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第106話 ダンジョン攻略⑩

ダンジョン攻略中です!

終わりが見えてきました!

ベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略に臨んでいる俺達。

ダンジョンの最奥にある扉をこじ開け、“デッドガーゴイル”との戦闘に入った俺達は大苦戦したものの、倒すに至った。

そしてアイテムが眠るとされる扉の向こう側へと辿り着き……。


「何だ?」

「これは一体……?」

「何故トーマが近付いただけで光が……?」


ダンジョンの奥に刺さっている武器に俺が手を伸ばすと、微かな光が零れ出た。

他の皆も触る事こそできたが、引っこ抜けなかったばかりか、光も発生しなかった。

その様子にウルミナさん達も驚きを見せていく。

すると俺は少しだけ動きを止めた。


「いいか……?掴むぞ……」

「「「「……」」」」


セリカ達に目をやり、頷き合った。

そして……。


ガッ!

「!!」


俺は意を決して、その武器の柄の部分を握りしめる。

すると……。


パァアアアアア!


「!?」

(これは……?)

「何だ?この光?」

「トーマさん!」


眩い光が発せられ、俺達を、そして辺り全体を包み込んでいった。

そして光が消えていき……。


「……ッ!何だったんだ……?」

「トーマさん!それ……」

「え……?」


一瞬ボーっとしてしまったが、セリカの声を聞いて俺は不意に自分の右手を見た。

そして俺は驚きの表情でいっぱいになった。


「何だ……。これ……?」


俺の右手に握られていたモノは、刺さっていた時は年季が経ったような錆びが少し混じっていたモノから一転し、白を基調にした銀色が混じったような武器であったのだ。


(これが……。ダンジョンの奥に眠っていたアイテム……?)

「何だろう……?剣のような、棒のような……」


着けていて思ったのだが、想像していた以上に軽く、どことなく重厚感もあった。

見た目は金属製の武具だが、重さは余り感じないようだった。


「おーい!トーマ!どうした~?」

「あ……。はい!今向かいます!」


呆然としている俺にウルミナさんに声をかけられ、俺達は皆の下に戻っていった。

そしてその武具を皆に提示した。


「ご覧の通り、腕輪のような形をしているんですよ……」

「確かにそう見えるわね……」

「俺らも多くの冒険者や騎士達が使う武具を見てきたが、ここまで独特なタイプの形状をしたのは初めてだ……」

「……」


Aランク冒険者としてのキャリアの長いウルミナさんやガイキさん達も、パッと見ただけではどのような武具なのかも、どんな性能をしているかを理解する事ができていない様子だった。


「トーマ。ちょっと借りても大丈夫か?」

「はい……」


ガイキさんに促される形で、その謎の武器を渡した。

その場で振るっては魔力を込めるようにしてみたものの、これと言った変化はなかった。

他のメンバーも同じように魔法やスキルを使う等の方法も試してみたが、うんともすんとも言わなかった。


「何も起きない……」

「魔法を使っても変化なしか……」

「そうだ!トーマさん!もう一回握って何かスキルを使ってみるのはいかがでしょうか?先ほど一人で引っこ抜けたのもあって、何か分かるかもしれません!」

「確かにそれを考慮したら新しい可能性や発見があるかも……。トーマやってみて!」

(もし私の仮説が本当なら……)

「分かった……」


セリカやウルミナさんに提言される形で俺が握って、覚えて日の浅い【武術】スキルを発動させてみると……。


「【武術LV.1】『ライダーキック』!」

キィイン!

「!?」

(何だ?形が……)


すると右手に握っていた謎の武具が一瞬にして、剣のような形から膝より下を覆う甲冑のような形に変わった。

そして近くにあった高さ2メートルほどの岩に当てると、木っ端微塵の砂みたいに吹き飛んでいた。


(これって……?)

「【風魔法LV.1】『エアロショット』!」

キィイン!

「【炎魔法LV.1】『ファイアーボール』!」

キィイン!

「【回復魔法LV.1】『ショートヒール』!」

キィイン!

「「「「「オォオーー!」」」」」


俺がエレーネを迎え入れた段階で習得できていた【風魔法】や【炎魔法】を含めた魔法攻撃を放てばカラフルな色彩の装飾が施された1メートル半ほどのロッドに、【回復魔法】を使えば長さはそのままで天使をかたどったような彫り物のタイプと姿を変えていった。

【気配遮断LV.1】を発動させれば、歪曲した爪や鎌の様な形状のロングナイフへと姿を変えていった。

その様子を見ていたガイキさん達【飢狼団】の面々は驚嘆している。


「【剣戟LV.1】『斬鉄剣』!」

キィイン!


俺の【剣戟】スキルを発動させれば、立派な装飾が施され、俺が普段使っている剣よりも少し長い刃渡りをした長剣に変化した。

それを振るうと、数本の大きな木が変哲もない紙のように切れた。

何より、どのスキルを使っても通常に放つ時以上の力が漲ってくるようにも感じ取れた。


「凄い武器ですね!変幻自在に姿を変えられて、その上出力まで上げられるなんて……」

「魔法の方もLV.1の段階で収まる威力じゃなかったですよ!」

「気配に関係するジョブスキルまで影響するのはびっくりですね!」

「それにしても何だろう?俺が使った途端に様々な形に姿を変えていくのに、どうして他の方々が使っても何も起きないのかな……?」

「トーマのギフトに関係しているからだと思うわ……」

「ウルミナさん」


俺達は手にした謎の武器の変幻自在さに驚き感心しつつも、自分はできて、冒険者としてのキャリアが長く実力者で知られるガイキさん達は全く反応が無い事に疑問を抱く中、ウルミナさんが話しかけてきた。


「トーマのギフトである『何でも屋』の要素が少なくとも絡んでいるのは間違いないのは確かだと思う。引っこ抜く事ができたのも、ギフトを持っている者に流れる特有の魔力や波動が共鳴したとも見て取れるわ……。さっき数人がかりでやってもできなかったのは、恐らくトーマのギフトとは関係のない魔力や波動がごちゃ混ぜになって拒んでいたのかもね……」

「なるほど……」


最初にガイキさんが引っこ抜こうとしたものの失敗し、男数人がかりの力業でもビクともせず、【聖属性魔法】を持っているエレーナがやってもダメだっただけでなく、今いるメンバーの中でトップクラスに強いウルミナさんも魔力を込めながらやっても抜く事ができなかった。

引っこ抜いてすぐに試しで何かスキルを使っても、俺以外では何の反応もなかったのに対し、俺が使えばその効力が発揮できた。

確かに世界でも持っている者が非常に少ないギフトだからできたのだろうと納得できた。

正確には、納得していると自分に言い聞かせて、心の中にストンと落とせるようにしていくと言った方が正しいかもしれない。

まだまだ未知の部分が多いのだから……。


「まぁ何にしても、ダンジョン攻略達成って事で今は良しとしようぜ!」

「レアアイテムや財宝もたっぷり手に入った事だし!」

「そうね!ダンジョンを攻略した証拠になるコアも入手できた以上、もうここに長居する必要もないから出ましょう!」

「「「「「ハイ!」」」」」


ガイキさんの一声を皮切りに、俺達は沢山発見されたレアアイテムや宝石らしきモノを始めとする財宝を回収してダンジョンから出て行く事にした。

ダンジョンのボスモンスターを倒す事に成功した場合、モンスターに遭遇するリスクはゼロであり、帰りは楽だとも教えてくれたのもあって、進む時よりもいくらかリラックスして帰路に着く事となった。

それからスイスイと歩いて一時間ほど———————


「……」

「ん?ウルミナさん?俺の顔に何か付いてますか?」

「え?いや、その……。トーマ達はダンジョン攻略が初めてだと思うけど、感想を概ねでいいから聞いておきたいなって……」


出口が近付く中、ウルミナさんは俺の顔をジーッと見ており、俺が反応すると、彼女はどこかはぐらかすような仕草をしながら今回のダンジョン踏破についての感想を求めてきた。


「大変な事は沢山ありましたが、本当に良い経験ができました!」

「そうかそうか!そう言ってもらえると同行した俺達も嬉しい限りだぜ!」

「ダンジョンがどんな場所かやポイントを学ぶ機会が得られて本当に有意義でした!」

「Cランクパーティーがダンジョンに入る機会なんて滅多にないからね!」

「“デッドガーゴイル”を見た時は正直ドン引きでしたけど……」

「ダンジョンで“デッドガーゴイル”は本当に爆弾案件を抱えたような気持ちになったな」

「それな!パージフルードを持ってると言う奇跡的状況を作ってくれたエレーナ嬢には感謝だぜ!」

「ありがとうございます……」


出口が近くなってきたからか、少しずつ面々に笑顔が零れていった。

一方、後ろの方を歩いていたウルミナさんは……。


(トーマのギフト、『何でも屋』……。ギフトだけを見ても可能性はまだまだ広がる。この要素は紛れもない事実だけど……)


平静を装いつつも、どこか神妙な面持ちをしている。


(あの不思議なアイテムを最終的に手に入れる事ができたのはいい。皆の前ではあぁ言ったけど……)


ウルミナさん達はベカトルブに発つ前日、所属しているギルドのマスターであるカルヴァリオさんとの打ち合わせで、俺達【トラストフォース】についての情報を共有されている。

メンバーの名前もギフトは然り、これまでの実績についても知らされている。


俺が異世界からやって来たと言う事実も……。


(まさかね……)


ウルミナさんが抱く思案を他所に、俺達はダンジョンを抜け出る事になった。




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