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SS 10話 【フィリナ視点】ケインとの出会いと想い

フィリナとケインの出会いが語られます!

ロミック様の計らいで、ルゾイエンに赴いた宿で部屋を3つ借りている内の一部屋。

アタシは同じパーティーメンバーであるエルニ、同行しているCランクパーティー【トラストフォース】のセリカとミレイユ、、エレーナと同じ部屋に泊まっている。

お酒も回って盛り上がる中、アタシはケインについて語る流れになってしまった。


「そうね……。ケインとは同郷で6歳の頃に初めて出会ったの……」

「それは私も覚えています」

「エルニとニコラスには話した事あるからね!」


アタシとケインが幼馴染であるのはエルニだけでなく、ニコラスも当然知っている。


□■□■□■□■□■□■□■□■□


回想・フィリナ幼少期~現在まで———————


アタシはティリルから少し離れた町で生まれ育った。

父は元冒険者であったが、アタシが物心付いた頃には大怪我が原因で冒険者家業を引退しており、母と一緒に農家を営んでいた。

走り回れるくらいにまで育ったアタシは両親の仕事を手伝いながら、昔は冒険者だった父の話を聞いては冒険譚が詰まった本を読んで過ごしていた。

時には冒険者の真似をしては林や河まで行って日が暮れるまで遊んでは土や泥に塗れては両親に怒られる事もあったな……。

そんな時だった。


「ねぇ?君も冒険者の真似をして遊んでいるの?」

「そうだよ?誰?」


木漏れ日が差し込む林の中で一人の男の子と出会った。


「俺も冒険者ごっこしてるんだ!良かったら一緒に遊ばない?」

「うん!」


他でもない、ケインだった。

聞けばケインもアタシと似たような境遇をしており、それもあって打ち解けるのにそれほど時間はかからなかった。

それからは毎日のように冒険に関する話をしては遊ぶ仲になり、家族ぐるみで仲良くもなっていった。

凄く裕福でこそなかったけど、食べるのに困るほど貧しくもない生活の中で過ごすケインとの日々は楽しかった。

それから15歳を迎え、『職授の儀』を故郷の教会で受ける事になった。

ケインは『剣士』でアタシは『武闘家』だった。

どちらのギフトも希少性があるわけではないものの、オーソドックスな冒険者向けのギフトであり、アタシとケインは大喜びした。

冒険者になりたくてもそれに向かないギフトを授かった者も多くいただけに、ただただ嬉しかった。

当然、アタシはケインにこう言った。


「ケイン!一緒に冒険者になろう!」

「あぁ!俺も同じ事をフィリナに言おうとしていたところだ!」


両親からも快く送り出され、アタシとケインは冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】がある最寄りの街ティリルへと旅立った。

手続きを済ませて冒険者生活が幕を開けた。

Fランクは冒険者でない者でもできる雑用のようなクエストから始める事になったものの、元々身体を動かすのが好きで得意だったアタシとケインは比較的卒なくこなす事ができていたため、格安の宿を数泊利用する分は余裕で稼げた。


「よし!冒険者ランクがEに上がったわね!」

「これで冒険者としてスタートラインに本当の意味で立つ事になったな!」

「成り上がってやるわよ~!」


数ヶ月後、アタシとケインは冒険者としては駆け出しであるEランクへと昇格した。

そして喜びを分かち合った。


「それでフィリナ!俺、パーティー名を考えたんだけどな……」

「これって言う名前を考えたの?」

「あぁ……」


ケインは引き締めた表情をしながら言葉を……。そしてパーティー名を告げた。


「【ディープストライク】って名前なんだ!」

「ディープ……ってどう言う意味?」


アタシはケインに名前の由来を聞いてみた。


「冒険者として歴史に名を残していきたいと俺は思っている。世界に名を轟かせるような凄い事を成し遂げて俺達の名前を刻んでいく冒険者パーティーって意味だ!」

(随分と熱く語るわね~。でも……)


この時のケインはまだ青臭さが残ってはいたけど、言っている事には共感できた。

憧れの冒険者になれて嬉しいのはアタシも同じだったから。


「【ディープストライク】!良いじゃない!それにしましょう!」

「ならば早速パーティー登録をしよう!」


こうして冒険者パーティー【ディープストライク】が生まれたのだった。

それからしばらくして、ニコラスとエルニも加入した。

近接戦闘がメインであるアタシとケインにとって、魔法攻撃を得意とするニコラスと回復やサポートを得意とするエルニがパーティーに入ったのは大きかった。

接近戦・中遠距離戦をバランス良くこなせるパーティー構成のお陰で、安定的にクエストをこなせるようになり、その中でアタシ達はメキメキと成長していき、Bランク冒険者の称号を獲得するまでになった。


「やったな!」

「えぇ!」


Bランクまで駆け上がって嬉しかったのは事実でも、慢心はしてしまわないように仲間達と心を新たにした。

イントミスでの一件からしばらくして受けたあるクエストの事だった。


「いや~!今回のコロニー殲滅大変だったわ~!」

「確かにな!」


アタシ達は離れにある町の近くで発生したレア度Bのモンスター討伐へと赴いていた。

事前に対策を立てておいたお陰でこれを完了させ、ギルドに戻る途中の馬車でこんな事があった。


「それでも、ケインさんとフィリナさんのトドメの一撃で決めましたけどね」

「信じられないくらいに息ピッタリでしたよ」

「そうか?」

「伊達に20年来の付き合いではありませんね」

「ま、まぁね……」


後は帰るだけなので、ゆったりと談笑している中、ニコラスが何気なくこう言った。



「まるで夫婦のような阿吽の呼吸でしたね!」


「「!!??」」

(俺がフィリナと……?)

(アタシがケインと……?)


突発的に言われた「夫婦」と言うワードにアタシとケインはギョッとした。

ケインとは幼馴染で同郷なのは確かだけど……。


「いやいや、付き合いが長いのは確かだけど、それほどの事では!」

「そ、そうよ!ニコラス!あんたがジョークなんてらしくないって……」


当のアタシとケインはその場で慌てて否定しまくった。

ニコラスが茶目っ気のあるジョークを言うなんてほとんど無かっただけに、まるで気配を消す事に優れたモンスターや冒険者から不意にぶん殴られた感覚に襲われた。

ケインはウチのパーティーのリーダー格で幼馴染だからね。

幼馴染だから、大事な事だから2回も言って聞かせていたのは鮮明に覚えている。


回想終了———————


□■□■□■□■□■□■□■□■□



「てな事があったのよ。そりゃ20年来の付き合いだから考えている事は粗方分かるとは言えさ……」

「そう言えば前に、ケインさんが普段から愛用している戦闘補助向けのアイテムが無くなりかけたのを知った際はこっそり買い込んでたような……」

「クエストで何かあったら大変でしょ!」

「他にもこの間のクエストでケインさんが手傷を負いかけた時は……」

「それは今後に影響しないためだから!」


最近になってからだが、普段は口数が少ないエルニもケイン絡みの事になったらここぞと言わんばかりにその関係について持ち上げるようになってきた。

普段は大人しい人ほど、いざ踏み込むとなればガンガン来る話は聞いた事あるけど、まさかエルニもその一人とは考えても見なかった。


「フィリナさん。ケインさんの事……」

「あれは幼馴染の関係を超えるのも時間の問題だったりして……」

「あり得るわね~」


トギマキしている様相をしているアタシを他所に、セリカとミレイユとエレーナはどこか察したように見ている。


「だ~か~ら~!」

「「「「!?」」」」


何かいかがわしい思案を抱こうとしているセリカ達を窘めようと声を出した。

酒の力もあって、アタシの気持ちも大きくなっている。


「アタシは冒険者よ。クエストで出向いた先で万が一だってある!だからこそ……。信じ抜いた仲間達に背中を預け、共に戦い、生き抜き、そして強くなろうとあり続けるものだって思うの!ニコラスやエルニには助けられてるのは本当よ!ケインもその……」

「フィリナさん……」


アタシは恥ずかしくなりそうな雰囲気を吹っ飛ばしたい気持ちで言ったけど、同時に先達の冒険者として後学のために伝えたい気持ちもあると思っている。

どちらかと言うと前者の比重が大きいけどね。


「ケインの事は本当に……。あの……。頼り甲斐のある冒険者だからさ……」


アタシは自分の顔が今どれくらい赤くしてしまっているか分からなかった。

ケインはアタシやニコラス、エルニが装備している武具の傷み具合や体調によく気付いてはフォローしてくれる。

ランクも実力も高い冒険者は世界を見渡せば沢山いるのは分かり切っているけど、アタシにとってケインほど信頼できる男はいないと思っている。


「アイツだって完全無欠じゃないのよ!だからアタシが世話をしてあげなきゃってか、えっと……。」



「ケインの相棒が務まるのはこのアタシ!フィリナ・トレミスを置いて他にいないのよ!」


なんて言っちゃった。

エルニは微笑ましそうに見ていて、セリカやミレイユは豆鉄砲でも受けたような表情になっていて、エレーナは『あらまあ、熱い事を言う』みたいなリアクションだった。


「それでこそ、フィリナさんですよ!」

「エ、エルニ?」

「ケインさんの相棒ができるのはフィリナさん以外あり得ませんよ!」

「末永く一緒に活躍される事を願ってます!」

「頑張って下さい!」

「ちょ、ちょっと~!」


囃し立てるエルニやセリカ、ミレイユとエレーナを必死に宥めながらも、パーティーメンバーについて語り明かす一晩を過ごすアタシ達だった。


でも……。何か楽しかったな……。




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