第113話 冒険者達の女子会
今回は女性冒険者達がメインのお話です!
ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略を達成した俺達。
それから拠点にしている街のティリルへと戻って、日常に戻ろうとしている。
冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】で宴会を開いてもらった翌々日—————
「いや~!にしてもウチのギルドが誇るAランクパーティー【ノーブルウィング】の皆様や【アンビシャノブアレス】のAランクパーティー【飢狼団】と一緒に手を組んで冒険なんて羨ましい限りだわ!」
「ウィーネスさん。エレーナはともかく私は特に……」
「いやいや、セリカだってボスモンスターの“デッドガーゴイル”に遭遇する道中で出くわしたモンスターの群れ相手でも大立ち回りしていたんですから!」
「うふふ……。ミレイユだってモンスターの大群だけでなく、“デッドガーゴイル”を一時的に足止めするナイスアシストをしてたじゃないですか……」
「そう言う事を本番でやり切れるのは凄い事よ」
「にしてもやるわね~!あの“デッドガーゴイル”とド突き合うなんて……」
「本当に大した実績です……」
ティリルにある中々オシャレで清潔感のあるカフェの一室、8人は座れるだろう長さの長方形テーブルと8脚の椅子に7人の女性がいる。
そこにいるのは俺達Cランクパーティー【トラストフォース】のセリカとミレイユとエレーナ、Bランクパーティー【ディープストライク】のフィリナさんとエルニさん、同じくBランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさんとリエナさんが座っている。
美味しそうだけど見た目も追及したようなお茶菓子の数々がテーブルの真ん中に置かれ、それぞれの席にはティーカップやお菓子が並べられている。
それらを嗜みながら思い思いに女性同士で語り合う。
そう……。彼女達は女子会をしているのだ。
主な話題は俺達がダンジョン攻略に同行した件でありつつも、最近の冒険者事情も交えての情報交換を兼ねての集まりである。
「リエナさん、私服姿を初めて見たんですけど、清楚さはあっても意外と攻めたような形のワンピースとか着られるんですね」
「そう、ミレイユが今着ている服だって可愛いと思うよ」
「本当ですか?」
普段はそれぞれ冒険者ルックなセリカ達だが、今日は休養日なので全員私服だ。
ミレイユが言うように、リエナさんは青味がかかった白のオフショルダーワンピースを着用しており、美しさと可愛らしさを両立させたような印象を感じさせる。
ミレイユとエルニさんは可憐さや動きやすさを、セリカとフィリナさんとウィーネスさんは美しくもカジュアルさを混ぜたようなファッションに身を包んでいる。
(中でもエレーナはお嬢様ルックよね~)
「!?」
伯爵家のご令嬢であるエレーナはオフホワイトをベースにした涼し気なワンピースに身を包んでおり、気品もあって正に深窓の令嬢を思わせそうな装いをしている。
それからは服装や最近のパーティー事情、クエスト先の中で知った情報で盛り上がった。
「何か見知った仲の冒険者パーティー数組の女のメンバーだけで集まるなんて中々無いわよね~!」
「そうね!ギルドで酒を飲み明かす事はともかく、休養日を利用してこんな風に集まるなんてほとんど無かったけど、楽しい事ね!」
ウィーネスさんとフィリナさんがそう言うと、各々が「あぁ、そうかも!」みたいな表情をしている。
同じギルドのメンバー同士で夕方から夜中でギルド飯に興じる事はあっても、互いに休養日でまったりと女性だけで過ごす事は余りなかった。
「トーマさんが言ってたんですよ。休養日に見知った同性同士で過ごしてみるのも新たな発見や楽しみにもなるって!」
「そうよね!昨日の時点で同じメンバーの予定を聞いておかなかったらこんな機会は中々巡って来なかっただろうし!」
「ウチらも同じくケインやニコラスに確認してみたら、いい機会だからとかってあっさり許してくれたのよね~」
休養日を利用して、見知った女性の冒険者同士でゆっくりお茶をする機会を用意するのはどうかって案は、実を言うと俺のアイデアだった。
ダンジョン攻略を祝う時の打ち上げ時にそう進言したのも俺だった。
冒険者パーティーとは言え、それぞれ個人の時間はやはり大事になる。
せっかくできた休日を有効に使うならば、リフレッシュや何かの成長のきっかけになればと思って提案してみたが、喜んでくれたようで良かった。
「トーマさんって、私達の事を良く見てくれてるし、思ってくれるんですよね!優しくて真っすぐですから……」
「確かにね。ただ優しいだけじゃなくて、私達のモチベーションを引き出すのが上手ですし、ベストと思うような事をスパッと言ってくれる事がよくあるから、信用してしまうんですよね!実際に私がこうして今も頑張れているのはトーマさんのお陰でもあるんですから」
「そうなんですか?」
セリカとミレイユは俺の事を随分と褒めている様子であり、エレーナが確認している。
ミレイユがソロになってしまった時にパーティーへ入って欲しいと頼んだのは確かに俺だし、それからは目覚ましい活躍を見せている。
「言われて見るとトーマさんって、本人の実力や潜在能力も高いと思いますけど、仲間のモチベーションや長所と向き合って最大限に活かそうとする適正が高いって感じるんですよ。わたくしの提案した事も積極的に活かして、尊重してくれる。だからこそ、トーマさん達が素晴らしいパフォーマンスを見せて頂けて、今回のダンジョン攻略に貢献できたと思ってならないんですよね……」
エレーナがそう言うと、少しの沈黙に包まれた。
だが、それも数秒で晴れた。
「確かにね。アタシも稽古を付けた事はあるよ。剣の腕前は発展途上なのは本当だけど、教えた事は早い段階で吸収していく素直さや勤勉さはマジなのよね~」
「バダックやモレラも言っていたけど、トーマはポテンシャルもあるけど、クルスもそうだと思うわ。近接戦のスキルを習得できないままで終わる『シーフ』が半分以上だからね」
「本当ですか?」
「やっぱりトーマさんやクルスは凄いのよ!」
ウィーネスさんとリエナさんも随分と褒めており、セリカとミレイユは喜ばしい様子だ。
ベカトルブに赴く前に稽古を付けてもらったのは確かだが、俺達がここまで評価されていたとは正直思ってもみなかった。
「それを言うなら、エレーナやミレイユ、セリカだって大した成長よ!」
「「「え?」」」
不意にフィリナさんがそう言うと、3人はその方角を目にやった。
「Bランク以上のパーティーに付いて来れるCランク以下のパーティーってそうそういないのに、闇ギルドの件と言い、今回のダンジョン攻略の件と言い、アタシらの目から見ても名誉な事よ」
「ケインさんやニコラスさんも褒めてましたよ。若手の女性冒険者の中でも特に成長著しいって……」
「そ、そうですか?恐縮です……」
「う、嬉しいです……」
「お褒めに預かり光栄です」
「謙虚ね~。おっ、デザート来たよ!」
「待ってました!」
フィリナさんとエルニさんからの忖度を感じさせない褒め言葉を言われたのが嬉しいのか、セリカとミレイユは少し照れてるような表情であり、エレーナは恭しく振舞っている。
美味しそうなデザートが運ばれたのがきっかけで、会話の花が咲いていった。
プライベートの俺達の一面、最近の発見、美味しいお茶菓子の感想の語り合い、恋愛に関係する話までいかにも女性らしい話題で盛り上がっている。
今のセリカ達はモンスターを討伐したり、未開の地で冒険をしていく冒険者ではない。
生業から離れて和やかな空間を楽しんでいるだけの女性達だ。
「ねえねえ、この後皆で買い物とか行かない?アタシちょっと気になるアイテムや服とかあるんだけど!」
「「「「「「賛成~!」」」」」」
ウィーネスさんの一言で、買い物にも行く事が決まった。
こうして仲良しな女性冒険者達の女子会と言う楽しい一日を過ごすセリカ達だった。
一方———————
「セリカ達、今頃何やってるんでしょうかね~?」
「お茶をした後で買い物でも行っているんじゃないか?」
少し高めな飲食店でCランクパーティー【トラストフォース】の俺とクルス、Bランクパーティー【ディープストライク】のケインさんとニコラスさん、同じくBランクパーティー【ブリリアントロード】のバダックさんとモレラさんとトクサさんがいる。
昼間から男だけで肉と酒を楽しんでいる。
(こんな日も悪くないな……)
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