第109話 未知の武器の方針
ダンジョンで見つけた例のアイテムについての今後が分かります!
ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略を達成した俺達。
ダンジョン攻略を達成した翌日、冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】があるベカトルブを始めとする土地を治める領主であるブレジール辺境伯爵家の当主ベルゲン様と邂逅をし、ダンジョン攻略に関連する成果を報告していた。
冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】の談話室—————
「……と言う訳で、私が今回のダンジョン攻略に2回目の参加となったんですよ」
「そうだったんですね……」
「でも、最終的には達成できて良かったですよ」
「あぁ、先に挑んでいった冒険者達に良い報告ができたよ……」
ベカトルブを始めとする街を数カ所治めるブレジール辺境伯爵家の当主であるベルゲン様に報告をするために残ったメンバー以外は、ギルドの談話室で今回のダンジョン攻略に関係する事柄について振り返っていた。
「近くの治療院で入院している私がいるパーティーのメンバー達も凄く喜んでたわ」
「“デッドガーゴイル”がボスモンスターだったって聞いた時のアイツら、かなり驚いていたんだけどね!」
「そりゃそうだろ。ただでさえ再生能力が厄介な相手にダンジョンの魔力を吸い上げてパワーアップしているならキツイ事この上ないぜ」
ジュネさんとサリナさんは先にダンジョン攻略に挑んだものの、重傷を負ってしまった同僚の見舞いで成功した事や実情について話しており、ゴージさんはやれやれと言った表情だ。
『僧侶』であり、ダンジョン攻略における最初のメンバーに選ばれたジュネさんは5人組のBランクパーティーに所属しているが、達成し切れずに失敗してしまい、撤退した。
【アンビシャノブアレス】に所属するBランクパーティー2組で挑んだものの、モンスターの大群や複雑なトラップに泣かされ、全員が大なり小なりの怪我を負ってしまった。
ジュネさんのように軽傷だった者は現場復帰できているものの、数名が入院を余儀なくされるほどの重傷者を何人も出してしまった。
2回目と3回目はBランクパーティー3組ずつで挑み、防御力や感知に力を入れた編成のお陰でダンジョンの奥まで辿り着けたものの、【聖属性魔法】が必要と言う事が判明した。
しかし、【聖属性魔法】を使える冒険者が【アンビシャノブアレス】には一人もいなかったため、俺達が所属している【アテナズスピリッツ】に助力を求めたと言う訳だ。
「アタシらもダンジョン攻略は初めてじゃないけど、まさかボスがアンデッド系の要素を持っているなんて思わなかったわね」
「トーマ達がパージフルードを持っていなかったら、これまた失敗だったかもしれん」
「また挑むだろうダンジョン攻略に備えて俺達もそれを買っておこう。何にしても、誰も命を落とさなくて良かったよ……」
ジーナさん達もダンジョン攻略時には平然としていたが、内心ではプレッシャーも抱えていたようだった。
どんな強者であろうと、未知の領域や想像以上に強い相手に挑む時は無意識にプレッシャーを感じてしまうものであり、Aランク冒険者でもそれは例外ではない。
ましてやそれ以下のランクである俺達【トラストフォース】は尚の事だ。
“デッドガーゴイル”に勝てたのは、ウルミナさんやガイキさん達の実力とエレーナの進言で用意しておいたパージフルードのお陰なのは間違いない。
何かしらのピースがかけていれば、失敗してしまう可能性はかなりあったのだから……。
だからこそ、ラルフさんの言う通り、誰も命を落とす事なくダンジョン攻略が叶ったのは本当に良かった。
「それにしても、思った以上に時間かかっているわね……。ベルゲン様への報告……」
「確かにそうね」
セリカとミレイユは時間が長引いている事を気にし始めている頃だった。
「もしかしたら、ダンジョンの最奥で見付けたあのアイテムの事も話しているかもしれないな。それを含めたら長くなりそうだし……」
「あ~確かにそうよね。使うスキル次第で形が変わるアイテムなんて初めて見たから」
クルスが推察したセリフを言うと、ミレイユも頷く。
一同が悶々としそうになっている時……。
ガチャ!
「皆!待たせたな!」
「おー!終わったのかい!」
「あのアイテムに関連する話題について話していたら長引いちまった」
扉からガイキさんを先頭に報告の場に残ったメンバーが入っていく。
どうやら話は終わったようだった。
「トーマさん、エレーナ。話は終わった感じでしょうか?」
「あぁ。終わったよ」
「ダンジョンの奥で見つけたあのアイテムはどうなるのですか?」
「それが……」
俺はクルスとセリカに質問をされたが、その表情は少し渋かった。
口を開こうとしたところ……。
「ダンジョンで見つけた例のアイテムは、王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部にある精査や鑑定に優れた部署で解析及び一時的に預かってもらう事が決まったわ」
「「「「え……?」」」」
(ウルミナさん、ご説明ありがとうございます)
言いにくそうにしている俺をフォローするかのように、ウルミナさんが丁寧に説明してもらえてホッとした。
ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部とは文字通り、国内各所に点在する冒険者ギルドで起きた事案や実績、所属メンバーの情報全てを取り纏め、過ちを犯した冒険者の処罰に関連する最終的な決定、国外にある冒険者ギルドや関連施設の渉外等を担う、ビュレガンセで主に活動する冒険者達の総本山だ。
冒険者ギルド連盟本部は数ある冒険者ギルドの大元であり、一つのギルドだけでは処理し切れない案件、それこそ今回のダンジョン攻略で発見された例のアイテムに関係する解明も担っており、お抱えの鑑定や解析を担う部署も持っている。
未知の部分が多い事もあって、今回はその連盟本部にお願いするという流れだ。
「王都ファランテスにある連盟本部って、やっぱり凄いの……?」
「当然凄いですよ!冒険者やその冒険及びクエストに関連する情報の全てが詰まっていると言っても過言ではない機関ですよ!それこそ悪い事をしでかせば、ギルド連盟本部に睨まれた冒険者はそれだけで普段通りの活動が困難になりますから!」
「裏を返せば評判が良いと、何かと恩恵があったりするんですよ。補助金がもらえたり、上位貴族の護衛と言うクエストを回してもらえる等……」
「マジか……」
セリカやクルスの補足事項を聞いて、俺はまだ抽象的な段階だが、ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部がどれだけ凄いかを思い始めている。
「今の段階では俺だけが使える例のアイテムは、王都の冒険者ギルド連盟本部預かりとなって、詳細が分かるまではしばらく時間がかかるって事……」
「そうですか……」
「それでしたら王都のギルド連盟本部に任せた方が賢明ですよね……」
「でも、ダンジョンでゲットした財宝やアイテムはいくらかもらえる事になったよ」
「本当ですか?」
「うん!」
俺の説明に対し、セリカ達も納得してくれた。
ダンジョンで得た財宝やアイテムはほぼ半分の割合で【アテナズスピリッツ】と【アンビシャノブアレス】で働きや功績を考慮して分け合うとの事だ。
今回の共同クエストにおいて、【アンビシャノブアレス】がダンジョンの発見や詳細について調べる役割を担い、ダンジョンの最奥を超える重大なキーマンを担ったエレーナと、謎のアイテムを手にする役割を果たした俺が所属する【アテナズスピリッツ】なのもあって、それで落ち着いた。
「以上、この報告会をもって共同クエストは終了よ!」
「恐らくヴァラガンさんとベルゲン様との詰めの会合はもう終わる。ベルゲン様を見送るために外に出ておこう!」
ウルミナさんとガイキさんの発言で、俺達はギルドの門の外に出ている。
それから程なくして……。
「これはこれは、お見送りのためにわざわざありがとう……」
「いえ、滅相もございません」
「この度はご足労いただき感謝します」
ウルミナさんとガイキさんを中心に、ベルゲン様は乗って来た馬車に乗り込むために正門から出てくるところに俺達は最敬礼でお辞儀をしている。
それからベルゲン様は馬車に乗り込んだ後、窓から顔を出してきた。
「例のアイテムについては早めに片が付くように善処していく。結果が判明次第、ギルドにも報告させてもらうよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ベルゲン様はそう言うと、見送りに来たヴァラガンさんもお辞儀をしながら感謝の意を表している。
ワイルドな風貌をしているヴァラガンさんのきっちりしたお辞儀を見ていると、礼儀正しさの中にある迫力まで伝わってくる。
「それからそちらのトーマ殿……」
「はい!」
俺はベルゲン様に名前を呼ばれて一歩前に出る。
するとベルゲン様は俺の顔をジッと見ており……。
「私も辺境伯爵家の当主として、このベカトルブを始めとする街をいくつか治めている。強い冒険者や騎士を何人も見てきた。武勇の面ではまだその者たちに及ばぬが、そなたほど不思議なギフトを持った者と出会ったのは初めてだ……。そして例のアイテムを持ち帰りダンジョンの攻略を完全に達成できたのは、そなたの存在も大きい……。運命的と言っても過言ではなかろう……」
「はぁ……」
ベルゲン様は俺に向かって語り掛け、言葉を並べ続けていく。
確かに思い返せば、今回のダンジョンを攻略できたのは、運が良かっただけでなく、一緒に挑んだ仲間の存在あってのものだ。
だから決して傲慢になってしまわないようにしなければならない俺だった。
「例のアイテムについてはブレジール辺境伯爵家の当主の名に懸けて、必ずや解き明かす事を約束しよう!そしてトーマ殿、そして皆の者も更なる成長と活躍を期待しておるぞ!」
「ハイ!」
「出しなさい」
俺は期待の言葉をかけて頂いたベンゲル様に力強く返事をした。
後ろにいるセリカやウルミナさん達も微笑ましい様子で見守っている。
そしてベルゲン様を乗せた馬車はギルドを背に走り去って行き、俺達は見えなくなるまで見送るのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければ幸いです。
『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません。
面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます!