第119話 海だ!水着だ!海水浴!③
海水浴のお話は、これにて終了です!
ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略を達成した俺達。
ティリルを含めた領地を治めるハイレンド伯爵家の当主であり、エレーナの父であるロミック様の誘いで、護衛を兼ねた休暇を得る機会を得た俺達。
赴いたルゾイエンで海水浴をしている中、ウィーネスさん達【ブリリアントロード】と偶然再会し、その流れで行動を共にする事となった。
「夕日が綺麗ですね~」
「見てるだけで心が落ち着く~」
「酔いが少し冷めそうな風が気持ち良い~」
「「……」」
俺達【トラストフォース】の5人は、日が沈みかける海岸にいる。
夕飯はロミック様がルゾイエンにある大きなビアホールのような場所に連れて行ってもらい、ウィーネスさん達も参加する事になった。
皆でエールや美味しい料理を沢山味わったが、海を見ながら、空の下で飲むエールは本当に格別だった。
俺がいた世界でも居酒屋に行った事は何度もあったが、ビアホールに行った経験はなかっただけに新鮮な気分にもなった。
本当に楽しい時間だったけど、いつも以上にお酒を飲んでしまったので、酔い覚ましの薬とお水を飲んで落ち着いて、風に当たって今に至る。
「いや~、つい飲み過ぎちゃったよ……」
「私もです~」
「いつも以上にやっちゃいました」
「でも……。本当に楽しかったんですよね~」
「わたくしもです……」
俺達は海岸で涼んでいたが、強くはないが弱すぎてもない夜風と暗みを交えたオレンジ色の景色を鑑賞するようにその場の空気を味わっている。
今見ている風景をティリルで見物できる場所やシチュエーションはないからね。
「……」
(この世界に来てから、こんなに美しい夕焼けは見た事ないな……)
俺が前いた世界で海外旅行はほとんど縁がない中で生きてきたけど、正に幻想的と言って言いかもしれない非現実的ながらも神秘的な風景を見ていて、また新鮮な思いを感じ取っている。
「それにしても……。本当に綺麗な夕日だな……」
「そうですね……。こんなに美しい風景を見れるなんて……。ロミック様には感謝ですよ」
「それを聞いたらお父様も喜びますよ。確かにこれほど綺麗で芸術的な夕焼けを見るのはわたくしも久しぶりですね」
俺とセリカが何気なく呟き、エレーナも続く。
「綺麗な夕焼けって……。見てるだけで心が癒されるって言うか、洗われるって言うか……」
「潮風も気持ち良いから尚の事だね……」
ミレイユとクルスも景色とそよぐ風を感じながらリラックスした様子だ。
酒の酔いも随分と収まったようだ。
夕焼けと潮風、ザザーンと穏やかに打つ波音を目と耳、そして肌で感じ取っているだけなのに、日々のクエストで無意識に溜まっていたストレスも吹き飛ばしてくれそうだった。
「俺……。思ったんだけどさ……」
「トーマさん……?」
俺が口を開くとセリカが反応し、ミレイユ達も視線をやっている。
「一緒に冒険をしているのが皆で良かったよ」
「「「「!?」」」」
セリカ達は俺の言葉に少し驚いた様子になっている。
自分でもカッコつけたようなセリフを言っているのは分かり切っているけど、言葉に出したくてしょうがなかった。
「セリカ……。ミレイユ……。クルス……。そしてエレーナ……。俺と一緒にいてくれるのが皆じゃなかったら、今頃どうなっていたか分からなかった。ありがとう!」
「どうしたんですか?急に……」
クルスが「何だよ急に?」みたいな顔で質問して、俺は続ける。
異世界から飛ばされてから今に至るまでの日々や遭遇した事柄を思い出しながら……。
「皆と出会えて、色んな場所に冒険して、一緒に戦って、一緒に笑って……。きつくて大変な事もあったけど……。皆と一緒だったから乗り越える事ができたんだ。感謝している……」
「「「……」」」
「トーマさん……」
俺はセリカ達の前に立ちながら話すと、皆は真剣味が籠ったような表情で聞いている。
するとセリカが口を開く。
「それを言うなら私も同じですよ……。トーマさんと出会ってから、私も前に進めるようになって、強くなれた……。何より……」
セリカも俺達と出会い、共に過ごし、冒険してきた日々を思い出しながら語りだす。
「ミレイユやクルス、エレーナと仲間になれて、私に新しい世界を見せてくれた。そのきっかけになったのがトーマさん!あなたなんですよ!」
「セリカ……」
「ちょっとちょっとセリカ!私だって……」
「ミレイユ?」
思いを伝えているセリカに続き、ミレイユも話に入って来た。
「私だって……。前のパーティーでは手酷く扱われた挙句に捨て駒にされて死にそうになったところを救われて、また冒険者として頑張ろうって手を差し伸べてくれたのはトーマさんとセリカです!二人との出会いが私を変えてくれて、クルスやエレーナとも出会えました!命を救い未来を変えてくれたこのパーティーは最高だって信じてます!」
「ミレイユ……」
ミレイユは思いの丈を振り絞って本心を伝えてくれた。
「僕も……。冒険者を辞めようかって考えていた時、トーマさん達が僕の事を信頼してパーティーに入れてもらえて、変わる事ができました。前のパーティーのメンバーに捨てられて、過去や因縁に決着を付ける事ができたのも皆のお陰です!セリカが言っていたように僕の世界を変えるきっかけをくれたのはトーマさん達です!」
「クルス……」
クルスも自分の内に秘めていた想いを打ち明けてくれた。
「でしたら……。わたくしからも一言よろしいでしょうか?」
「「「「!?」」」」
エレーナが手を挙げて口を開いた。
俺達はその方向に目をやっている。
「冒険者に憧れて修行して……。トーマさん達のパーティーに入った事は正しかったと思っていますし、これからも変わりません。皆様と一緒に歩んでいく事を決めたのは紛れもないこのわたくしです!だからこそ、今後ともよろしくお願いいたします!トーマさん達や皆様と共に進んでいく所存です!」
「エレーナ……」
そしてエレーナもまた決意を示してくれた。
俺がこの世界に飛ばされてから本当に波乱万丈と言ってもよかった。
セリカと出会った事をきっかけにクエストをこなしていく中でミレイユと出会い、前のパーティーを辞めさせられたクルスと出会い、闇ギルドと言う黒い組織のような事件を別のギルドと共に解決した。
後にエレーナと出会ってパーティーの一員になり、Aランクパーティー【ノーブルウィング】のウルミナさん達と共にダンジョン攻略を成し遂げた。
夢にまで見たようなファンタジーの世界に憧れているのは今でも変わらないけど、自分がそれに身を投じるとなったら事情も変わってくる。
実際にモンスターを討伐するクエストもあれば国や領地の要人を護衛する仕事もある。
怪我するかもしれないし、最悪命を落とす事だってある。
それでもやって来れたのは……。
「皆……。ありがとう……」
(このパーティーは……最高だ……)
セリカやミレイユ、クルスとエレーナと言う時に支え助け合える仲間がいるからだ。
ケインさんやウィーネスさん、ウルミナさん達のような実力も人格も優れた先達の冒険者がいるからだ。
カルヴァリオさんやロミック様のような冒険者の日々の活動や生活をバックアップしてくれる方々がいるからだ。
それらの出会いと経験が俺を、そして俺達【トラストフォース】を強くしてくれた。
そして俺達は絆を再確認できた。
だから俺は……。
(この世界で出会った大切な人達の想いを忘れる事無く、成長の糧にしていこう!)
それから俺達は今まで遭遇した出来事や最近の気付きについて完全に日が沈むまでに語り明かした。
そして……。俺達の海で過ごす細やかな休暇は終わりを告げるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければ幸いです。
『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません。
面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます!




