第123話 緊急のクエスト
主人公視点に戻ります!
いつもの冒険者生活を送る俺達——————。
「クエストの達成を確認しました。こちらが報酬でございます」
「ありがとうございます!」
「やりましたね!トーマさん!」
俺達【トラストフォース】はCランク向けのクエストを達成していた。
最近の俺達はクエストと休養、鍛錬をバランスよくこなす日々を送っており、冒険や生活に良いサイクルが巡っている。
これらもBランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達に稽古を付けてもらい、Aランクパーティー【ノーブルウィング】のウルミナさん達と共にダンジョン攻略をした経験から来る自信が俺達に根付いている事の裏返しなのかもしれない。
それほどまでに、俺達が得たモノは大きかった。
「あら?トーマ達じゃない!」
「あ!ウィーネスさん!どうも……」
俺達に声をかけてきたのはウィーネスさんであり、他のメンバーもいる。
依頼書を握っている辺り、これからクエストにでも赴くのかと思っている。
「ウィーネスさん達もこれからクエストに赴く感じでしょうか?」
「そうよ。今からヴェヌトイル商会が保有している商隊の護衛をCランクパーティーと共に出向くところ……」
「ヴェヌトイル商会?確か、数年前から勢いを付けてきている商会ですよね?ビュレガンセの西辺りを拠点にしているような……」
「そうよ。ミレイユ、詳しいわね」
「えぇ、まぁ……」
(そう言えばミレイユの両親って行商人だったけ……)
ウィーネス達はヴェヌトイル商会と言う商業組織が抱えている専用の商隊を護衛すると言う内容のクエストに行こうとしていた。
ミレイユ曰く、ヴェヌトイル商会とはビュレガンセに存在する商会の中でも比較的新しい商業組織のようであり、発足当初は振るわなかったものの、数年前から中小規模の商会や商店をいくつも統合させていった事で急成長したとの事だ。
俺達の御用達である武具家である『ロマンガドーン』を含む店の大半はビュレガンセでも屈指の大商会であるダイヤレック商会からモノの売買をしているが、近年ではいずれ追い付き得るほどの勢いで成長しているとも聞かされた。
ビュレガンセの西部辺りをメインに商売をしていたが、組織拡大に伴ってティリル周辺の街にまで販路を広げているらしく、少し小さめだが、近くに支部のような専用の建物や倉庫ができたとの事だ。
「今回はヴェヌトイル商会が仕入れたアイテムや素材を沢山積んだお抱えの馬車に付いて、目的地まで警護する仕事なの。モンスターや盗賊対策でね!」
「それは中々大きな仕事ですね……」
「そうなのよ~。運搬する馬車には、ミスリル等の強力な武器や魔導具を作るための素材もかなりあるって話よ」
「今回は大きめな馬車で運ぶから、ウチのギルドのBランクとCランクのパーティー一組ずつでやる事になったの」
ウィーネスさんとリエナさんが説明すると、俺達は納得した。
普通のルートで行っても1~2日はかかるため、高速馬車や特急馬車よりは安全とは言え、道中で何が起きるか分からない。
そのための警護だと言う事も理解できた。
「今回は目に留まったアタシ達で行くけど、トーマ達も経験するかもね!」
「ハイ!その時は頑張ります!」
「その意気その意気!じゃあ、行ってくるわね!」
「いってらっしゃいませ!」
話が終わると、ウィーネスさん達は同行する4人組のCランクパーティーと共にギルドを発った。
その4名は見たところ、『重戦士』、『魔術師』、『僧侶』、『アーチャー』とバランスが取れていそうで何かホッとする。
するとミレイユが少し浮かない表情をしているのが目に付いた。
「ミレイユ、どうかした?」
「あ!いえ、何でもないです!トーマさん!結構報酬もらえたので、ここは少し良いところの料理屋さんに行きませんか?」
「まぁ、ちょっとだけ奮発しよと思うが、皆はどうかな?」
「「賛成です!」」
「わたくしもそれで構いませんよ」
「じゃあ、決まりだな」
何だかミレイユに誘導されたような気がしたけど、お腹空いていたのは本当でありクエスト達成で得た報酬も結構良かったので、今回はギルド飯ではなく、少し高めな料理屋で食事をする流れになった。
確かミレイユの両親って、行商人を生業にしていたけど、彼女が冒険者になって数年後に商売が傾いた末に蒸発したところは聞いており、セリカ達もそれを知っている。
ミレイユの方から進んで家の事は中々話してくれないけど、無理に聞くのも野暮だと思って突っ込まないようにもしている。
だから俺達も、ミレイユから話したい時に話せば良いスタンスで見守る事にした。
翌日——————
「今回は採取系のクエストにしてみませんか?」
「そうだな!じゃあ今回は……」
「あの、【トラストフォース】の皆様、今よろしいでしょうか?」
「ナミネさん?」
ギルドに赴き、どんなクエストを受けるか皆と話している中、ナミネさんは俺達を見るや忙しない様子で話しかけてきた。
「マスターがお呼びです!緊急のお願いがあるとの事なので、マスターの執務室まで来ていただけませんか?」
「!?」
ナミネさんも忙しいのか、それだけ言うと仕事に戻って行った。
俺達は急ぎ足で、ギルドマスターのカルヴァリオさんが待っている部屋へ向かった。
「やあ、急に呼び出して申し訳ないね……」
「いえ、とんでもございません。それで緊急のお願いと言うのは……」
「単刀直入に言おう……。ヴェヌトイル商会が発注した追加の運搬品を今日中にウェシロスと言う街まで届けて欲しいんだ」
「追加の運搬品?ヴェヌトイル商会が……?」
カルヴァリオさんの口から出てきたのは昨日話題に出ていたヴェヌトイル商会の名前であり、その運搬品をティリルから西にあるウェシロスと言う街まで届けて欲しいと言う内容だった。
「表向きは追加で発生した資材の運搬とあるが、実際は発注ミスでね……。ヴェヌトイル商会側の不手際であるのだが、その運んで欲しいモノが今日中にないと困るのが先方の要求で急遽君達を呼んだって訳なんだ……」
「そうなんですね……」
(それで緊急クエストなんだ……)
「そこで出向かせるメンツには今でき得るパターンで考えているのだが……」
「マスター、お見えになりました」
「ありがとう……。それに私は安心しているからね……。今回の商隊を護衛する現時点で残っているBランクパーティーの面々も参加してくれるからね……」
カルヴァリオさんが言ってすぐに、扉が開く音がした。
「カルヴァリオさん、お待たせしました」
「こちらも出発の準備は整えております」
「ありがとう……。彼らが今回の護衛役を担ってくれるBランクパーティーだよ」
「え……?」
「初めまして。【トラストフォース】の皆様……」
「共に護衛の仕事をする事ができて嬉しく思うよ……」
そこに現れたのは、男性と女性が二名ずつの冒険者達であり、その内男性二名は服装や装備、髪型に僅かな違いこそあるが、顔立ちが瓜二つだった。
「彼らは一月ほど前にBランクへと昇格した冒険者パーティー【デュアルボンド】の面々だ……」
俺達は後からやって来たそのBランクパーティーと共に、ウェシロスへ向かう事になった。
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