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第129話 分かった事と決めた事

ユニークスキルについて突っ込みます!


いつもの冒険者生活を送る中、最近勢いを付けている商会であるヴェヌトイル商会の不手際によって発生した追加の運搬物の調達をするための護衛に付く事となった。

目的地のウェシロスと言う街へ、Bランクパーティー【デュアルボンド】の面々と向かう事になり、その仕事を終えたのだった。


ウェシロスにある宿で一泊を過ごして—————————


「では、我々も帰るとしよう」

「早く戻ってカルヴァリオさん達を安心させよう」

「ハイ!」


俺達はウェシロスにある一件の宿に一泊してから、馬車を使って街を発った。

ヴェヌトイル商会が抱えている商隊の馬車の護衛を終えた俺達にはそれ以上の仕事はないため、後は帰るだけなのだ。

最初に来ていたウィーネスさん達も別に戻るプランを最初から整えているため、別行動にはなってしまうが、前もって決められているならば仕方がない。


「ウェシロス、ティリルにいるような感覚にさせてくれるような街でしたね……」

「そうだな。普段拠点にしている街と似たような雰囲気だからどこか過ごしやすかった気がするよ……」

「普通の馬車で1~2日かかっちゃうのが減点ですけどね……」


馬車の中で俺達は今回のクエストを振り返っていた。

緊急と言う形でヴェヌトイル商会の不手際で起きた発注ミスを尻拭いする形でそのお抱えの商隊の馬車を護衛し、道中でモンスターに遭遇するトラブルがあったものの、最終的には無事に事が済み、今ではホッとしている。

帰りは普通の馬車なので1~2日要するものの、急ぎの用事が俺達にある訳ではないため、ゆっくり帰る事になった。


「ふと思ったんですけど、ウェシロスに向かう道中でイアンさんとイオンさんが見せたあのユニークスキル、凄かったですね。確か……」

「「【ジェミニの絆】の事か?」」

「そうです!」


エレーナが不意に投げた質問に対し、イアンさんとイオンさんが頷く。

若干ながらのパワーアップに加え、互いに思考だけでなく視界まで共有できると言うチーム戦やコンビネーションを要求される場面では役に立つ事この上ないスキルであると俺は心から感じている。


「初めて使った時は驚きを隠す事ができなかった」

「イアンの声が聞こえた時は何事と思ったからな」

(そりゃそうですよね~)


イアンさんとイオンさんは【ジェミニの絆】についての感想を述べていった。

二人によると、視界や思考を共有できるのは互いだけであり、エリーさんやサーシャさんにもそれが可能に出来るか試した事はあるものの、結局は叶わなかったとの事だ。

それでもエリーさんとサーシャさんもイアンさんとイオンさんの動きやコンビネーションを見ているのもあって、スキル抜きでも連携に困った事はそれほどないと言ってくれた。

本当に仲が良いだけでなく、様々な場面でも息がピッタリと再認識させてくれるパーティーだな。


「正直に言えば、不意に【ジェミニの絆】が発現した事そのものは嬉しい」

「しかし、それに甘え過ぎてしまわないようにとも思っている」

「そのためにも帰って来たら、鍛錬に勤しむつもりだ」

「我々もBランクとは言え新米な方だからな」


イアンさんとイオンさんは本当に双子の兄弟同士で励まし高め合う姿勢を忘れないほどに向上心のある人物だと改めて思った。

二人の言うように、帰って来たら少なからず報酬ももらえるため、俺達も鍛錬やそれを兼ねたクエストにも出てみようと考えた。


「あの~、お二人にユニークスキルについて質問があるのですが……」

「どうしたトーマ?」

「答えられる限りで答えよう!」

「【ジェミニの絆】って何かしらのリスクとかってあったりしますかね?それだけ有用なスキルがノーリスクで使えるとは思えなくて……」


俺もユニークスキルの一つであり、【ジェミニの絆】と似通っているところがある【ソードオブシンクロ】を持つ身としては気になる質問をした。


「「当然ある」」

「やはり……」

「先ほども言ったように、視界や思考の共有ができるのは俺達兄弟だけだ」

「加えて長時間使用する事は肉体や精神に負担を強いてしまう」

(思った通りだ……)


俺が懸念した通り、やはり【ジェミニの絆】はホイホイと乱発していいスキルではなかった。

それを考慮しても、イアンさんとイオンさんは本当に息の合ったコンビネーションを得意にしているため、余程の事が無ければ困らないとも見ている。

それから俺は質問を続ける。


「どのくらいの負担を強いてしまうのでしょうか?」

「鍛錬やモンスター討伐の中で独自に検証したところ、身体に影響が出始めるのは10分ほどと見ている」

「それ以上の時間は過ぎた分だけ比例して負担が大きくなっていく」

「10分、ですね……」

「トーマ。どうしてそれを聞くのか?」

「何か理由があるのだろう?」

「はい……。実は……」


話を進めると、イアンさんとイオンさんが俺の意図を読んだような質問をしてきた。

これ以上遠回しな事をするのも無粋と思った俺は自分のユニークスキルである【ソードオブシンクロ】について打ち明けた。

そのスキルの効果やリスクについてを……。


「ほう。聞いていると俺達のユニークスキル【ジェミニの絆】と確かに似通っているな」

「パーティーメンバーにトーマが持つもう一つのユニークスキル【ソードオブハート】によるパワーアップと思考の共有を施せるのは魅力的な内容だ」

「はい。ただ、イアンさんとイオンさんのとは違い、短時間しか持たないんですよ……。体力や精神力の消耗が激しいもので……」

「私達も初めて【ソードオブシンクロ】の恩恵を受けた時、強烈なパワーアップができたんですけど、その後相当な疲労感に襲われましたね……」

「強力な魔法を使った時は、歩くので精一杯でした!」

「【ソードオブハート】を使ったトーマさんの気持ちがハッキリ分かりましたね……」

「俺が【ソードオブシンクロ】を発現させたのは、俺達がDランクパーティーだった頃に“フライングタイガー”とやり合って苦戦していた時でしたね。その時に何者かが脳内に語り掛けるような声が流れて来た感覚を覚えて、それから直感的にどんなスキルなのかが何となくだけど分かって……」


イアンさんとイオンさんへ俺だけでなく、セリカやミレイユ、クルスはCランク昇格を掛けたクエストに挑んだ時の状況を思い返しながら一緒に説明してくれた。

当時メンバーの一員ではなかったエレーナは感嘆したような様子だったが……。

話を聞いていたイアンさんとイオンさんは顔を少ししかめていた。


「「【ジェミニの絆】を発現した時と同じ状況だな!」」

「え……?」


イアンさんとイオンさんは当たり前のように答えた。

そしてその表情には実体験をしたと言わんばかりの様子だった。


「俺達が【ジェミニの絆】を発現した時と、トーマが言っていた状況とよく似ている」

「確証は得られていないが、勇気と覚悟、そして生きる事への渇望が大前提と見ている」

「と言う事は、誰でもユニークスキルを手に入れる可能性があると言う事でしょうか?」

「少なくとも全員が全員ではない。ユニークスキルについては不可解なところはまだまだ多い」

「過去にユニークスキルを得られた者は冒険者である者やそうでない者もいる。多くの者は偶然の産物と捉えているだろう」

(確かに俺がユニークスキル【ソードオブハート】や【ソードオブシンクロ】を得られた状況も、命に関わると言う要素があったな……)


イアンさんとイオンさんは【ジェミニの絆】を得た時も、ユニークスキルについて独自で調べ、知識のある人物とも相談した事があった。

全てどころかごく一部しか分かっていない状況であるが、勇気や覚悟、命懸けの場面が関連しているかもしれない仮説は立てられた。


「だが、得られたユニークスキルのお陰で、あの時の状況を生き延び、Bランクにまで駆け上がれた」

「偶然の産物と揶揄されようとも、このスキルや磨き抜いた強さで仲間達と冒険できるのは心から嬉しく思う」

「イアンさん……。イオンさん……」


二人の目には一点の曇りもなかった。

偶然手に入れたスキルであろうとも、それに驕らない姿勢を見て、俺も異世界に飛ばされてから得たユニークスキルをセリカ達や知り合った大切な人達を守るために使う事と、今以上に腕を磨いていく事を再度決心した。


「話は変わるが、今日中にティリルへ着くのは物理的に不可能と判断している」

「道中の町にある宿で一晩泊まるつもりだが、問題は無いか?」

「はい!大丈夫ですよ!」


イアンさんとイオンさんの提案で、途中で通りかかる町の宿で一晩過ごす事になり、セリカ達も賛成してくれた。


夕方になる頃には、その馬車は目的の町に到着した。



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