SS 6話 ウィーネスさん達の日常
主人公達に稽古を付けてくれた方々の日常です!
女同士の友情も少し描きます!
ギルド近くにある住宅街の道の真ん中。
早朝からジョギングをしている一つの人影が映った。
「はぁ……。はぁ……」
ウェーブを利かせた澄み渡る水流のような水色の髪をしたロングヘアーをハーフアップに整え、小麦色が少しかかった肌をした活動的な雰囲気を醸し出す一人の女性がいる。
白を基調にしたタンクトップとハーフパンツから覗く両手脚は普通の女性よりもスラリと長く、鍛え引き締まった身体つきをしており、サンバイザーから覗く瞳も美しかった。
「ふぅう……。晴れた日は身体を動かすに限るわね!」
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダー的存在であるウィーネス・ルーラインさんだ。
ウィーネスさんは冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に籍を置くBランク冒険者であり、女性の身でありながら、冒険者界隈では生粋の女傑として有名だ。
晴れた日にはジョギングを始め身体を動かし、後にシャワーを浴びるのがウィーネスさんのモーニングルーティーンだ。
「あぁ……。バダックおはよう&ただいま!」
「おはよう&おかえり!もうすぐ朝飯できるぞ!」
「マジ?丁度良かった!」
シャワーを浴び終え、扉辺りで鉢合ったのは同じパーティーの一員であり、『重戦士』のバダックさんだ。
刈り込んだ茶髪と剛毅ながらも人当たりの良さそうな印象を感じさせる顔立ちをしたガタイのいい男性であり、黒いTシャツから伸びる両腕は筋肉で詰まっており、丸太のように太く逞しい。
「ウィーネスさん!バダックさん!朝ごはんできましたよ!」
「わ~い!美味しそう!」
「子供みたいなリアクションね」
「でも、確かに美味しそうだな!」
料理をしているのは、最近加入したばかりの『僧侶』であるトクサさんだ。
トクサさんは東の国から修行のためにビュレガンセへ移住して少しした頃、ウィーネスさんにスカウトされる形でパーティーの一員になった。
【回復魔法】を得意にしており、縁の下の力持ち的存在のトクサさんだが、意外な事に料理上手であり、肉や野菜を中心にバランスの取れた献立で振舞っている。
同じパーティーメンバーである『アーチャー』のモレラさんや『魔術師』のリエナさんも朝食作りを手伝っている。
「「「「「いただきます!」」」」」
「う~ん美味しい!このミソスープ絶品!お店出せるよ!」
「あ、ありがとうございます」
「それにしても、トクサがこんなに料理ができるとはな……」
「普段からやっているのかな?」
「料理は趣味なので……」
「この魚も焼き加減最高……」
ウィーネスさん達もトクサさんの手料理に舌鼓を打っている。
トクサさんが加入する前の料理当番はローテーションでやっていたものの、ウィーネスさんやバダックさんに任せるとパンと焼き肉だけなどと偏りがちなパターンが多かったため、モレラさんとリエナさんがメインで担っていた。
回復や料理を得意にしているトクサさんが加入したのは、ウィーネスさん達にとっては色んな意味で大きいみたいだ。
戦力にしても、日常生活にしても……。
それから朝食を終えて……。
「あ!いつも使う外傷用のポーション入荷してる!」
「これキープしておこう……」
「このボーガン……。小さいけど遠くまで飛びそうだな……」
「バダックさん!これとかどうでしょうかね?」
「悪くないな……」
ウィーネスさん達は武具やアイテムの買い出しに出ている。
クエストや冒険なしの休養日なだけに、今日は全員が鎧やローブなど、いつもの冒険者ルックではなく、私服だ。
ウィーネスさんは丈が短めな白いワークジャケットを羽織り、黒色のTシャツに薄い青色のパンツとカジュアルな格好をしており、バダックさんは濃紺色のタンクトップにカーキ色のカーゴパンツと武骨さを感じさせる出で立ちだ。
モレラさんは黒のジレを羽織り、下には白シャツやベージュのゆったり目なパンツを身に付けており、トクサさんは清涼感を感じさせる青色のシャツと白いパンツとどちらも知性を感じさせる装いだ。
リエナさんは青味がかかった白のオフショルダーワンピースを着用しており、美しさの中に可愛らしさも感じさせる。
普段は落ち着いているリエナさんだが、クールビューティーと言う言葉が似合うくらいの美人であり、可愛い服も似合うのだ。
それぞれ個性が出ていて似合っている。
買い物を終えた一行は身を置いている冒険者ギルドへと足を運んだ。
「おい見ろよ!【ブリリアントロード】だぜ!」
「見ねえ顔がいるな!新メンバーかな?『僧侶』っぽいな?」
(はい、その通りです)
ウィーネスさん達を見ている冒険者達も、パーティーの新参者であるトクサさんを見て少しコソコソと話し始めている。
トクサさんも少し気恥しそうだ。
「【ブリリアントロード】の皆さんは休養日なのか、私服だな……」
「ウィーネスさん……。冒険者ルックも良いけど、私服姿だとまた新鮮で良いよな~。加えてあんだけの別嬪だし!」
「バダックさんも凄い筋肉してるぜ!」
「モレラさんって知性派イケメンって感じがしなくない?」
「分かる分かる!」
「リエナさんってローブのせいで分かりにくかったけど、かなりスタイル良いよね~!」
「加えてあの大人な魅力!素敵~」
ウィーネスさん率いる【ブリリアントロード】もBランクパーティーとしてギルド内でも有名なので、自然と注目が集まっている。
今回彼女らが来たのは次に受けるクエストの確認だ。
「どれにしようかな~?」
「ウィーネス!これとかどう?」
「ん?これは……。ヒライト家の……」
(セリカやトーマ達と親交のある貴族じゃない)
どのクエストを受けるか選んでいる中、リエナさんから見せられた依頼書には、俺達とも面識がある子爵の爵位を授かっているヒライト家の当主であるアスバン様が依頼した内容だ。
「何々……?近隣領の領主との会合に向けての護衛か……。B~Cランク向けか……」
「かのヒライト家がこうして護衛の依頼を出すなんて……。随分とウチのギルドも信頼されているっぽいね……」
「これも……。トーマやセリカらの影響もある感じかな……?」
「そうかもしれないけど、どうする?」
「う~ん……」
ウィーネスさんが考え込んで数十秒……。
「よし!受けよう!」
「言うと思った!」
「護衛中や行き帰りを合わせると3日ほどに及ぶらしいから、相応の準備はしておこう!」
「武具のメンテナンスも忘れないようにしなければな……」
「護衛におけるフォーメーションの確認もしなければ……」
他のメンバーも納得した事で話も纏まり、手続きを終えたウィーネスさん達は後日クエストに出向く流れとなった。
それからは飲食スペースで作戦会議を行った後に生活の拠点である邸宅へと戻った。
ティリルの住宅街にある二階建ての若干古めの家屋ではあるが、5人の冒険者がそれぞれ暮らすには充分な広さと設備は持っているため、日常生活に不自由はない。
ダイニングキッチン付きのリビングで食事を済ませた後、ウィーネスさんとリエナさんは一緒にお風呂に入っている。
浴槽には大人二人が入るには充分だろうスペースだった。
「ふう~!暖まる~!」
「そうね……」
ウィーネスさんとリエナさんは一緒の湯船でまったりしている様子だった。
バダックさんら男性陣は後で入るとの事だ。
「そう言えば、トーマやセリカ達が【ノーブルウィング】の皆様とベカトルブに赴いている頃だと思うけど、まだ着かないわよね……。ティリルからだとかなり遠いし……」
「多分だけど、高速馬車か特急馬車を使って目的地に向かっていると思うよ。結構急ぎの要件ぽかったし、そっち使ってると思うよ……」
「あ、そっか!」
普段は落ち着いていて口数が少ないリエナさんも、お風呂タイムの時はリラックスできるのか、いつもよりも言葉が流暢に出ている。
「高速馬車や特急馬車で思い出したんだけど、アタシらがBランクになってしばらくした頃、ティリルから4~5日はかかる場所へ行くために高速馬車を初めて使ったの覚えてる?」
「あぁ……。確か出発早々にモンスターが出てきたところへウィーネスがいの一番に切り込んで、そこに私とモレラが援護して、バダックも加勢しててんやわんやで……」
「そんな事もあったわね……」
モンスターと遭遇する危険性が極めて少ないルートを通る従来の馬車と違い、高速馬車や特急馬車を利用する際は、森林などを通っていくため、モンスターと鉢合わせる確率が高い。
戦う術をほとんど持たない行者を始めとする冒険者ではない利用客を守る必要性が出てくるので、「早く着けるルートを通るから、モンスターが出たら守って欲しい」と言う暗黙の了解が発生する。
故に、高速馬車や特急馬車は冒険者向けの馬車とも言われており、時にはいつもより早く物資を運びたい業者の護衛を担うケースもある。
「あの時は中々大変だったわね……。自分らだけならともかく、行者の安全も考えながら立ち回らなきゃだったからさ……」
「一匹でも取り逃がしたら大変な状況だったからね……。大体片付けて気が抜けそうになったところに“ゴブリンソルジャー”が不意に行者へ襲って来た時は私が魔法で援護したからね……」
「あの節はどーも!」
「うん、こちらこそ!」
ウィーネスさんとリエナさんは思い出話に花を咲かせ始めている。
前線で戦場を駆け回るウィーネスさんと魔法による後方射撃でフォローするリエナさん。
戦闘スタイルや振る舞いも正反対に見えるけど、同世代の女の冒険者であり同じパーティーメンバー、通じるところも多い。
「思えば、私にバダックとリエナでパーティーを組んだ時にはよく喧嘩したわね……。立ち回りとか、金遣いとか……」
「それを言うならウィーネスだって……」
出会った当初の二人は性質的に真反対なのもあってよく衝突していたけど、共に冒険をして、クエストを達成していく中で互いに理解し合い、敬意を抱き合い、ピンチの時には助け合い、今ではかけがえのない仲間であり親友となった。
形こそ異なるけど、俺達【トラストフォース】のセリカとミレイユのような関係だ。
普段は仲の良い二人でも、時に口喧嘩する事もあれば、愚痴り合う事もある。
それでも、最後は仲直りして、その度に絆を深め合っていく。
高め合える存在が身近に、ましてやパーティーの中にあるのは、それだけ幸運な事なのだ。
「すっかり長くなっちゃったわね……。バダック達も待っているだろうし、切り上げよ!」
「そうね!明日も早いし……」
語り尽くせて満足したのか、ウィーネスさんとリエナさんは風呂から上がっていった。
それからリビングに向かう。
「ごめんね~!ちょっと長風呂しちゃったかも!」
「大した事はない!時間もあったからウィーネス達の武具もメンテナンスしておいた!」
「そう?ありがとう……」
バダックさん達は時間がある事もあってウィーネスさんとリエナさんの武具もリペアフルードでメンテナンスしていた。
手入れの行き届いた武具を持ったウィーネスさんとリエナさんは向き合いながら少し微笑んでいた。
「どうした?二人共……」
「「何でもない!」」
「何だよ?教えてくれてもいいだろう?国家機密事項じゃないんだから~」
「どんなレベルよ!」
バダックさんとモレラさんはそれとなく質問したが、ウィーネスさんとリエナさんは悪戯っぽくはぐらかしており、トクサさんも「仲が良いんだな」と微笑ましく見守っている。
翌日————
「さて!行こうか!」
「「あぁ!」」
「ハイ!」
「えぇ!」
そして、ウィーネスさん達【ブリリアントロード】は今日もクエストへと精を出すのだった。
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