第126話 双子ならではのユニークスキル
主人公以外のユニークスキル持ちの詳細が判明します!
いつもの冒険者生活を送る中、最近勢いを付けている商会であるヴェヌトイル商会の不手際によって発生した追加の運搬物の調達をするための護衛に付く事となった。
目的地のウェシロスと言う街へ、Bランクパーティー【リアルボンド】の面々と向かう事になった。
道中で“メガベアー”3体と遭遇するも、これを迅速かつ正確に対処した。
「ユニークスキル【ジェミニの絆】……?」
(この二人も俺と同じユニークスキル持ちなのか……?)
ユニークスキルと言うワードを聞いて俺達は開いた口が塞がらなかった。
まさか俺が身を置いている冒険者ギルドで、自分以外にユニークスキルを持っている冒険者がいるとは思ってもみなかったからだ。
しかもクエストの途中でだ。
「【ジェミニの絆】とは俺とイオンが得ているユニークスキルである」
「このスキルが発現したの1年ほど前だ」
「生まれつきではなかったんですね……」
イアンさんとイオンさんの言葉にエレーナは少し呆気に取られている様子だ。
それから二人の説明が続いた。
「このスキルを発動している間、俺達の身体能力は若干ながら向上され、思考と視界が共有されるのだ」
「だから俺達それぞれはエリーやトーマ達が“メガベアー”を相手取っている時の状況を互いに共有できていた」
「そう言う事だったんですね……」
なるほど、双子ならではのユニークスキルだ。
それにしても視界はともかくパワーアップや思考を共有できると言うのは、俺が持つユニークスキル【ソードオブシンクロ】と似ているな。
「それにしても、発言したのが1年前とは、何かきっかけがあったんですかね?」
「このスキルを発現できた時、会得できた理由を俺達で考えた」
「エリーとサーシャを交えながら思考や回顧もしてみた」
「私達も一緒になって思い出したら、やっぱりあれだなって……」
「私もそう思う!」
「あれ……と言いますと……?」
イアンさんとイオンさんに加わる形でエリーさんとサーシャさんも会話に入り始め、何かを思い出したように言った様子に俺は問うた。
「1年前に受けたクエストにて、“スケルトンナイト”やその亜種達の討伐で発現したんだ」
「その時は相当に酷な状況であったが、諦めずに立ち向かおうとしたタイミングだったな」
「“スケルトンナイト”って言えば、レア度Cのモンスターですよね?加えてその亜種に類するモンスター達の討伐となれば結構な難易度ですよ」
イアンさんとイオンさん達はその時の状況を振り返りながら話した。
クルスによると、“スケルトン”系のモンスターは通常の攻撃で倒す事ができるものの、それらに備わっているコアとなる部分を破壊しなければ、頭が吹き飛んでも倒れる事のない厄介さがある。
当時のイアンさんとイオンさん達はCランクパーティーであり、ギルド内でもそれなりの実力者として知られていたが、“スケルトンナイト”との戦いは初めてであり、その亜種となる“スケルトンバード”や“スケルトンハイエナ”等も加われば苦戦は必至だ。
案の定、イアンさんとイオンさん達は厳しい戦闘を強いられ、エリーさんとサーシャさんによる援護があっても“スケルトンナイト”によって追い詰められていた。
その中でも二人は苦境に立たされ、互いを信じ抜いた。
すると、イアンさんとイオンさんの頭へ不意に何者かに声をかけられたような感覚に一瞬襲われ、ユニークスキル【ジェミニの絆】を発現させ、最後は逆転したとの事だ。
話を聞いていれば、俺がユニークスキル【ソードオブハート】や【ソードオブシンクロ】を発現した時と状況が似通っているな。
「確か、その時の事は私も覚えてますよ!」
「実を言うと、私達の名前が知られるようになったのはそのクエストがきっかけなんだ!」
「特に、イアンとイオンは『双子の実力派冒険者』とかで有名なのよ!」
セリカが言葉を発すると、エリーさんとサーシャさんが補足事項のように伝える。
兄弟揃って冒険者をやるケースも珍しい話ではないが、双子で冒険者をやっているとなればそれだけでも話題の種になるのは確かだ。
双子な上に同じギフトとなれば、尚の事である。
そんなイアンさんとイオンさんに双子ならではのユニークスキルが発現したのも、ある意味で運命的だ。
「とは言っても、【ジェミニの絆】を習得する前でも、イアンとイオンは本当に息ピッタリだったわよ。戦闘は当然だけど私生活もね!」
「そうだったんですか……」
「「伊達に双子で25年生きてはいない!」」
馬車の中ではイアンさんとイオンさんの双子ならではのエピソードで盛り上がった。
持っている私服を交換させ合ってはエリーさんとサーシャさんを面白半分で困らせた事。
見分けを付けるために装備のデザインを変えてくれとの声がエリーさんとサーシャさん以外からも上がった事でようやく実行に移った事。
連携確認も面白いくらいに進む事が多くあった事。
聞けば聞くほどにやっぱり双子なんだなって再認識させられる。
それから昼下がりになった頃……。
「あ!見えてきた!あれがウェシロスよ!」
「あれがか……?」
少し高い丘の上に差し掛かり、サーシャさんが笑顔で言うと、俺達は彼女が指差した方角を見た。
そこにはティリルと似たような雰囲気の街並みに少しの緑が生えた、オーソドックスな街であろうと言うのが第一印象と思った。
ウェシロスから更に西部は港もあり、漁業も栄えているのかとも感じた。
一言で言えば、ティリルにグリナムとシーゾスを程よい塩梅で取り入れたような大きな街、それが今の俺のウェシロスに対するイメージだ。
少なくともティリルよりは広いと見ている。
「もうすぐヴェヌトイル商会の本部に着く」
「降りる準備をして頂きたい」
「ハイ!」
「「えぇ!」」
イアンさんとイオンさんの指示で俺達は馬車を降りる準備を始めた。
それから程なくして、ヴェヌトイル商会の本部に着いた。
「ほ~。デカい建物だな~」
「勢いが付いてきている商会ですからね。規模の拡大に伴ってリニューアルしたとの事ですよ」
「組織がデカくなっているなら、それに比例して本拠地もデカくするって事か……」
馬車を降りた俺達の目に留まったのは、石とレンガ造りの頑丈さも備わったような立派な建物であり、敷地もかなり広かった。
イアンさんとイオンさんが中心に受付の方と応対し、荷物の搬入口に行くように促されてその場所に向かった。
着いてすぐ、ティリルにあるヴェヌトイル商会の支部から来た事を伝えると、係員らしき人物が荷物をチェックしてくれた。
これで問題なしならば、俺達の仕事は完了だ。
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