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第114話 巡る一報

いつもの日常に戻りつつあります!

ダンジョン攻略を成し遂げたトーマ達の報せが巡っていきます。

主に知り合った人達へ……。

ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略を達成した俺達。

それから拠点にしている街のティリルへと戻って、日常に戻ろうとしている。


俺達はティリルから西辺りにある岩山の湖畔に棲み付いているレア度Cモンスターの“アクアパイソン”数体を討伐するクエストの真っ最中だ。

体長が4メートルほどの青い鱗が特徴的な蛇のようなモンスターであり、【水魔法LV.2】が使えるため、Cランクパーティー向けのクエストになっている。

俺達は湖に潜んでいる“アクアパイソン”を狙うチャンスを見極めながら、木々の影に身を潜めていた。


「よし!今だ!」

「エレーナ!」

「ハイ!」


「【付与魔法LV.1】『エンチャント・レッド』!」

「【爆撃魔法LV.1】『サークルボンバー』!」

「「「「「シャァアアアア!?」」」」」


ミレイユはエレーナによる【付与魔法】によるサポートで【爆撃魔法】を強化している。

【爆撃魔法LV.1】『サークルボンバー』は『ボンバード』と比べると威力は落ちる代わりに、射程範囲が広がっており、それを【付与魔法】でパワーアップさせている。

お陰で“アクアパイソン”はダメージと共に爆風で陸上まで引き摺り出す事に成功し、当たり所が悪かっただろう一体は即死して粒子となって消え、5体は虫の息となった。


「【剣戟LV.1】『斬鉄剣』!」

「【剣戟LV.1】『ゲイルスラスト』!」

「【剣戟LV.1】『隠座十字』!」

「「「ギィイイイイイ!」」」


俺はセリカとクルスと共に【剣戟】スキルで3体の“アクアパイソン”の頭を斬って貫いて致命傷を与え、これも光の粒子となって消えた。


「「ジャアアア!」」

「「「!?」」」

「【氷魔法LV.2】『フロストブレス』!」

「「シャバァアアアアア!」」


2体の“アクアパイソン”が【水魔法LV.2】を出そうと口から強力な水のブレスを放とうとしたところにミレイユが【氷魔法LV.2】『フロストブレス』で援護して、その身体の大半を氷漬けにした。


「【ソードオブハート】&【剣戟LV.2】『地雷斬』!」

「「ギャァアアアア!」」


最後に俺がトドメを刺す形で強力な斬撃を2体の“アクアパイソン”を一刀両断した事で、その身体は光の粒子となって消滅した。


「湖の中や周辺にモンスターの気配はないです!」

「よし!クエスト達成だな!」

「「「「ヤッター!」」」」


クルスが【気配探知】や【魔力探知】で周辺を確認した後に全滅出来た事で、請け負ったクエストは達成となり、俺達はその場で喜びを分かち合った。

“アクアパイソン”が落とした魔石や表皮を拾い集めると、俺達はギルドへと戻って行った。


「確認しました。これをもってこのクエストは完了とさせていただきます。こちらが今回の報酬となります」

「ありがとうございます!」


馴染みの受付嬢であるナミネさん……。ではなく、彼女の後輩であるリンコさんと言う方が対応している。

ベージュのミディアムヘアを左おさげの髪型をしている素朴な雰囲気を感じさせる女性であり、ナミネさんと違って職員の中では若手の部類だ。

ナミネさんほどテキパキしてはいないが、一生懸命に対応しているのが分かるくらいの頑張り屋さんで好感が持てる。

経験はあるけど生意気な奴よりも、新人なりに頑張る姿を見せてくれる人が応援したくなるのは当然だ。


「久々にモンスター討伐のクエストでしたけど、事前の準備や打ち合わせをしておいたお陰でスムーズに行けましたね!」

「そうだな!」

「ミレイユさんの【爆撃魔法】は凄いですね!範囲特化にしているのにあの威力とは……」

「エレーナのお陰よ!」

「何にしても、クエスト達成できて良かったですよ!」


モンスターの討伐や完了手続きを終えて俺達は安堵の空気に包まれていた。

居合わせた冒険者達からも労を労われる事もあれば、ダンジョン攻略に参加した事を引き合いに出されてはその場の話題の中心になるシチュエーションもここ最近増えてきているが、暖かく褒め称えてくれる。

あのダンジョン攻略は間違いなく、俺達の良い経験であり、学びであり、糧となったのは誰が言おうと断言できる。

もっと成長していきたいモチベーションも高めさせてくれた。



一方、「農耕の街」として有名なグリナム———————


「聞いたか?ベカトルブ近辺で発見されたダンジョン攻略」

「聞いたぜ!【アテナズスピリッツ】がそこに拠点を構える冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】と共同で攻略したって話だろ?」

「結果を聞いたら達成だってよ。あの“デッドガーゴイル”を討伐したうえでだぜ!」


街中では俺達がダンジョン攻略を達成した話題が目立っている。

グリナムからベカトルブまでの距離は相当と言う言葉でも足るか分からないくらい遠いものの、冒険者絡みの話題や噂は早く届きやすい。

街のとある喫茶店で二人の女性がその新聞を見せ合っている。


「本当に話題に事欠かせないわよね!【アテナズスピリッツ】は……」

「もっと言えば、そこに所属しているクルスの事でしょ!」

「それね~」


かつてはクルスと同じパーティーメンバーであり、今はそれぞれ家業を手伝って生活している元冒険者のカズナとフルカだった。

かつては【アテナズスピリッツ】に身を置くCランクの冒険者だったが、とある事件で酷い怪我を受けたせいで身体に障害が残る事になってしまい、冒険者を引退せざるを得なくなってしまい、今ではそれぞれの実家が営む家業を手伝っている。

そんな二人も時間を見つけては定期的に顔を合わせては近況報告し合う関係が続いている。

冒険者になった時からの仲ってのもある。


「Aランクパーティーの庇護下とは言え、ダンジョン攻略に参加させてもらえるなんて、マジで羨ましいわ!クルスったら!」

「その上でサポートが主にしてもダンジョン攻略を達成できた瞬間に立ち会えたんでしょ?」

「ダンジョン攻略は冒険者にとってロマンの一つなだけにね!」

「「ね~!」」


カズナとフルカは色々言っているが、その表情は怒りよりも羨ましさと自分もやりたかったと言う一種のやるせなさが混在しているようだった。


「でも、ダンジョン攻略をより効率良く完遂するには『シーフ』を始めとする感知に優れたスキル持ちが必須なのは確かなのよね……」

「それなのにあたし達はその重要性や有難さを理解しようとしないまま、アイツを……」

「うん……」


クルスを追い出した理由は、調査系クエストに打ってつけのアイテムを入手できたのが理由だった。

アイテムを使ってクエスト達成に役立てる事は悪でないものの、それを理由にメンバーに対して酷い扱いや追放していい免罪符になるはずもない。

同時に過信や慢心が今のカズナとフルカの状況を招いたと言っても過言ではない。


「カズナ。あのさ……」

「分かってるわよ。今更言っても、もう変えられないし……。何よりクルスも言っていたじゃない!新しい未来をどうか進んで欲しいって……」

「そうね……」


カズナとフルカは押し黙った。

下に見ていたはずの相手が気付けばドンドンと自分達がやりたかった事を叶えていき、自分達はそれを諦めざるを得なくなった。

仕方ないとは割り切ったつもりでも、やはり未練は少しだけど残ってしまうものだ。

そしてフルカは口を開く。


「そうそう、リハビリが上手く行っているお陰で、最近では以前よりもスムーズに歩けるようになったんだ。まだ杖は必須だけど……」

「へぇ、そうなんだ……。こっちも重い物を少しずつ持てるようになって、そう……」

「「あ、あははは……」」


場の空気を変えようと全く面白くない話をしてしまっては空回りの末に苦笑いする二人であったのだ。


「クルス……。どこまで行っちゃうんだろうね……」

「さぁ……」


カズナとフルカは羨望と憂いが入り混じったような表情をしながら、光が差し込む窓を見上げているのだった。


ヒライト子爵家カントリーハウス内の屋敷・庭園——————


「【アテナズスピリッツ】の冒険者達はいつも退屈させないな~。ミクラ!」

「本当にそうですね……。グリナムに一番近い冒険者ギルドが【アテナズスピリッツ】とは言え、連日の活躍をこうして聞けるのは嬉しくもございます……」

「お母様もすっかりファンですね!」


庭園にある屋根付きのテーブルや椅子に座り、数名のメイドを後ろに抱えながらお茶を嗜んでいる三名が談笑している。

いかにも貴族の当主と感じさせる威厳と自信に満ち溢れ、年相応でいながらも端正に整った顔立ちをしている男性がヒライト子爵家の現当主であるアスバン様であり、隣に座っている気品と若さを感じさせる妙齢な女性はアスバン様の妻であるミクラ様だ。

その二人の前に座っている美しい顔立ちをした女性はアスバン様とミクラ様の愛娘であるチェルシア様である。

アスバン様が握っている新聞には、俺達がダンジョン攻略を達成した記事がドンと載せられており、そこには一緒に参加して頂いたAランクパーティー【ノーブルウィング】と俺達【トラストフォース】の名前もあった。


「あのギルドはあなたやチェルシアが言う通り、高い実力とそれに見合う優れた人間性を持っている方が多いと聞くわ。数日前、近隣領の領主との会合に向けての護衛に加わって下さった、あの……」

「【ブリリアントロード】ですね!Bランクパーティーの一つで、ウィーネスさんと言う方がリーダーをしています」

「そうそう、思い出したわ」


ミクラ様はアスバン様やチェルシア様と共に近隣領の領主と会合に同行した際、護衛として仕事を請け負った冒険者パーティーの名前を思い出そうとする中、チェルシア様が補足する形でフォローした。


「確か帰り道だったかしら?“メガベアー”三体が立ち塞がって来た時には鮮やかに片付けていたわね……」

「わたくしも見ていました。あんなに綺麗な人が誰も怪我をさせてしまう事無く、鮮やかな動きと連携で対処して見せましたから!」


用事を済ませて帰る道中でアスバン様達を乗せた馬車の前に“メガベアー”三体が立ちはだかるトラブルに見舞われたが、ウィーネスさんを筆頭にあっさりと片付けたのだった。

それを見ていたチェルシア様もその光景を思い出しながら嬉しそうに語っている。


「Bランクって言うのもあるでしょうけど、護衛の騎士の出番すら無いくらいの活躍だったわ」

「そうですね……。ただ、わたくしとしてはその……」

「ん?どうしたのチェルシア?」


ミクラ様も思い出しながら話していると、チェルシア様が少し物思いにふけている様子をしている。


「できる事なら……。トーマさん達のパーティーが来て欲しかったな~って思ってみたりみなかったりと……」

「彼らが恋しくなったのか?因みに私も可能ならばまた顔が見たいものなんだが……」

「次に会える機会があるのはいつになるのでしょうかね……」


チェルシア様は久しぶりに俺達と会いたがっているような表情をしており、アスバン様も同じ気持ちのようだった。


「きっと会えるさ……。その時を楽しみにしよう……」


アスバン様は紅茶の入ったカップを手に取って飲みながら、チェルシア様の心を解すのだった。




冒険者ギルド【ベスズプレイフル】執務室—————


「やってくれるわね……。あなたがマスターを務めるギルドの冒険者達は……」


諦観したような様子で新聞を見ている赤色のロングヘアーが特徴的で均整のとれた美しい女性は【ベスズプレイフル】のギルドマスターであるルチアーノ・エルロンさんだ。

イントミスに忍び寄る闇ギルドの事件を一緒に解決した経験があり、それからは【アテナズスピリッツ】と同盟のような関係を築いている。

ルチアーノさんも昔は冒険者であっただけに、ダンジョン攻略を達成したと言う情報は無意識に食い付きたくなるのだろう。


「トーマ達……。また一つ上のステージに行ったみたいね……」

(ウチのギルドももっと盛り立てていくわよ!)


窓を見つめながら、その活躍を自分の事のように嬉しがるルチアーノさんだった。



ハイレンド伯爵家カントリーハウス内の屋敷・執務室———————


「また凄い事をやってくれるな!エレーナ達は!」

「そうですね……。エレーナがお世話になっていました【ノーブルウィング】の庇護下があったのを考慮する必要はございますが、全員が戻って来られたようで何よりです!」


室内で新聞を見て談笑しているのは、ハイレンド伯爵家の現当主であるロミック様とその実子でありエレーナの兄であるガレル様だ。

二人はエレーナの活躍を喜ばしく思っているようで、表情も少し綻んでいる。


「ただ、“デッドガーゴイル”がボスモンスターと聞いた際は、肝を冷やしましたがね……」

「あぁ、ウルミナ殿達がいるならと思っていただけにな……」


新聞には俺達が出向いたダンジョン攻略に関係する記事が詳細に書かれていた。

発見した時の状況、攻略開始から達成までの経緯、ダンジョンのボスモンスターについて、戦利品について等の情報が詰まっている。

一方、ダンジョンの最深部で発見された謎のアイテムについてはまだ解明や調査が完璧でないからか、その情報だけは伏せられている。


「それにしても、ダンジョン攻略も経験するとは、エレーナもそうだがトーマ殿達にとっても有意義な事だとも取れるな。それから近隣領の貴族からもまた覚えが良くなるだろう」

「はい。おっしゃる通りです。冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】がより強く優秀な人材を抱えている事は、ハイレンド領内及び友好関係にある貴族の領地の防衛力向上と言う恩恵を受けられる事でしょう。ひいては闇ギルドの蔓延を始めとする犯罪を防ぐ事にも繋がると思われます」

「うむ。少なくとも我が領内でそれは積極的に無くしていかねばな」


ロミック様は正義感強いお方だ。

イントミスを脅かしかけた闇ギルドの一件以来、闇ギルドを始めとする犯罪撲滅に力を注いでおり、近隣の領主にも協力を呼び掛けている。

するとコンコンとノックの音がした。


「はい!」

「当主様、失礼します。例の視察と会合の件ですが、三日後の昼頃に決まりました」

「そうか。では準備を進め給え」

「承知しました。失礼します」


従者らしき人物が予定している用事が決まった旨を端的に伝えると、ロミック様はそれを承諾し、手筈を整えさせた。


「父上。私も本日中に片付ける仕事が残っておりますので、これにて失礼します」

「うむ」


続いてガレル様も少しの談笑を終えて自身の仕事を終えるために執務室を後にし、部屋にはロミック様だけが残り、静けさが表面立った空間の中でギィッと椅子の背もたれに自身の背中を預ける。


(確かその日行われる視察と会合は……。‼)


するとロミック様は何を思ったのか、引き出しにある便箋と封筒を取り出し、机の上に刺してある羽ペンを握り手紙をしたため始める。


書き終えると扉の門番に「速やかにエレーナへこの手紙を届けて欲しい」と伝えた。



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