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第95話 到着!ベカトルブ

ギルドマスターであるカルヴァリオさんのお願いでベトカルブと言う街に赴いて欲しいと言うクエストを受ける流れになった。

Aランクパーティーの【ノーブルウィング】とベカトルブへと向かっている中、道中で一つの小さな町で宿泊していた。


一つの部屋で3人の女性が冒険に出る準備をしている。

一人は鎧に身を包んで、大きな両刃斧を背に肩鳴らしの腕回しをしていた。

もう一人は上品さすら感じるベージュのローブに身を包んで絢爛さと洗練さを混ぜたような杖を握っていた。

そのまたもう一人は黒を基調にしたローブとアームカバー、首回りに魔導具らしきアクセサリーを身に付けている。


「ウルミナ!準備OKよ!」

「私もできたよ」

「では向かいましょう!ベカトルブへ!」


そして藤色のマントを纏い、愛用の杖を握って部屋を出て行き、二人は付いていく。

この3名こそ、【アテナズスピリッツ】が誇るAランクパーティー【ノーブルウィング】のリーダーであるウルミナさん、サブリーダーのルエミさん、パーティー内のオカン的役割のジーナさんだ。


「あら、ごめんなさい。時刻通りに来たけど、待たせてしまったかしら……」

「いえ、待っていませんよ!我々もさっき来たばかりなので……」

「そう……?では向かいましょう!」

「ハイ!」


ウルミナさん引率の下、俺達は使用していた高速馬車のある場所へと向かった。

そこからは幸いな事にトラブル一つないまま辿り着いたのだった。

そして昼下がりにて……。


「着いたよ。ここごベカトルブよ……」

「「「「オーーーー!」」」」


俺達は目的の場所であり、ビュレガンセ国内でも他国に最も近い場所とされている街であるベカトルブへと足を踏み入れた。

冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】を構えている土地なだけに、ティリルよりも少しだけ古風な景観は感じたものの、多くの人で栄えている印象だった。

武具や冒険のために向けたアイテムのお店もあれば、健全な経営をしているのが分かるような酒場や宿屋も要所で点在していた。

そこからはウルミナさんらに付いていく形で冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】へと歩いて行った。


「ちょっと警戒していたけど、ティリルと大差ない気がしてきたな……。

「昔ながらの感じはしますけどね……」

「意外と空気が美味しいかも……」

「ただ、ティリルと比べれば少し気温は低いんですよね……。あの山を越えれば、スウォーミクスと言う雪国がありますので、その寒冷な空気がベカトルブまで流れているんですよ」


エレーナが指差した高めな山の向こうには、ビュレガンセの隣国であるスウォーミクスと言う国から流れる風がベカトルブへ吹いているのが理由だと説明してくれた。

季節風みたいなものか……。

言われて見れば、歩いている人達の中にはストールやマフラー、コートを着ている人が若干目に付いた。

それから歩く事数十分……。


「着いたわよ!ここが【アンビシャノブアレス】よ!」

「ここが……」


俺達はベカトルブを拠点とする冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】へ辿り着いた。

建物の大きさは【アテナズスピリッツ】よりも何割り増しかのスケールがあり、門や壁もどっしりとした造りになっている。

見る人によっては要塞をイメージさせそうだ。

派手な印象があった【ベスズプレイフル】とは対照的に、素朴で武骨な印象を与えさせる。


「ウルミナさん、お待ちしていました」

「一人残して情報収集させてごめんなさいね……」

「いえ、私が一番適任ですので……」

「ウルミナさん、その方はもしや……」


扉から黒いカジュアルな装束に身を包む一人の男性が現れた。

やり取りからするに、恐らく【ノーブルウィング】最後の一人と直感した。


「トーマ達に紹介するわ!彼はラルフ・ダキス。私と同じ【ノーブルウィング】のメンバーで、ダンジョンに挑むための情報収集を担ってくれたの!」

「初めまして。ラルフだ。今回はよろしく頼む!【トラストフォース】の皆さん!」


ラルフさんは冒険者ランクAの『シーフ』だ。

灰色がかかった黒髪のショートヘアに刃物のような目の鋭さを表現したような切れ目が特徴的な男性だ。

動きやすさに比重を置いた黒い装束に身を包み、両手脚には漆黒に染めた薄めの甲冑で覆われており、腰にはクルスが普段使っているタイプのロングナイフのような武器を腰に携え、背中には1メートル弱の刀らしきモノを背負っている。

後方支援の役割が強い『シーフ』でありながら、【剣戟】スキルや【武術】スキルも高いレベルで習得しており、情報収集を得意としているため、ベカトルブに滞在しながら、その近辺でダンジョンに関連する調査をしていた。

それから俺達も自己紹介を済ませ、それからウルミナさんを先頭に入って行った。


「うわ~。広いな~」

「流石は大所帯のギルドって感じですね!」


中に入ると、受付スペースや併設の飲食スペースも【アテナズスピリッツ】よりも大分広く、クエストに出向こうとする者から冒険帰りの食事を楽しむ者まで、多くの冒険者達でごった返していた。

俺達が受付の方に歩いていると……。


「うお~。あの魔術師らしき女、スッゲ~美人!」

「側にいる茶髪の魔術師っぽい女も別嬪じゃん!」

「てかあれって【アテナズスピリッツ】のAランクパーティー【ノーブルウィング】のウルミナとルエミじゃねえか?」

「つー事は側に控えるガタイの良い女と槍使いの男はジーナとランディーか?生で見ると貫禄あるぜ!」

「じゃあ後ろの黒装束の奴はラルフか?」


飲食スペースで食事に興じている冒険者達はウルミナさん達を見て、最初は好奇心が勝ったような目で見ていたが、すぐに顔と名前を思い出した様子だった。

Aランクパーティーになると、他所の冒険者ギルドにもその名声が届いている事を思うと、ウルミナさん達がどれだけ凄い冒険者である事かを再認識させられる。

このまま行くと思われたが……。


「後ろに付いているあの白い衣装をした女って、ハイレンド伯爵家のお嬢さんであるエレーナ・ハイレンドじゃねぇか?」

「貴族令嬢ながら冒険者を志したって話はマジだったのか?」

「じゃあ、あれが【トラストフォース】って事か?【アテナズスピリッツ】のCランクパーティーの中で最も勢いがあるって……」

「みたいだぜ……」


エレーナの存在も加味してだろうが、俺達も有名になりつつあるようだった。

有名人と言えば聞こえは良いだろうが、それだけ周囲の目が芽生えてきており、善行にしても悪行にしても、多くの人に目に届くって意味だから、プレッシャーに感じつつある。

それからウルミナさんがギルドの受付嬢に話を通すと、数人の事務員を含めて慌しく動き始めている。

【アンビシャノブアレス】から見れば重要な事案のようだ。

それから瞬く間に出迎える準備が整い、ギルドマスターの執務室へと案内された。


(国内きっての武闘派ギルドのマスター……。どんな人だろう?)

「マスター!【アテナズスピリッツ】から派遣された例の皆様がお見えになりました」

「あぁ。通していいぞ!」

「皆様、どうぞ……」


俺は素朴な疑問を抱きながら案内され、【アンビシャノブアレス】ギルドマスターの促しと共に部屋へ入っていくと、一人の剛毅な男性がいた。


「待っていましたぜ!【アテナズスピリッツ】の皆さん!そして、エレーナの嬢ちゃん!」

(この人が、ここのギルドマスターか……)

「俺は【アンビシャノブアレス】のギルドマスターをやっているヴァラガン・ブルダッカってんだ!今回は協力してもらえて感謝しますぜ!」


ヴァラガンさんはフランクに寄って挨拶してきた。

まるで獅子のたてがみのように不規則に切り揃えられた灰色がかった白髪と褐色の肌をしている大柄な男性であり、年齢も50代かどうかと思うが、年齢を全く感じさせないくらいに筋骨隆々の肉体をしている。

カルヴァリオさんとはまた違った意味でのギルドマスターにも見える。

挨拶もそこそこに俺達は早速話し合いに入っていく。


「概要は聞いていると思うが、ベカトルブ近辺で洞窟型のダンジョンが発見されたんだ。ウチのギルドが数組挑んだ結果、最奥に辿り着きこそしたが、そこにある扉はどんな攻撃もビクともしなかった。魔法やアイテムで精査したところ、【聖属性魔法】を持つ冒険者でないと開かない事が判明したんだ……」

「それは存じております……。そのために【聖属性魔法】が使えるエレーナが必要であると言う事ですね……」

「そう言う事にはなるな……」


ウルミナさんとヴァラガンさんのやり取りが始まり、ティリルを発つ前に聞いた話の通りである事が改めて分かった。


「ウチのギルドには『魔術師』や『僧侶』等の魔法をメインにするギフト持ちは確かに何人も抱えちゃいるが、恥ずかしながら【聖属性魔法】を使えるヤツがいなくてな……。それで今回、ギルド間同士で協力し合う形になったって訳なんだよ」

「そのためにわたくし達が招かれたと……」

「あぁ。エレーナの嬢ちゃんにこんな遠いところまで呼んじまう流れになって申し訳ない!ダンジョン攻略にはこちらもAランクパーティーを護衛に付けさせる!」

「いえ、とんでもございません。引き受けると決めたのは我々ですし、そちらからもAランクパーティーを付けていただけるなんて、こちらこそ感謝ですよ!」

「本当にかたじけない!」


ヴァラガンさんは事の経緯を伝えると、エレーナにティリルから遠く離れたベカトルブまで来てくれた感謝を伝えた。

申し訳なさそうにしているヴァラガンさんに対し、エレーナは優しく諭した。

流石はエレーナと言ったところだ……。


「明日向かってもらうダンジョンはベカトルブから北の方角にある!」

「お心遣い感謝します。我々は明日に備えて準備を整えておきます」

「ありがとう。ギルドの近くに知り合いが営んでいる宿があるからそこに泊まっていくといい。外観は年季を感じさせるかもしんねえが、最近補修や整備をしたばっかりだから結構綺麗だぜ!俺が口を利いて何割か安くさせておく」

「ありがとうございます。何から何まで……」


話し合いの結果、例のダンジョンには明日向かう事が決まり、ヴァラガンさんは旧知の仲である知人が営む宿屋へ安く泊めてもらえる計らいまでしてくれた。

強面だけど、器が大きく気の良い人物だと初めて知った。

気付けば日が沈む時刻になり、俺達はギルドを出てその宿屋に赴いた。

部屋を出ようとした直前にヴァラガンさんは「宿屋に荷物を置いたらギルドに来て欲しい」と言われ、俺達はそれを承諾した。


「ヴァラガンさん、ギルドに来て欲しいって言ってたけど、何するんだろう……?」

「トーマ、クルス。酒は飲めるほうか……?」

「え?はい、飲めます。エールとか好きなんで……」

「僕も飲める方ですよ」

「そうか……」


荷解きを終えた俺とクルスに対し、ラルフさんが不意に酒の強さについて確認をしてきた。

何の意図だろうと思いもしたが、本当に飲める方なので素直に答えた。


「あの、どういう意味で……?」

「ギルドに行けば分かる」


少し訝しげに思う俺を他所に、ランディーさんがそう言って部屋を出て、俺とクルスもラルフさんと一緒に付いていった。

因みに部屋割りだが、4人部屋の一室には俺とクルス、ランディーさんとラルフさんだ。

3人部屋の一室にはセリカとミレイユに何故かジーナさんが泊まり、もう一室にはウルミナさんとルエミさんにエレーナとなった。

ジーナさんはセリカやミレイユともっとお話をしてみたいと随分シンプルなモノであり、ウルミナさんとルエミさんはエレーナと近況報告し合いたいとの事だ。

それからセリカ達と合流して、ギルドに向かった。


「ヴァラガンさん、何する気なんだろう……?」

「人となりは分かってきたつもりですけど、何か緊張しますね……」

「もしかしたら、色々と揉まれるとか?」

「揉まれるって、身体をでしょうか?」

「いや、多分別の意味……」

「トーマ達が思っているような事じゃないさ!行けば分かるし、万が一はアタシらが助けてあげるから安心しな!」


ギルドに向かう道中の【トラストフォース】組が少しの不安を抱いているのに対し、ジーナさんは陽気に諭してくれた。

そしてギルドに入り併設された飲食スペースに足を踏み入れると……。


「「「「「……」」」」」

(何だ?この空気感……?)


【アンビシャノブアレス】の冒険者達が一斉に俺達へと視線を向けている。


この後、俺達は味わうのだった。

武闘派の実力者主義が強いギルド特有の洗礼を……。


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