第105話 ダンジョン攻略⑨
ダンジョン攻略中です!
ダンジョンの最深部に辿り着きます!
ギルドマスターであるカルヴァリオさんのお願いでベカトルブと言う街に赴いてダンジョン攻略に臨んでいる。
ダンジョンの最奥にある扉をこじ開け、“デッドガーゴイル”との戦闘に入った俺達は大苦戦した。
しかし、エレーナの進言で勝っておいたパージフルードを浴びせた事で事態を好転させる事に成功し、最後はウルミナさんの強力な魔法で“デッドガーゴイル”を倒すに至った。
「「「「イヨッシャーーー!」」」」
「「「「「ヤッターーー!」」」」」
ダンジョンのボスモンスターである“デッドガーゴイル”を倒した俺達は歓喜に包まれた。
ガイキさんら【飢狼団】の面々は肩を組み合って喜びを分かち合い、俺達はウルミナさん達に労われた。
後に皆は【回復魔法】をかけてもらい、受けた傷や溜まった疲労も概ね取れた。
総力戦と言う形ではあるが、主に活躍したのは前線にいたガイキさん、ジニックさん、ゴージさんに加え、ジーナさん、ランディーさん、ラルフさん達だ。
後方射撃ではルエミさんとサリナさん、そしてトドメを刺したウルミナさんだ。
俺達はと言えば、エレーナの勧めで買っといたパージフルードを用いた作戦を発案した事くらいだ。
いや、ミレイユは【氷魔法】、エレーナは【付与魔法】で援護していたし、セリカとクルスは“デッドガーゴイル”の身体にパージフルードをぶちまけていたな……。
俺も一発浴びせる事ができた。
「それとエレーナ……。ありがとうな……」
「え?」
「ダンジョン攻略に大いに貢献してくれただけじゃなく、アンデッド系のモンスターに効果的なパージフルードを手入れておく事を進言してくれたお陰だ……。感謝している……」
「いえ、そんな……」
今回のダンジョン攻略は、【聖属性魔法】が使えるエレーナの存在が何より大きかった。
魔法だけでなく、リスク管理を兼ねたアイテムの買い揃えを勧めてくれたお陰で再生能力を持った“デッドガーゴイル”を倒せずに失敗もしくは誰かが犠牲になっていたかもしれなかったのだから。
「本当に助かったよ……。今まで俺達もダンジョン攻略は何回も経験して来たけど、【聖属性魔法】が必要なんて案件は初めてだったんだよ」
「恥ずかしながら、ウチのギルドには【聖属性魔法】なんて高尚な魔法を使える奴がいないものでな」
「だから本当にいてくれて良かったって思うわ……」
「「ウンウン」」
「【飢狼団】の皆様……」
謙遜しているエレーナにガイキさんらはその功績を褒め称えている。
Aランクパーティーである【飢狼団】は一人一人の実力やキャリアは抜群であり、協力を願い出された冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】の中でもトップクラスと言われている。
しかし、今回のようにかなり特殊な事例には弱いところがあり、その分エレーナの護衛に力を入れる事になった。
そして実際にその戦いぶりを見て、紛れもない猛者揃いと改めて思った。
「エレーナの事で喜びたい気持ちは分かるけど、そろそろ奥にあるアイテムとやらを取りにいかない?」
「あっ、こりゃ失敬!」
「「「「「「「「「「「ハハハハハ!」」」」」」」」」」」
ウルミナさんが先に進む事を言い始めると、ガイキさんはフランクな表情を浮かべ、皆は釣られて笑っていた。
俺達は“デッドガーゴイル”を倒したフロアの奥へ進んで行く。
ガゴンッ!
「!?」
「何……?今の……?」
「皆!あれを……」
突然何かが開いたような鈍い音に目をやると、下へと続く階段が現れた。
少し覗き込んで見たが、何メートル続くか分からない深さだと感じたが、二人が横並びで歩いても十分なスペースはあり、壁には火が灯されているため、暗さで足を踏み外す心配は無さそうだ。
「恐らく最深部へと繋がっているのだろう……」
「気を付けて進みましょう!」
俺達はダンジョンを進む際のフォーメーションを取って階段を降りて行った。
それから進み続けて数分後……。
「ここは……」
「何と……」
階段を降りて少し進むと、少しの光が差し込み、黄緑色の草木が広がっている森林のような空間だった。
さっきまでは薄暗く陰気さを感じさせるフロアで“デッドガーゴイル”とやり合った時とはまるで別の世界に放り出されたようなギャップを感じずにいられなかった。
「ダンジョンの奥ってこんな空間が広がっているんですかね……?」
「ダンジョン攻略そのものは何回かあるが、これは……」
俺がガイキさんに問うと、ダンジョン攻略の経験がある彼でもこの状況は遭遇した事がないとの事であり、ウルミナさん達も珍しいと思わざるを得ないような表情をしている。
ウルミナさんやガイキさんによると、ダンジョンの最奥は大体の場合は薄暗くて不気味さを漂わせる石がベースな空間との事であり、相当なレアケースって話だ。
俺達が辺りを見回すと……。
「皆さん!あれは……?」
「もしかして……?」
俺は数個の宝箱と一つの一メートルあるかないかの武器が突き刺さっている。
台形に盛り上がっている土台に刺さっているのは剣のようだが、独特な形状をした剣のような棒のようなモノにも見て取れ、ボロボロでこそないがかなり年季が入っているような印象だ。
「皆さん!まずは私とクルスで宝箱を調べてみますね!」
「少々お待ちいただければ幸いです!」
「分かったわ!」
クルスはラルフさんと共に【トラップ感知】で宝箱にトラップが無いかを確認するために一声上げ、ウルミナさんはそれを了承した。
クルスが概ね確認し、ラルフさんがより細かく見ていくやり方で進んでいった。
それから少しして……。
「精査が完了しました!怪しいモノは一つもありませんでした!」
「結果はこちらです!」
「何々……?」
クルスとラルフさんが検証を終えた後、俺達に完了報告をして、その宝箱数個から出てきたモノの周りに集まっていった。
「まず、ミスリルを始めとするメジャーな鉱石や魔石が大量にありますね!」
「中にはレア度Aのモンスターから出るだろう魔石もあります!」
「マジか!」
クルスとラルフさんが精査した所、宝箱から出てきたのは、普通の討伐系や採取系ではすんなり手に入らないだろう魔石や武具に加工できるだろう材量がこれでもかってほどの量が溢れ出ていた。
強力なモンスターを倒した後なのもあってか、俺の心は正直昂っている。
全員が喜びと達成感を感じつついる雰囲気の中、見落としてはならない事がもう一つ……。
「この刺さっている武器は一体……」
「まぁ、ダンジョン攻略の褒美って意味だろ?これも持って帰って……」
ガイキさんがそう言って刺さっている武器を引っこ抜こうとした時だった。
「ん……。あれ?」
「ガイキさん。どうかしましたか?」
「いや、この武器を引っこ抜こうとしているんだが、抜けなくて……」
どこか気の抜けたような声を出したガイキさんに対して俺が質問すると、刺さっている武器が中々抜けないで困ったような状況になった。
それからどんなに力を込めても、人手を増やして引っこ抜こうと試みても、取れる様子が一向に見えない。
土台を破壊して取り出そうと試みようとした時だった。
「あの……」
「ん?」
「俺がやってみてもよろしいでしょうか……?」
俺は自分がやってみたいとガイキさん達に伝える。
力づくや魔力を込めても抜けないとすれば、きっと何か条件があるはずだ。
ファンタジー系のゲームでも、勇者じゃなければ抜けない剣もあるように、何かクリアしなければいけない要素があると見ている。
「色々と試してみるのもいいかもしれないわね。やってみなさい」
「ハイ!」
俺はその武器の前に立った。
まずは俺が手を伸ばす。
ポォ……。
「!?」
瞬間、目の前に刺さっている武器から微かな光が灯った。
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