第116話 到着!ルゾイエン
2024年8月6日から夏と言えば……。
あれの要素が入って来ます!
ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略を達成した俺達。
ティリルを含めた領地を治めるハイレンド伯爵家の当主であり、エレーナの父であるロミック様の誘いで、護衛を兼ねた休暇を得る機会を得た俺達。
昼下がりのとある街の入り口———————
「ここがルゾイエンか~」
「初めて来ましたけど、綺麗な街並みですね~」
「一度行ってみたかったのよ~!」
「南の街の情緒を感じます!」
俺達はルゾイエンと言う街へと降り立った。
目の前には馬車が二台は余裕を持って通れるだろう道路の両脇には、レンガ造りと丸太造りの建物が大なり小なりと混在しつつも、緑豊かな木々が所々に生えており、アイテムショップはもちろん、食べ物を売っている露店もいくつか出ていて活気に溢れている。
心なしか、通りには身なりの良い服装をした富裕層らしき人達もちらほらと見える。
馬車が街に入って少しして、比較的新しさを感じさせるであろう建物の前に到着して俺達は降りる。
「今から私と会合する相手は、ここら一帯の施設を運営するオーナーなんだ。基本的に中に入るのは私とガレル、専属の騎士でいい。残ったトーマ殿達は廊下や外を見ていて欲しいが、任せていいかな?」
「「ハイ!」」
「エレーナも来なさい」
「承知しました」
ロミック様の言葉の意図を汲んで、俺はケインさんとアイコンタクトを取った。
そこからは有事における護衛に向けてベストと言っていいフォーメーションを汲んでいく。
その応接間にロミック様はエレーナと護衛の騎士数名を連れて入って行く。
残りのメンバーは周囲に注意を払いながら待機する事になった。
「まさか護衛のついでのようにルゾイエンに行けるなんて、ビックリですよ」
「街の中を見ても綺麗で賑やかだなって思うけど、どんな街なのかな?」
仕事と一緒にビュレガンセでも屈指のリゾート地に行っている事に驚くセリカに対し、俺は街について周囲に質問をしてみた。
「一言で表すならば、いかにも南の街って感じですかね!」
「本当にザックリ纏めたな!」
「面積自体はティリルと同じか少し広いくらいですけど、この街には広い砂浜や綺麗な海が近くにあるんですよ。それから商業も割と盛んですので、他の貴族はもちろん、他国のお金持ちもこぞって来る事も珍しくないって話ですよ」
「馬車からも見えたと思うんですけど、貴族を始めとする富裕層やそれに近い財力を持っている方向けの宿泊施設も街の中心にありますからね。もちろん、庶民的なところもありますけど、ティリルにある宿屋の方がずっと格安ですよ……」
「マジか……」
(リゾート施設って感じが確かに強いな……)
ミレイユとクルスの説明を聞いて俺はルゾイエンがどんな街なのかを少しずつ把握できるようになっていった。
ビュレガンセでも屈指の農作物を誇り緑豊かな街として有名なグリナムと娯楽施設を複数抱え賑やかな街として知られているイントミスを足して半分に割ったに加え、紺碧色に広がる海があると思うのが俺の印象だ。
俺も世界遺産級に綺麗な海のある街に来る事そのものが初めてなんだけどな~。
「我々はクエストと言う形ではありますけど、この街に来た事はありますよ。ただ、安い方の宿屋で泊まる事になったんですけど、それでも私達から見れば十分整っていて清潔でしたよ」
「安い方でも十分って意味ですね」
(高い方の宿屋は一体どうなってるんだ~?)
「高い方は一泊数十万エドルが当たり前と思っていいからな」
「アタシらにとって宿は、雨風を凌げて寝るところがあれば十分だからね」
ケインさん達もクエストの帰りで立ち寄る事もあったが、その時の状況を細かく教えてくれた。
貴族も好んで来る街ならば、高級路線はどんなだと思いながら周囲の見張りをしている。
しばらくすると、ドアからロミック様がエレーナとガレル様、護衛の騎士と共に部屋から出て来た。
「皆の者。待たせたね……」
「いえ!滅相もございません!」
ロミック様は鷹揚な振る舞いをして俺達の下に来ていた。
様子から見るに、有意義な会合だったように見える。
「今日の用事はこれにて全て終了だ。手配しておいた宿に向かうとしよう」
「皆様の分も用意してあります!」
ロミック様とガレル様がそう言うと、俺達は再び馬車に乗って目的地に向かう。
馬車を走らせる事おおよそ十数分……。
「さぁ!着いたぞ!」
「ここで2泊3日でしょうか?」
「そうだが……」
俺達が辿り着いたのは、白を基調にしたシンプルながらも洗練されたデザインで施行された壁に上品さを感じさせる10階はあるかもしれない建物だった。
俺がいた世界で言えば高級ホテルのようだ。
「よ、よろしいのでしょうか?」
「前にも言ったはずだが、これは我々からの気持ちなのだよ」
「だから遠慮なく過ごして欲しいんだ。もちろん、宿泊客の迷惑にはならないようにするのが前提だがね……」
「ありがとうございます!」
俺達が少し躊躇しているのを他所に、ロミック様とガレル様は快い笑顔を向けてくれた。
せっかく用意して下さったのにここで遠慮し過ぎるのも失礼だからな。
入った瞬間、白い大理石の床や壁が一面に広がり、天井にはシャンデリア、お金持ちが持っていそうな家具や美術品も要所要所に置いてある。
ロビーと言うには余りにも華やか過ぎるのではと思うのが俺の最初の感想だった。
そこへ従業員らしき男数人が出迎えてきた。
「これはこれはハイレンド伯爵家当主のロミック様。お待ちしておりました。どうぞご案内させていただきます」
「ありがとう」
「それで、今回の宿泊における部屋割りなのだが……」
ロミック様が応対している一方、ガレル様は部屋割りの編成を伝える。
それから俺達はそれぞれ手配してもらった部屋へと案内された。
因みに部屋割りのパターンは3種類だ。
①2人部屋:ロミック様とガレル様
②4人部屋:俺とクルス、ケインさんとニコラスさん(男性冒険者チーム)
③6人部屋:セリカとミレイユとエレーナ、フィリナさんとエルニさん(女性冒険者チーム)
以上の組み合わせだ。
「うお~!広い~!」
「おぉ!ベッドもフカフカだ」
「加えてルームサービスもあるそうですけど……」
「ここまでやってもらうと……ね……」
男性冒険者チームは4人部屋に案内されたが、ベッド4つと四角いテーブルにシンプルながらも良い材質を使っているだろう椅子4脚が置かれている。
インテリアの配置自体は至ってオーソドックスだが、使われている家具の素材は紛れもない一級品でできているのは触れて感じ取れた。
俺とケインさんは思わず感嘆の声を出してしまったが、クルスとニコラスさんは若干苦笑いをしている。
「セリカ達が宿泊する部屋も、これよりも広くて綺麗なんですかね?6人部屋なだけに……」
「多分その可能性は高いだろうな……」
一方、セリカ達が泊まる6人部屋———————
「うわ~~!広い綺麗凄い!」
「流石はルゾイエンでも有名な宿泊施設ですね!」
「こんな良いお部屋で今日と明日過ごせるなんて夢みたい!」
泊まる人数もあるとは言え、内装は何割り増しかで広かった。
エレーナはともかく、セリカとミレイユは思わずはしゃいでいる。
フィリナさんとエルニさんは表に出さないが、胸は高鳴っている様子だ。
大人の余裕なのか、冒険者としてのキャリアの差なのか、どちらでもいいが……。
「前にルゾイエンで泊まった宿よりもずっと格上げされた感じがするわよ。ねぇ、エルニ?」
「そうですね。あの時は男女4人で格安な方の宿で泊まる事になったんですけどね。言っても、広さや清潔感は悪くなかったのは本音です!」
「確かに!てかルゾイエンの宿って格安な方でも冒険者のあたしらから見れば十分と言ってもいいくらいに設備は整っているからね!プライドだけは高い貴族や商人ならば話は多いに変わると思うけど!」
「それ、同感です!」
(((本当にピンからキリなんですね……。ルゾイエンの宿泊施設って……)))
セリカ達も泊まる部屋には多いに満足している様子だ。
それからは食事やお風呂も楽しみながら、一夜を過ごす事になった。
ロミック様からは手厚い待遇をもてなされたけど、せっかく頂いた休暇の機会だ。
俺達は思う存分楽しもうと決めたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければ幸いです。
『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません。
面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます!