第128話 双子の気概
いつもの冒険者生活を送る中、最近勢いを付けている商会であるヴェヌトイル商会の不手際によって発生した追加の運搬物の調達をするための護衛に付く事となった。
目的地のウェシロスと言う街へ、Bランクパーティー【デュアルボンド】の面々と向かう事になり、その仕事を終えたのだった。
「「「「「乾杯~!」」」」」
「【トラストフォース】の皆様。今回は一緒に同行頂き感謝する」
「実力の一端を見れて、親交を深められる機会を得られて本当に嬉しく思う」
「こちらこそ、恐縮です……」
俺達はウェシロスにある一軒の酒場で、今回一緒に同行して頂いた【デュアルボンド】の面々と酒を飲み交わしている。
親交のあるBランクの冒険者パーティー【ブリリアントロード】を率いるウィーネスさん達は彼女と同行してくれたCランクパーティー【ゴーファイターズ】の面々と親交を深めてみたいと言う意向で今回のように、それぞれで宴席を開く事になった。
言われて見れば、この数週間でウィーネスさん達と過ごす機会は結構あったからな……。
少なくとも俺はそれを鑑みての采配だと思った。
そうして和やかに宴席の場は進んでいった。
「トーマ達とこうして親睦を深める事ができて嬉しく思う」
「我々も君達には興味と関心を抱いていたのだからな」
「本当ですか?」
「えぇ。ウチのギルドのCランクパーティーの中でも勢いを感じているくらいだからさ!」
「と言うよりもそんなに畏まらなくてもいいって!一カ月くらい前までは私達もCランクパーティーだったんだし!」
「確かにそうですよね……」
イアンさんとイオンさんは当然だが、エリーさんとサーシャさんの異父母姉妹の掛け合いもまた息がピッタリだった。
セリカ達から聞いた話なのだが、兄弟揃って冒険者をやるのは決して珍しい事でもなければ、視野を広げればもっといるとの事だ。
但し、【アテナズスピリッツ】に現時点でパーティー全員がそれぞれ兄弟関係にあるのは【デュアルボンド】だけだ。
兄弟仲が余程悪くない限り、戦いにおける連携にしても、パーティーの今後の方針を決めるにしても、他よりも早くスムーズに決まりやすいため、そこもアドバンテージだ。
そうは言っているが、俺達【トラストフォース】も仲良しって自信はある。
「そう言えばミレイユも『魔術師』よね?得意な属性は何だったりする?私は【水魔法】と【氷魔法】、【風魔法】と【雷魔法】よ!」
「私は【水魔法】と【氷魔法】、【炎魔法】と【爆撃魔法】ですよ!水系の魔法を使える点は一緒ですね!」
「そうね!にしてもその若さで【爆撃魔法】を使えるなんて、センスあるわね!」
「それほどでもないですよ!まだLV.1の段階ですし……」
「いやいやLV.1の段階でもモンスター殲滅では大いに役立つから羨ましい限りよ!」
「まぁ、先のダンジョン攻略では【爆撃魔法】がなければ、私は何もできなかったかもしれませんので……」
「ダンジョン攻略って、【ノーブルウィング】の皆様と一緒に参加した……」
「ハイ!そうですよ!」
ミレイユは同じエリーさんの妹であるサーシャさんと仲良く談笑している。
同じ『魔術師』同士で通じるところがあるだけに、会話には大いに花が咲いており、不意に出てきたAランクパーティー【ノーブルウィング】の名前を聞いてしまった俺達も関心を向けていた。
するとミレイユから【ノーブルウィング】のリーダー格であるウルミナさんについて語り始める。
「やっぱりウルミナさんって本当に凄い『魔術師』なんだね~!」
「私達も近くで見ていたんだけど、魔法の威力、発生速度、精度、どれもこれもが本当に素晴らしくて……」
「分かる分かる!加えてあの美貌でしょ!」
「凄く強くて綺麗で性格も良いんですよ!ウルミナさんは!」
(((((あ~こりゃ入っていけないかも~)))))
ミレイユはサーシャさんと『魔術師』同士ならではの談議を交わしており、俺達は苦笑いを隠せなかった。
「トーマ達も、先のダンジョン攻略について良い経験ができたようだな」
「「「「え?」」」」
するとイアンさんがダンジョン攻略の話題を出すと、俺達は揃って顔を彼に向けた。
ミレイユとサーシャさんも口を止めてイアンさんとイオンさんの方に視線をやった。
「ダンジョン攻略とは冒険者達にとっては目標であり一種のロマンだ」
「イレギュラーかつ特殊な内容とは言え、トーマ達がダンジョン攻略に参加させてもらえて羨ましく思う」
「【聖属性魔法】が必須でしたからね……。俺達にその機会が巡って来ただけでした」
そう、Cランクパーティーの俺達【トラストフォース】がダンジョン攻略に参加できたのは、【聖属性魔法】を使えるエレーナがいる事が大きかったからだ。
と言うか、エレーナがいなかったら最終的に何とかなっている保証も無かったからね。
「だからこそ、我々ももっと精進しなければならない気持ちにさせてくれる」
「そして今度はダンジョン攻略をもう一つの目標として自分を高めていく所存だ」
「ダンジョン攻略に挑むチャンスを先に持っていかれたが、次は我々がその手に掴んで見せよう!」
「何より」
「イアンさん……。イオンさん……」
イアンさんとイオンさんの表情は真っ直ぐで決意に満ちた表情をしている。
特殊な形とは言え、Bランクパーティーを差し置いて、Cランクパーティーの俺達に先を越されて悔しいと思うどころか、むしろ向上心を見せているようだった。
隣にいるエリーさんとサーシャさんも同様だ。
「私達がやりたかった事を先にされちゃったのは悔しいけど、今ではそれを褒めているわ。それでも私達はBランクの冒険者パーティー。すぐにやって見せるわ!」
「私達は【デュアルボンド】よ!皆で力を合わせてもっと上に行くよ!」
「皆さん……」
イアンさんとイオンさん、エリーさんとサーシャさんが見せたのは、更なる躍進の意志と裏に秘めた俺達への賞賛だった。
先輩が後輩に、自分より経験が浅いはずの相手に追い抜かれたり、やった事のない事を先にされてしまえば嫉妬やプライドに振り回されてしまうと思っていた。
だが、【デュアルボンド】の皆様からは、そんな気持ちや振る舞いは微塵も感じなかった。
俺達【トラストフォース】は改めて、Bランクの名を冠する冒険者達の気概やメンタリティーを改めて感じると共に、自分達もそうあろうと意識を持ち直した。
(俺達も、もっと努力しないとだな……)
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