第122話 【カルヴァリオ視点】ギルドマスター会議②
ギルドマスター会議の後編です!
冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】のギルドマスターである俺は、半期に一度開かれるギルドマスター会議に参加するため、王都ファランテスに赴いている。
会議室の扉を開けると、白い大理石の床や壁、シャンデリアと豪華絢爛とまでは行かないが、洗練さを中心にアクセントのような華やかさが混じった空間だ。
その広い部屋の中心に大きな丸いテーブルと一人用のソファが20脚ほど置かれており、いずれも高級感を感じさせる。
俺が着いた時、そこには10名ほどの男性女性が入り混じって座っており、いずれもビュレガンセ各地に点在する冒険者ギルドの代表であるギルドマスター達だ。
かつて闇ギルドの一件で手を取り合った【ベスズプレイフル】のギルドマスターであるルチアーノもその中におり、前回は不参加で久々に顔を出している者もいた。
俺は一緒に入ったヴァラガンと共に席へと着いて少しした後、他のギルドマスター数名の到着を確認した会議を取り締まる職員が口を開く……。
「全員揃い、定刻となりました。ゼラカール・フォートレイン総帥、どうぞ」
職員の一人がそう言うと、俺達は椅子から立ち上がり背筋を伸ばし、扉から入ってくる一人の人影に視線をやった。
オールバックをベースにした白髪ながらも、その顔つきには柔らかさの中に大貴族の当主とも遜色ないような威厳を纏い、貴族服をベースにしたように仕立てられた絢爛さを感じさせる服装に身を包んでいる初老の男性が杖を付きながら上座の席へと着いた。
「皆の者、此度は半期に一度開催されるギルドマスター会議に参加して頂き、誠に感謝する。久しぶりに皆の顔を見れて私は嬉しく思う」
(ゼラカール・フォートレイン……)
ゼラカール・フォートレイン。
ビュレガンセ冒険者連盟本部の総帥を務め上げており、ビュレガンセを中心に活動している冒険者達の頂点と言って言い存在であり、高位貴族からも一目置かれているほどに冒険者界隈への影響力を持っている。
高齢となった今では連盟本部の運営や後進育成を中心に生きているものの、現役時代の彼は伝説級もしくは極めてレアで強力なモンスターをいくつも討伐した経験を持っている超一級の冒険者として世界にその名を馳せた事もある。
他の追随を簡単にさせない実績やキャリアから、ビュレガンセ冒険者連盟本部の総帥に抜擢されたと言う話もあるとの噂だが、ほぼそれが真実と思っても不思議ではないだろう。
「では……。半期に一度のギルドマスター会議を始めさせてもらう」
「まずは各ギルドの……」
ゼラカール総帥の号令と会議を取り仕切る職員の司会進行で会議が始まった。
主な内容としては各ギルドの半期分の成果や実績、所属メンバーの功罪やそれに関する処遇の検討から始まる。
続いて、貴族や商会との関りを持った冒険者を抱えたギルドによる交流状況の共有だ。
これはビュレガンセに大なり小なりの領地を構える貴族が、経営している土地にモンスターやならず者に荒らされてしまう事を解決・防衛していくため、貴族お抱えの戦力以外にも、領内もしくは近隣の冒険者と連携していくために必要な事である。
商会側から見ればアイテムにしても、武具や魔導具を作るのに必要な素材にしても、食材にしても、卸売りや小売りをするモノがなければ事業は成り立たないため、モンスター討伐や素材の採取を主な生業とする冒険者の存在は切っても切り離せない存在だ。
だからこそ、商会側も冒険者ギルドの存在を重宝しており、冒険者ギルドも手に入れた素材は、商会を起点とするモノの精製、卸売、小売を担ってくれる存在として大切にしている。
だからこそ冒険者ギルドの存在は、領地として守るべき治安と平和のために勤しむ貴族にしても、モンスターの討伐や特定の場所に生えている素材を得る事で商売を成り立たせる商会にしても、頭ごなしに蔑ろにはできない。
(だからこそ、冒険者の存在は決してないものにはできないって思うんだよな……。そして、冒険者の存在を正しい意味で存在意義や重要さを守ろうとするその気概も本当に賞賛モノだって思わずにいられないんだよな……)
俺はそう思いながら会議に参加しつつも、自分にできる限りで議論にも参加した。
そうした会議が続く事数時間……。
「以上、ギルドマスター会議を終了とする。皆の者、本当にお疲れであった」
「「「「「「「「「「お疲れ様でした!」」」」」」」」」」
ギルドマスター会議は終わりを告げた。
各地の冒険者ギルドのマスターが議論を交えていけば、話題の重要性に差はあれども、色んな意味で議題は盛り上がるものの、すぐにどうこうでない限りはその場で収まる。
他のギルドマスター達に続くように、俺は会議に同席してくれたウルミナと共に会議室を出て行った。
「会議、お疲れ様でした」
「あぁ、結構長い時間になったな……」
「白熱するかと思っていましたが、想像していた以上に滞りなく進んで何よりです」
「そうだな……。例のダンジョン攻略で見つけたアイテムについても近々明らかになる事が分かったのは収穫だったよ」
俺はウルミナと廊下を歩きながら会議について振り返っていた。
会議の中で先のダンジョン攻略についても議題に上がっており、再生能力の高さで有名な“デッドガーゴイル”がダンジョンのボスモンスターとして出てきたと話に出た際は、ゼラカール総帥とヴァラガン以外の殆どのギルドマスター達が驚いていた。
無論、その過程についてはウルミナと協力関係で参加した冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】の【飢狼団】に属するガイキの説明で参加した全員が知る事になり、その対策や攻略法も共有された。
一重にそれは、万が一強力もしくは凶悪なモンスターと遭遇してしまった時に対処する確率と生存率を上げるために必要な事だからだ。
そうして冒険者ギルド同士の横の繋がりを大事にしていく事は、互いの組織に属する冒険者に有意義な知恵やノウハウを与え合うやり方が理想的である。
先のダンジョン攻略の最深部で見つけた例のアイテムも、俺とヴァラガンは対外秘の手紙として受け取り、もう少しすれば判明する情報をもらえたのも有意義だった。
「と言う事は、トーマ達がここに呼ばれる可能性もあると言う事でしょうかね……?」
「恐らくな……。その際にも同行をお願いしても構わないかな?」
「はい……。私も例のアイテムについて気になっているところですから……」
ウルミナと会話しながら歩いていると、ルエミ達が待機している部屋へと入った。
「すまない……。待たせてしまったね」
「いえ、問題ございませんよ」
「お疲れ様です」
ルエミは読書をしており、ジーナは筋トレ、ランディーとラルフは武具の手入れをしていた。
一流の冒険者ほど、空いた時間を浪費するのではなく、次の行動に繋げる準備やメンテナンスを怠らないモノだ。
「もうすぐ夕暮れだ。今日は王都の宿に一泊して、明日の朝にここを発つぞ」
「「「「「ハイ!」」」」」
「それから、【アンビシャノブアレス】のギルドマスターであるヴァラガン達とも飲みに行くから、日が暮れるまでは自由行動でいいからね」
それから夕方まではウルミナ達は自由行動で過ごした。
ウルミナとルエミは王都でも大きな本屋に寄っており、ジーナはランディーとラルフを連れて武具やアイテムを見て回っていた。
王都にも武具やアイテムを取り扱う店は数件あるが、いずれもティリルを始めとする街にあるそれよりもかなり大きく、取り扱う種類も豊富だ。
自腹で交通費を出してまで王都に出向いて武器やアイテムを揃えようとする冒険者も珍しい話ではない。
それだけ充実しているのだ。
当然、飲食店も例外ではない。
「久しぶりにお前と飲むな~!」
「ハハッ!そうだな!」
夜になろうとした時、俺はヴァラガンと飲みに行っている。
そこには【飢狼団】を率いるガイキらも来ており、ウルミナ達とも交流を深めていた。
ティリルに拠点を置いている【アテナズスピリッツ】とベカトルブに拠点を置いている【アンビシャノブアレス】は普通の馬車でも5日はかかる距離にあるため、せっかくの機会と言う事で宴席を開いた。
「俺らがギルドマスターになってからはこうして飲み明かす機会もめっきり減っちまったな」
「そうではあるが、こうして会えたんだ。とことん飲もう!」
「おう!」
俺はヴァラガンと改めて乾杯し合った。
それからは互いの近況報告や今後の方針、何よりも現役時代の冒険者談議で盛り上がった。
翌日、俺達は王都を発つ事になったが、その際ウルミナ達に二日酔いをしてしまった事になったのはここだけの話である。
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