第111話 出迎えと報告
所属ギルドに戻ってきました!
仲良くなった先達の冒険者達も出てきます!
ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略を達成した俺達。
そして数日に及ぶ馬車での移動をして……。
「しばらくぶりのティリルだな~!」
「確かに懐かしさを感じそうになりますね!」
「何日も離れたら恋しくなっちゃいますよ!」
俺達は主な拠点にしているティリルへと戻って来た。
ベカトルブへの出発からダンジョン攻略までの滞在に加え、馬車の旅を含めれば約二週間近くもティリルから離れていた。
この街を拠点にしている俺達から見れば、どこか恋しい気持ちになりそうだった。
「さて、ギルドに戻りましょうか!」
「ハイ!」
「早く報告を終えてカルヴァリオさんを安心させないと……」
ウルミナさんが仕切る形で俺達は拠点にしている冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】へと帰っていった。
そして辿り着いてギルドの中に入っていく。
「【アンビシャノブアレス】との共同クエストお疲れ様です!提出いただいたダンジョンを攻略した証拠の確認をもちまして、今回のクエストは達成とします!」
「ありがとうございます」
馴染みの受付嬢であるナミネさんからクエスト達成を伝えられ、ウルミナさんも丁寧にお礼の言葉を返した。
「「「「「「「「ウォーーーー!」」」」」」」
「マジでダンジョン攻略を達成したのか!」
「おめでとうございます!」
「スゲェエエエーーー!」
「ん?何だ?」
ダンジョン攻略を達成した結果を聞くと、居合わせている冒険者達が歓喜の声を上げており、俺達は若干驚いていた。
「【アテナズスピリッツ】でダンジョン攻略を達成した事がここのところなかったからね。皆喜んでいるのよ……」
「ダンジョン攻略は冒険者達にとってはロマンのある事の一つだからね!」
「確かに……」
ルエミさんとジーナさんが補足すると、俺も納得した。
ゲームや漫画の世界でしかないと思っていたダンジョン攻略に一緒に挑む事になり、達成して帰って来れたと考えると、俺も嬉しさが込み上げてきた。
「やぁ。しばらくぶりだな、トーマ達!」
「!?」
その中で俺は聞き覚えのある声に目をやった。
「【アンビシャノブアレス】との共同クエストによるダンジョン攻略、お疲れさんだな!」
「ダンジョン攻略の達成と言う結果は、数日前から届いていたよ!おめでとう!」
「ケインさん!それに皆さんも……」
それはBランクパーティー【ディープストライク】のリーダー格であるケインさんであり、同じメンバーのフィリナさんやニコラスさん、エルニさんもいる。
「Aランクパーティー【ノーブルウィング】の皆様と一緒とは言え、ダンジョン攻略をやり切るとは凄いじゃないか!」
「ありがとうございます!ですが、私の力も微々たるモノですので……」
「そんな事はございません!」
「エレーナ?」
ケインさんが褒めてくれるものの、実際にダンジョンのボスモンスターである“デッドガーゴイル”との戦闘で大きな比重を占めたのはウルミナさん達Aランク冒険者の面々だった。
俺も感謝の言葉は伝えるも、自分から誇示するのも恥ずかしい気がするので謙遜していたところにエレーナが割って入った。
「トーマさんがご用意していただいたパージフルードがなければ、どうなっていたか分かりませんでした!トーマさんもボスモンスターに一太刀ですが、ダメージを浴びせているのをわたくし見てましたよ!」
「エレーナの進言でパージフルードを購入しておいたんですよ。それが攻略の決定打になりましたと言いますか……」
「やっぱりやるじゃないか!」
「ど、どうも……」
「トーマ!皆!お帰り~!」
エレーナの証言で俺はケインさん達に労われた。
すると今度はまた聞き覚えのある気さくで快活な女性の声が聞こえてきた。
「良かったよ~!一人も欠ける事無く帰って来てくれて!」
「ウィーネスさん!それに【ブリリアントロード】の皆様も……」
次に声をかけてくれたのは、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさんであり、同じメンバーであるバダックさんとリエナさん、モレラさんにトクサさんもいる。
ベカトルブへ赴く前、ウィーネスさんの提案で彼女達から戦闘や冒険に関連する手解きを受けていた。
そのお陰で俺達の戦闘能力も底上げされ、ダンジョンの中にある多くのモンスターを相手取った時も、稽古の経験が活きたのだった。
「セリカ~!どうだった?初めてのダンジョン攻略!」
「ハイ!とても良い経験になりましたよ!」
「そう!良かった!」
セリカはウィーネスさんと和やかに会話しており、ミレイユやクルスもバダックさんやリエナさん、モレラさんやトクサさんと談笑している。
改めて振り返ると、確かにあのダンジョン攻略は命懸けだったと思ったのは本当の事であり、こうして戻って来れてホッとしたのだろう。
それを思う俺もその一人だけどね。
しばらくすると……。
「あの~。【ノーブルウィング】の皆様と【トラストフォース】の皆様、今お時間よろしいでしょうか?」
「は、はい……?」
そこへナミネさんが声をかけてきた。
「今回のダンジョン攻略の件についてお話したい事があるとマスターが……」
「はい、分かりました」
「すぐに向かいます」
ギルドマスターであるカルヴァリオさんに呼ばれ、俺達は一旦皆さんとその場で別れた。
それからはナミネさんの案内で執務室へと案内され、ウルミナさん達【ノーブルウィング】に続く形で俺達はその部屋に入って行く。
「まずはお帰り……。そして、今回のダンジョン攻略の件、本当によくやってくれた」
「ありがとうございます!」
カルヴァリオさんが労いの言葉をかけると、ウルミナさんを筆頭に全員がお辞儀をする。
「ダンジョンは相当手強かったそうだったね。特にボスモンスターが……」
「はい。【アンビシャノブアレス】のAランクパーティーである【飢狼団】も護衛に加わって下さったお陰もあり、達成に至りました」
「また、エレーナによる【聖属性魔法】もダンジョン攻略に大きな貢献をしてくれました」
「そうか……。それを聞けて君達を派遣させた甲斐があったと同時に全員が無事に戻って来れて何よりだと改めて思うよ……。では、今回のダンジョン攻略における経緯を報告していただけるかな……」
「はい。まずは……」
俺とウルミナさんがダンジョンで起きた経緯の一部を話すと、カルヴァリオさんは興味や関心が入り混じったような表情になった。
それからはウルミナさんを中心に今回のダンジョン攻略を達成するまでの経緯を報告した。
因みにティリルからベカトルブまでに遭遇した“ギガヴォルグ”二体と交戦した事も伝えた。
「そうか……。ボスモンスターがあの“デッドガーゴイル”とは難儀な相手だったね」
「はい。今回はトーマ達がアンデッド系のモンスターに極めて効果的なパージフルードと言うアイテムを持っていた事が達成できた要素となりました」
「正確には、エレーナが用意した方が良いと進言される形でしたが、結果的にそれが“デッドガーゴイル”を討伐する鍵になったと見ています」
「エレーナもよく頑張ってくれたね」
「恐縮です……」
カルヴァリオさんがエレーナを褒めると、彼女は謙虚に答えた。
正直に言って、エレーナがいなかったらどうなっていたか分からない内容だっただけに、本当に感謝でいっぱいだ。
「それでボスモンスターを倒して部屋の最深部にあると言う訳だね……。そして、私が最も注目している点がある……」
(もしかして……)
カルヴァリオさんの顔つきが少し真剣になっていく。
「トーマが抜いたとされる例のアイテムについてだ……」
(やっぱり来るよな……)
そう、潜ったダンジョンの最深部で発見・入手した謎のアイテムの件だった。
ウルミナさん曰く、「ダンジョン攻略の中でも相当イレギュラーな事」だと聞いており、話題に上がらないはずがないと思ったものの、案の定出てきた。
それを聞いた皆の顔つきも引き締まっている。
「取った時の状況を出来る限り具体的に教えて欲しい。トーマ、話してもらいたい」
「はい……」
促されるままに俺は思い出せる限りの事を話した。
セリカ達もフォローする形で色々と補足してくれたお陰で滞りなく進んだ。
「なるほど……。私も冒険者生活は長かったけど、相当特殊かつレアなアイテムである事はイメージできるね……」
「私もそう思います」
「それでベルゲン様の提案で、現在そのアイテムは王都にあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部が調査や解析を行う形で預かり、今後どのように扱うかの決定を待っている状況と言う事か……。アイテムがアイテムだけに、それが今のベストだと思う」
「そうですよね……」
俺が言い終えると、カルヴァリオさんも納得したような様子だった。
カルヴァリオさんも現役時代は高名な冒険者だったため、王都にある冒険者ギルド連盟本部に任せた方が賢明だと見ているようだ。
それからウルミナさんは質疑応答に答える形で続いて数分……。
「以上が今回のダンジョン攻略における成果報告となります」
「うん、ありがとう」
こうして、ベカトルブ近辺で発見されたダンジョン攻略における報告は終了となった。
「話が変わるのだが、皆はこの後、何か外せない用事はあるかな……」
「え?ありません……」
「我々も拠点にしている邸宅に戻ってゆっくりするつもりですが……」
「そうか……」
「何かございますでしょうか?」
カルヴァリオさんは打って変わって、気さくにこの後の予定について聞いてきた。
俺はセリカ達に確認を取ったが、何の予定もないと分かり、ウルミナさんも抱えているメンバー達へ確認したところ同様だった。
「今夜はウチのギルドの飲食スペースにて、ダンジョン攻略を達成したお祝いを兼ねた打ち上げをするんだけど、参加してくれるかい?」
「「え?」」
笑顔いっぱいなカルヴァリオさんからの思わぬ提案に俺達は思わず固まるのだった。
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