SS 11話 【ケイン視点】夕焼けに誓った想い
ケイン視点のお話です!
ロミック様の計らいで、ルゾイエンに赴いた俺達【ディープストライク】。
明日には拠点にしている冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】があるティリルへと戻る事になり、夕食を終えて綺麗な風景が覗く海岸に皆で来ている。
「ふぅ……。少し飲み過ぎたかもな……」
「本当ね……。酒は強い方だけどほどほどにしているアンタが酩酊寸前になっていたんだしさ……」
「それは……見苦しいところを見せたかもしれんな……」
「雰囲気もあったとは言え、かなり飲んでましたからね……」
「確かに……」
俺はサブリーダーであるフィリナ、同メンバーであるニコラスやエルニと宿へ戻る前に海岸の先に映るとても美しい夕焼けを、そよぐ潮風を肌に感じながら見ている。
ルゾイエンの海岸から見る夕日は観光スポットとしても国内で有名な場所として知られており、街並みの夜景にはないような雄大さや美しさが伝わってくる。
「それにしても、本当に綺麗な夕焼けですね……」
「はい。聞いていた話以上に美しいです……」
「そうだな……」
ニコラスとエルニは夜闇をまざまざと見せそうになる中、鮮やかで燦燦と輝かせる夕日が照らす光が放つ美しい景色に感動を覚えている。
「本当に綺麗な夕日ね……。ティリルとかじゃこんな風景絶対に見れないから……」
「あぁ。確かにな……」
フィリナが不意に発したセリフと共に俺は彼女に視線をやった。
こう言ってはあれだが、フィリナは『武闘家』と言う冒険者向けのギフトを授かり前線で暴風の如き立ち回りを見せるワイルドさはあるが、同時に結構な美人だ。
潮風をなびかせながら、夕焼けが差し込む陽光はフィリナが伸ばす橙色の髪に一層の輝きをもたらしており、その美しさに拍車をかけているようにも感じた。
もちろん、フィリナの明るさや溌剌さのせいで隠れがちだが、エルニも出会った人のほとんどに好印象をもたらすような整った顔立ちをしている。
「あのさ……。ちょっと言いたい事があるんだけどさ……」
「ん?」
「何ですか?」
まだ残っている酔いもあって、俺は不意に思った事を口に出していく。
「皆……。ありがとうな……。俺と一緒にいてくれてよ……」
「「!?」」
「な、何なの急に?」
フィリナは少し赤くないながら驚き、ニコラスとエルニは目を開いたまま固まった。
キザな言い方になっているのは百も承知だが、俺は話を続ける。
「色んな場所に赴いてクエストを達成して、困っている人達を助けたい。世界を見て回りたい。俺はそれを夢見て、冒険者になる事が叶った。フィリナは冒険者になってすぐ、そのしばらくした後でニコラスとエルニと出会い、パーティーメンバーになってくれた……」
「ケイン……」
俺は小さな町で生まれ、両親から冒険に関する話を沢山してくれて、おとぎ話や冒険譚を読み漁ってはその憧れを大きく膨らませた。
15歳になって『剣士』のギフトを授かった時には心から喜んだ。
同郷の幼馴染であるフィリナも『武闘家』のギフトを授かった事を知った際は「一緒に冒険できる」と嬉しさを分かち合った。
それからパーティーを組んで約10数年、早いものだ……。
「フィリナが前線で俺と一緒に戦い、ニコラスが魔法で援護したり時にはトドメの一撃を決める事もあったな……。それで誰かが傷を負った時にはエルニが回復してくれる事もあれば【支援魔法】でフォローしてくれる。モンスター討伐や素材の採取にしても、こうしてやって来れたのは皆がいてくれたからだ……。一人でもいなかったら、それすら叶う事も無かったかもしれない……」
「ケインさん……」
「……」
フィリナ達は俺の話をしっかり聞いてくれている。
「最近でそれを感じたのは闇ギルドの一件だった。フィリナ、ニコラス、エルニの誰かがいなかったらあのビデロスに勝つ事も叶わなかったと思う。だから改めて言わせて欲しい……。俺の夢や冒険に付き合ってくれてありがとう!」
俺は今抱いている気持ちを素直に伝えた。
数秒の沈黙が続いた次の瞬間……。
「何かと思ったらそう言う事?」
「ん?」
フィリナがあっけらかんとしたような口調で言葉を発した。
「さっきから色々と語っちゃってるけどさ~、何?次に言う言葉があるとすれば当てて見せようか?『もっと強くなるからこれからもどうか一緒にいて欲しい』とか!」
「……」
「やっぱりね!」
俺が言おうとしたセリフをフィリナが一字一句言い当てた事に驚き俺は無言になった。
フィリナの推測通りだ。
「『俺の夢や冒険に付き合ってくれてありがとう』って……。そんな事言うならばアタシだって……。その……」
俺を見ながらフィリナは少し儚げな表情をしていたが……。
「アタシの方こそ、ケインと同じ想いを抱いちゃってるわよ……」
「フィリナ……?」
「ケインさんが抱いている夢や目標は、あなた一人だけのモノではないって事ですよ」
「エルニ……?」
フィリナがそう伝えると、エルニも続き、ニコラスは優しい顔を向けてくる。
「私もケインさんやフィリナさん、ニコラスさんともっとこの広い世界を冒険して見て回りたいんです!ケインさんが今のような事を言うのでしたら、私も【ディープストライク】の『僧侶』として、もっと腕を磨きます!メンバーの誰がどこでどんな怪我をしてしまっても、皆さんを治しサポートできるような存在を目指します!」
「お二人が抱いている夢や想いは、私達も同じように抱いているんですよ。ケインさんがやりたい事は、私達にとってもやりたい事でもあるのです!ケインさんが強くなって守ろうとしてくれるならば、私も負けじと腕を磨きます!私は、【ディープストライク】の『魔術師』ニコラスですから!」
「ニコラス……」
エルニとニコラスの姿と言葉に俺は驚いた。
普段は控えめで自分の事を中々言おうとしない二人がここまで意志をハッキリ見せた事はいつ振りになるかくらいだったのだから……。
「二人がこう言っているなら、アンタがアタシへの気持ちはもう分かり切っているはずよね?」
「フィリナ……」
続いてフィリナが無邪気な顔をしながら俺の肩に手を当てて寄せてきた。
「当然だろ!これからも互いに強くなり支え合い、俺達の冒険を続けて行こうぜ!」
「もちろん!アタシ達はどこまでも!ずっと一緒よ!」
俺とフィリナは握った拳を合わせ、互いの表情に屈託のない笑顔が零れた。
初めて冒険者になった瞬間を思い出しながら……。
「日も沈んで来た事ですし、そろそろ戻りましょうか?」
「途中で雰囲気の良さそうなバーを見つけたので、そこで飲み直しましょう」
「ニコラスから飲みに誘うなんて珍しいわね!」
「良し!行くか!」
俺は本当に幸せだ。
その日々や未来を守るために、俺はもっと強くなる。
暗くなろうとする夜空に差し込む茜色の光を背にして、心の中で改めて決意する俺なのだった。
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