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SS 13話 【ウルミナ視点】Aランク冒険者の日常

第121~122話の少し前のお話です!


ベカトルブで発見されたダンジョン攻略から戻って来てしばらくして……。


ティリルにほど近い場所に一軒の家があった。

石造りがベースの二階建ての建物であり、貴族が持つような屋敷には到底及ばないが、一種の立派さを感じさせる。

その一つの部屋に朝を告げる光が差し込んだ。


「う~ん!いい天気……」


私はベッドから起き上がり、カーテンを開けてすぐに朝の陽射しをその身に浴びた。

朝日を浴びるって、身体に良いからね。

それからすぐにリビングへと歩いて行くと……。


「あっ。ウルミナさん、おはようございます!」

「あら、おはようランディー」


途中でランディーと顔を合わせた。

その手には彼が普段から使っている槍を模したような棒であり、服装から見るに朝の鍛錬をしていたのが分かる。

ランディーは空いた時間があれば武具の手入れや鍛錬を怠らないストイックさを持っており、私達の中では若い部類ながらも、その実力は折り紙付きだ。


「今日も朝の鍛錬?」

「えぇ。先のダンジョン攻略で遭遇した“デッドガーゴイル”との戦いでまた実力不足を痛感しましたので……」

「あれはパージフルードの効果が大きいわ。“デッドガーゴイル”に再生能力が無かったら、私達だけでも十分勝てる相手だったから、思い詰め過ぎないでね……」

「それは、まぁ、はい……」


ランディーは律義で真面目であり、責任感の強い男だ。

自分の力不足や不手際を少しでも感じたら、無意識に自分を追い込んでしまうところがある。

私達も根詰めないようにと日頃から言っており、収まったかと思えば、しばらくすればまた根詰めるのサイクルが続く事も珍しい話ではない。


「あら、いい匂いがしてきたわね。誰か料理しちゃってるぽいね……」

「恐らくラルフかジーナさんでしょう。待たせるのも悪いので参りましょう」

「そうね……」


ランディーに促され、私はその場所に向かった。


「おはよう!」

「おはようございます!」

「ウルミナ。ランディー。おはよう」

「ランディー。朝練でもしてたのか?」

「まぁな……」


リビングに向かうと、ジーナとラルフがメインで朝食を作っており、ルエミがそれを手伝うような形だった。

ジーナは体格に反して手先が器用であり、ラルフも料理上手だ。

私とルエミ、ランディーは、まあまあってところかな?


「「「「「いただきま~す!」」」」」


私達は手作りの朝食を頂いた。

テーブルの上には美味しそうなサンドイッチやベーコンエッグ、彩り豊かなサラダと栄養バランスが整っている献立だ。

ルエミ達には冒険やクエストだけでなく、私生活でも色々と助けられているので、本当に感謝している。

中長期に渡るクエストを終えてからのベカトルブ近辺で発見されたダンジョン攻略を終えた私達はしばらくの間はティリルを拠点とする事になった。


「じゃあ、夕方にね!」

「分かったわ!」

「俺ら武具屋とかアイテムショップとか色々回って来ますんで!」


朝食や身支度を済ませた後、私達は外出した。

とは言っても冒険者ルックではなくて、休養日に着る私服だ。

ジーナは緑が入った茶色いジャケットとカーゴパンツ、ランディーは灰色を基調にしたセットアップに紺色のタンクトップとカジュアルな格好だ。

ラルフは黒のパーカーに濃紺のパンツとラフな格好をしていた。


「私達も必要になるアイテムを調達しながら、情報収集とかもしに行こう」

「えぇ。そうね」


私は藤色、ルエミはベージュを基調にした動きやすさを取り入れたようなデザインのワンピースに身を包んでいる。

普通の私服に見えるが、実はミスリルの粉末を混ぜて織り込まれているので、見た目に反して丈夫にできているのでお気に入りだ。

それからしてティリルへと辿り着いた。


「久々に休養日で訪れたけど、やっぱり平和ね~」

「ねぇ。中長期で出向いた街も良かったけど、ティリルが落ち着くわ」


クエストに必要なアイテムの買い出し、新入荷されている武具や魔導具のチェック等、リフレッシュを兼ねて行動している。

街に出ると擦れ違う冒険者や馴染みの店員さん達から声をかけられる事が多い。

中長期的にティリルから離れていたけど、こうして覚えていてくれるのは本当に嬉しい。

ジーナは日用品の買い出し、ランディーとラルフはもう少しアイテムとかを見て回りたいとかで一時的に別行動を取り、私はルエミと一緒に所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に向かった。


「見ろよ。Aランクパーティー【ノーブルウィング】のウルミナさんとルエミさんだ」

「私服姿だ。休みなのかな?」

「ローブ姿も良いけど、私服姿もまた新鮮で良いよな~」

「二人共スタイル良い!」


そう言えば私服姿でギルドに出入りするのは久々だったわね。

私達は真っ直ぐ受付まで行き、Aランク向けのクエストが無いかを確認した。


「Aランク向けのクエストは現状入っていないと……」

「はい。今のところはございませんね。Bランク向けのクエストでBランクパーティーでも難しい判断された場合はお願いする事になると思われます」

「そうですか……。では……」


Aランク冒険者パーティーが受けられるクエストが現状ないのを知り、少し落胆した。

とは言っても、最近のダンジョン攻略を始めとする高難度のクエストをいくつもこなしていたお陰で、私達パーティーの貯蓄にはかなり余裕があり、正直に言うと何ヶ月もクエストに出向かなくても普通に生活できるくらいのお金はある。

冒険者達とコミュニケーションがてらの情報収集に勤しもうと思ったその時だった。


「あの~、【ノーブルウィング】のウルミナさんとルエミさんでしょうか?」

「はい、そうですよ」

「お二人が来ている事をギルドマスターにお伝えしましたところ、時間があれば今すぐ、顔を合わせたいと……」

「分かりました。対応できます」

「ご案内します!」


受付嬢の一人が飛んできて、【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんがお話をしたいと聞かされ、私とルエミは案内された。


「休養日のところに捕まえて申し訳ないね」

「いえ、問題ございませんよ」

「それで、お話とは一体……?」

「単刀直入に言おう。王都にあるビュレガンセ冒険者連盟本部で開催される今度のギルドマスター会議に護衛として同行して欲しいんだ」

「は、はぁあ……」


カルヴァリオさんから護衛の仕事をお願いするものだった。

ビュレガンセの王都ファランテスには、ビュレガンセの各地に拠点を構える冒険者ギルドを束ねる連盟本部がある。

その連盟本部で半期に一度、ビュレガンセの冒険者ギルドのギルドマスター全員が集まる会議がある。

私達に護衛として同行して欲しいと言う申し出だった。

少なからずだが報酬も与えてくれると聞いた。


「久しぶりにどうかね?」

「私達で良ければやらせていただきます!」

「ありがとう。ウルミナ達なら引き受けてくれると思ったよ……」

「他のメンバーにもお伝えしておきますね」


私達はこれを快諾した。

暇を持て余してしまわない機会をもらえてラッキーと思った。

そして詳しい日時を教えてもらい、私とルエミはギルドを去った。


「久しぶりにギルドマスター会議の護衛に参加する事になったわね……」

「そうね……。2年ぶりくらいかしら……?」

「それくらいかもね……」


思い返せば、私達はギルドマスター会議に同行する時の護衛は何回かあるものの、約2年間ティリルから離れて遠征に出向いていた。

その間はウチのギルドのBランクパーティーが中心に護衛を務めていた。

だからこそ、また携われた事に嬉しさはあるものの、Aランク冒険者の看板を背負う者としてのプレッシャーも少なからず感じている。


「勝手は知っているつもりでも、もう一度護衛におけるフォーメーションについて見直した方がいいかもね」

「ギルドマスターの護衛もできないで、Aランク冒険者パーティーは名乗れないからね!」

「帰ったらジーナやランディー、ラルフにも共有しないとだね……」

「そうね!やってやりますか!」

「やってやるわ!」


私はルエミと共に改めて、大事な仕事を請け負う決心を固めるのだった。


因みにカルヴァリオさんのギルドマスター会議に出向くための護衛をする事を知ったジーナ達がやる気溢れる気概を見せてくれたのは、聞くまでもない話だ……。



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