第124話 双子の冒険者
兄弟率の高い冒険者パーティーが登場します!
いつもの冒険者生活を送る中、最近勢いを付けている商会であるヴェヌトイル商会の不手際によって発生した追加の運搬物の調達をするための護衛に付く事となった。
目的地のウェシロスと言う街へ、Bランクパーティー【デュアルボンド】の面々と向かう事になった。
ウェシロスへ向かう高速馬車の中—————
「今回はよろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそよろしくお願い申し上げる」
「我々も全力を尽くす所存だ」
俺達は今回同行してくれるBランクパーティー【デュアルボンド】の4名と自己紹介を交えた挨拶をしていた。
ティリルの馬車ターミナルに向かうまでは名前やギフトくらいしか伝え合っていないが、馬車に乗り込んで改めてより詳しい自己紹介をした。
「我々のギルドにおいて、Cランクパーティーの中でも話題になっている【トラストフォース】と一緒に行動できた事を喜ばしく思っている」
「緊急と言う形であっても、こうして相見える事ができて嬉しいよ」
「そう言って頂けて、こちらも光栄に存じます」
俺達の目の前にいる男性二名は【デュアルボンド】の中心的存在であるイアン・ゾレスさんとイオン・ゾレスさんであり、二人は血の繋がった双子の兄弟だ。
両名共に動きやすさを重視した軽鎧に身を包んでおり、その肉体はよく鍛えられている。
どちらもギフトは『武闘家』であり、双子ならではの抜群のコンビネーションを持ち味にしており、モンスターとの戦闘では驚異的な力を発揮するとの事だ。
どちらも藍色の短髪ツーブロックヘアをしており、前髪を向かって右に流しているのが兄のイアンさんであり、左に流しているのが弟のイオンさんなのだが、顔立ち自体は一卵性双生児なのか、纏う軽鎧も似たようなデザインなのもあってすぐに見分けがつかない。
Cランクパーティーの段階で実績を積み重ねるようになってからは『ゾレス兄弟』と名を馳せるようになったとの事だ。
「私達と同行して頂けるのが皆様で良かったと思うわ……」
「道中でモンスターと遭遇した際は、私達が率先するので、サポートをお願いしたい……」
「はい!勿論です!」
恭しく話しているのは、薄い茶色のショートヘアーが特徴的な緑色の法衣に身を包んだ『僧侶』のエリー・ウォンソンさんと、青色のセミロングヘアーが特徴的な橙色のローブに身を包んだ『魔術師』のサーシャ・ウォンソンさんだ。
二人も姉妹である。
しかし、イアンさんとイオンさんと違い、エリーさんとサーシャさんは腹違いの姉妹であると初めて知らされた。
エリーさんは実父に連れられ、サーシャさんは実母に連れられて片親家庭となった後、それぞれの親同士で再婚し、今の関係が出来たとの事だ。
親同士が再婚したとは言え、年齢自体は同い年だが、日付的単位で考えて先に生まれたエリーさんが姉で、サーシャさんは妹と言う関係になっている。
エリーさんとサーシャさんは血の繋がりはないものの、これまでの様子を見ても、それを感じさせないくらいに仲良しの姉妹と思わせる。
色々と複雑さを感じさせるような関係を知りつつも思う事もあった。
(このパーティー、兄弟率が高くないか……?)
そう思わざるを得ないと感じた俺だった。
セリカ達も俺と同じような内に秘めたような意見を抱いているような表情をしている。
腹違いの姉妹であるエリーさんとサーシャさんはともかく、血の繋がった双子の兄弟であるイアンさんとイオンさんが同じギフトを授かっている事を知った際は、家族にしても、偶然にしては出来過ぎと思った事もあった。
セリカによると、家族揃って冒険者向けのギフトを授かる保証はないと聞かされたものの、双子である事を考慮しても、凄い偶然と思わざるを得ないと感じるしかなかった。
「トーマ達の話は色々と聞いている」
「あのAランクパーティー【ノーブルウィング】と共にダンジョン攻略に貢献したと話題になっている」
「はい……。とは言ってもウルミナさん達や協力して頂いた【アンビシャノブアレス】のAランクパーティーのお力添えがあっての事ですので、我々は……」
「ふっ。謙虚な男だ」
「もっと誇ってよい事だぞ」
イアンさんとイオンさんは微笑んだ表情で褒めている。
それから俺達は談笑を交わし始めた。
「そう言えば皆様がBランクパーティーに上がったのって、最近でしたよね?」
「その通りだ」
「正確にはちょうど一カ月前だ」
「Bランクに上がるための昇格を懸けたクエストってやはり厳しいのでしょうか?」
「結論から言えば、厳しく困難な採取系クエストだった」
「加えてレア度Bのモンスター“ツインヘッドヴォルグ”とも戦ったため、命の危険性もあった」
「“ツインヘッドヴォルグ”……?」
「大きさは“ギガヴォルグ”と同じくらいですが、体躯に似合わないスピードと魔法攻撃を得意にしているモンスターですよ!」
【デュアルボンド】の面々が挑んだ昇格クエストは限られた場所にしか採取できないレア度の高い鉱石を見つけて持って帰るモノだが、それを守護するモンスター“ツインヘッドヴォルグ”と言う強力なモンスターと遭遇して戦闘になった。
狼のような頭が二つある独特な姿をしており、高い機動力と知性に加え、強力な【炎魔法】と【風魔法】を操ると言うレア度Bのモンスターの中でも指折りの強敵との事だ。
一体のモンスターが【炎魔法】と【風魔法】を同時に使ってくる攻撃の凄さは、セリカとミレイユのコンビネーション攻撃を何度も見ているため、その威力は容易に想像が付いた。
前線で戦うイアンさんとイオンさん、後方射撃でサーシャさん、支援のエリーさんによるフォーメーションで挑み、全員ボロボロになったものの、最終的には討伐に成功した。
そしてBランクへと昇格して今に至るのだ。
「イアンとイオンのコンビネーション攻撃によるトドメ、あれは凄かったな~」
「えぇ、スキル込みにしても、正に一心同体って感じだったわ~」
エリーさんとサーシャさんは、まるで素晴らしい芸術品でも思い出そうとしているかのような表情をしており、イアンさんとイオンさんの実力の一端を感じた。
「何を言う?エリーとサーシャによる後方支援も大きかったぞ」
「サーシャが魔法攻撃で釘付けやダメージの積み重ね、エリーの【支援魔法】がなければ困難を極めていた」
「「心から感謝している!」」
「「あら、ありがとう!」」
(息ピッタリだな!)
このやり取りを聞いているだけでも、Bランクパーティー【デュアルボンド】のメンバー達それぞれの繋がりが強いかがすぐに分かった。
その時だった。
「お~い!目の前にモンスターが何体か見えたぞ~」
「何?」
高速馬車の行者が、モンスターが出て来た事を知らせる叫び声が聞こえた。
高速馬車は普通の馬車では通らない森林の中を突っ切っていくため、モンスターと遭遇する確率が高い。
今日中にウェシロスへ辿り着くための手段として高速馬車を利用したが、やはり遭遇する事は避けられなかった。
「我々も対処に向かいます!皆、準備を!」
「「「「ハイ!」」」」
「良い気概だ!」
「我々【デュアルボンド】も向かう!」
俺達はモンスターがいる場所に走って行くと、イアンさんとイオンさんを筆頭に向かっていく。
ギフトが『武闘家』なだけに、基礎的な身体能力もやはり高い。
「「「グルルルル……」」」
「あれって……」
「ふむ。“メガベアー”が三体か……」
「トーマ達に一体は任せる。残りは我々がやってもよいか?」
「はい。こっちも片付いたら手伝いに行きます!」
「「それは助かる」」
現場に向かうと、倒した事のある“メガベアー”が今度は三体おり、荷物の積んだ馬車に向かって歩いており、俺達を見て警戒心を高めてきた。
「クライアントが待っている!」
「早く確実に片付けるぞ!」
「「「「「ハイ!」」」」」
「「えぇ!」」
俺達は“メガベアー”三体と向き合った。
そして俺達は、Bランクパーティー【デュアルボンド】の実力の一端を垣間見るのだった。
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