたため、素材を採取してからギルドに戻る頃にはすっかり日が暮れていた。
「「「「「乾杯~!」」」」」
「いや~、クエスト終わりの一杯は最高だな~」
「「「「ですね~!」」」」
俺達は定番のギルド飯を楽しんでいる。
もうすっかりお馴染みの光景だ。
エールとおつまみ、ピザ等を思いっきり味わい、クエストについて振り返り語り合う。
冒険者にとっては代名詞と言ってもいいくらい、切っても切り離せない醍醐味だ。
一つ変わった事があるとすれば……。
「でも、お野菜くらいは食べておきましょう!」
「は~い」
「栄養バランスは大事だからね……」
ギルド飯にサラダ等を付けるようになった事くらいだ。
エレーナは名家出身なだけに、教養や品性があるだけでなく、しっかり者だ。
俺も意識していたつもりだったが、まだまだ甘いところがあると思った。
「明日は休養日にするつもりだけど、どうする?足りないアイテムとかの買い出しに行こうと思うんだけど……」
「そうですね……。リペアフルードとかも切らしかけているので、行きましょう!」
「「「賛成で~す!」」」
「よし!そうするか!」
そうして話は纏まり帰路に着いた。
翌日———————
「えぇっと、これとこれも必要だな……」
「あ、これ入荷したんだ!買っておこう」
「パージフルードがまた入荷されていますね!数本ストックで購入しませんか?」
「そうだな……。但し3本くらいにしておこう!クエスト達成でお金が入ったらまた買おう!」
俺達は馴染みのアイテムショップで買い出しを終えた。
お会計を済ませると、今度はギルドに出向いて次に受けるクエストについて掲示板をチェックしていく。
「さて、どれを引き受けようかな~?」
「少し悩みますね……」
俺達がどんなクエストを引き受けるかを悩んでいる時だった。
「「やぁ、トーマ達!」」
「!?」
寸分違わない、聞き覚えのある声がした方向に目をやった。
「しばらくぶりだな!」
「元気していたか?」
「イアンさん!イオンさん!エリーさんとサーシャさんも……」
そこにはBランクパーティー【デュアルボンド】の中心人物であるイアンさんとイオンさんがおり、同メンバーであるエリーさんとサーシャさんもいる。
彼等とはウェシロスに拠点を置いているヴェヌトイル商会が抱える商隊の馬車の護衛で一緒にクエストに参加した事があり、それ以来の再会だ。
特にイアンさんとイオンさんの二人は『ゾレス兄弟』と言う双子の冒険者として界隈で有名だ。
格好から見るに、今からクエストに出向く様子だ。
「出る直前に君達を見つけたので話しかけてみた」
「会える時には会っておきたいと思ってな!」
「そうですか……。クエスト頑張って下さい!」
「「ありがとう!」」
俺がエールを送ると、イアンさんとイオンさん達は笑顔で返してくれた。
するとそこへ……。
「トーマ達、少し時間はあるか?」
「共有しておきたい事がある」
「は、はい……」
イアンさんとイオンさんは少しだけ険しい表情をしており、俺達に話がる旨の質問をしてきた。
時間に余力はあるので、併設された飲食スペースで話を聞く事になった。
そしてその内容は想像以上にシリアスなモノだった。
「冒険者達がクエスト先から戻って来ない?」
「俺達も最近聞いた話で驚いた」
「由々しき事態とはこの事だ」
【アテナズスピリッツ】に所属している者ではないが、冒険者ギルドに籍を置く冒険者達がクエスト先から帰って来ないまま行方不明になると言う事件が数件発生している事をイアンさんとイオンさんから聞かされた。
「ですが、クエストを受けた冒険者達が想定していた期日よりも遅れる場合、ギルド側から応援や捜索命令が出されるはずなのですが……」
「正しくその通りだ」
「だが、捜索に出たパーティーも行方知れずになっている」
「嘘だろ……」
セリカの質問にイアンさんが答え、イオンさんが聞いた現状を話した。
冒険者ギルドは所属している冒険者がクエストに出てから想定期日より数日経っても帰って来ない、もしくは連絡が取れなくなった場合はギルド側が別の冒険者を目的の場所に出向かせて捜索に出る。
最初にクエストを引き受けた冒険者が見つかり、達成困難と分かればそのまま応援する形で対処に臨んでいくパターンが殆どだ。
しかし、今回はその捜索を引き受けた冒険者パーティーも行方不明になり、連絡が付かないと言うトラブルが起きている。
「何ですかそれ……?怪しいですよ、次々と冒険者達がクエスト先から帰って来ない上に連絡も取れないなんて……」
「因みに、何組ほどの冒険者が被害を受けているのでしょうか?」
怪しむミレイユに対し、エレーナが質問を投げかけ、イアンさんとイオンさんが口を開く。
「噂で聞いた話では5組だ」
「最後に聞いたモノで行方不明となったのは【ティア―オブテティス】の冒険者達だ」
「え?そこって確か……」
(ウェシロスに拠点を置いている冒険者ギルドだ……。ジゲラさん達が所属しているところじゃないか……)
話の中で出てきた【ティア―オブテティス】。
それはイアンさんとイオンさん達と出向いたクエストの帰りで出会ったBランクパーティー【スターレック】のリーダー格であるジゲラさん達が籍を置いている冒険者ギルドだ。
知り合いになった冒険者が所属しているギルドにも被害が及んでいる事を知ると、少なからず気掛かりな感情が湧いてきた。
「現段階において、俺達が所属している【アテナズスピリッツ】には話したような被害者はまだ出ていない」
「しかし、もしもその被害者が現実に出てしまったら、ギルド側も看過できない事になるだろう」
「そうですよね……」
「その時はカルヴァリオさん達運営陣も何かしらの対応を取ってくれると思うよ」
「楽観視はし過ぎないようにする事はお勧めする」
「分かりました。気を付けます」
イアンさんとイオンさん達が注意しておくような旨のメッセージを聞いて、俺達は気を引き締め直す。
「ごめんなさい、時間なので私達は今からクエストに出向くね!」
「往復を含めて、5日ほどギルドを空けちゃうけど、頑張ってね!」
「「皆の健闘を祈っている!」」
「はい。情報を共有して頂きありがとうございます!」
話を終えたイアンさんとイオンさん達はギルドを出てクエストに向かった。
「何かエグイ事を聞いちまったような気がするんだけど……」
「もしかして、闇ギルドがまた復活したって事?」
「いや、まだ分からないわよ……」
「でも、用心に越した事はないと思う」
俺達の中には少し重苦しい空気が流れている。
せっかくの休養日に随分な話を聞いてしまっただけにな……。
(こっちも何か起きた時の備えをしておかないとな……)
しかし、この時の俺達は知る由もなかった。
イアンさんとイオンさん達の話していた内容は、俺達の想像を超えた深い問題と闇を抱えている事を……。
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