第92話 出発の時!
出発の時間です!
ギルドマスターであるカルヴァリオさんのお願いでベトカルブと言う街に赴いて欲しいと言うクエストを受ける流れになった。
Aランクパーティーの【ノーブルウィング】と顔合わせと打ち合わせを終えた俺達は準備を済ませてその日を迎える。
ティリルの馬車ターミナル―――
「すみません!お待たせしました!」
「うぅん、待ってないわよ!」
「アタシらも数分前に来たばかりだからね!」
「今から我々が乗る馬車に連れていきますよ」
【ノーブルウィング】のリーダー格であるウルミナさんを先頭にその場所まで案内してもらう事になった。
「ウ、ウルミナさん。これって……」
「えぇ。ベカトルブに向かう冒険者向けの特急馬車よ!」
((((デカー!))))
俺達の前にあるのは、10数人くらいは乗れるだろうサイズの四角い母屋タイプが付いた馬車だが、本当に驚くべきなのは2頭の馬の方だ。
クエストへ赴く際にいつも利用する馬車だが、荷台を引く馬が従来の3倍近くもあり、焦げ茶色の体毛から覗く猛獣に近い目付きもあって屈強さすら感じさせる。
「これ、レア度Bの“メガロホース”ですよね?」
「そうよ……」
エレーナが確認すると、ウルミナさんが答えた。
“メガロホース”は馬系のモンスターの中でも体格がガッシリとしていながらも、その四本の脚による踏み込む力は凄まじいモノがあるとの事だ。
「では、これでお願いしますね……」
「あぁ……。ただ、もしもの時は……」
「はい、お任せください……。では、行きましょう!」
ウルミナさんが運賃とサインをした契約書を運転手に渡しており、すぐに乗り込む事になった。
ん……?もしもの時は……?
引っかかるような何かを感じながら、俺達は馬車に乗り込んだ。
一時間後——————
「ウオオー!早いーー!」
「それでいてあまり揺れていない!」
「凄い!ティリルがほとんど見えなくなったよ!」
「“メガロホース”の馬車。どうですか?」
「いつもの馬車が鈍間に思えそう!」
エレーナが言っていた通り、本当に早かった。
普段から使っている馬車は地形にもよりけりだが、一時間経ってもティリルを目に捉えられるくらいの進行距離なのに、今はあっと言う間に草原が目の前に広がっている。
客室の中にいても揺れているのは分かるが、その程度が小さいから、乗り心地も悪くない感じだ。
「特急馬車を楽しめているようで良かったわ!」
「アタシらも時間を要すると判断している時にはこれを使っているからね~」
「時は金なり。資金に余力があり、実力に自信があれば使ってみるといい……」
ウルミナさん、ジーナさん、ランディーさんも凄さを理解してもらえて嬉しそうだ。
そう言えば乗り込む時にウルミナさんが行者から「もしもの時は……」と言われていたし、さっきのランディーさんの「実力に自信があれば」と言っているけど、どういう意味だ?
数時間走って慣れた頃、気付けば夕暮れになっており、茂みの深い森の中にいる。
もう一日ほどかかるとの話なので、森を抜ければ町があり、途中のチェックポイント付近にある宿で泊まる事になった。
できる事ならば暗くなる前に駆け抜けて欲しいものだ。
そう思っている時だった……。
「すみません!減速します!」
「!?」
不意に手綱を握っている行者が声を張り上げると共に二体の“メガロホース”を減速させるようにコントロールすると、馬車は数秒で止まった。
「な、何だ?」
「前方に“ギガヴォルグ”二体を確認!直ちに駆除をお願いします!」
「“ギガヴォルグ”?レア度Bのモンスター二体がアタシらの通路にお邪魔かい?」
「戦闘準備!」
「ウルミナさん?これって……」
「えぇ……。高速馬車あるあるね……」
(この世界でもあるあるってあんのかよ!?)
何事かと思うと、行者が叫び声を上げ、モンスターの遭遇を報告し、ジーナさんとランディーさんが嬉々として迎撃態勢を整えていく。
「僕達も出向きます!」
「こんな森で立ち往生していたら危険ですので!」
「相手はレア度Bの“ギガヴォルグ”二体よ!ここは私達に……」
クルスとミレイユが討伐に動こうとするも、ルエミさんが制しようとする中……。
「いいわね……。じゃあ、【トラストフォース】5名、出陣よ!」
「ウルミナ!」
「私がお目付け役として付いていくから大丈夫よ!それに……」
何とウルミナさんは俺達の出動を許可したのだった。
これにはルエミさんが焦るも、ウルミナさんがそれを制する。
「彼らの連携を見るチャンスだし、これくらいを圧勝にしても辛勝にしても、できないようじゃダンジョン攻略では必ず足を引っ張るわ。万が一の時の責任は私が持つから……。ランディー!私と来て!」
「ハイ!」
「ウルミナ……」
ウルミナさんはルエミさんを諭し、俺達【トラストフォース】とランディーさんを連れて討伐に打って出る。
一分ほど走ると……。
「「グルルルルル……」」
「デ、デカイ……」
「“メガヴォルグ”の倍くらいはあるわね……」
「“ギガヴォルグ”はレア度Cの“メガヴォルグ”の上位種であるレア度Bのモンスターであり、二体ならばBランクの冒険者パーティーの対応が推奨となる。君達の実力を見定める良い機会と思って見ているから、思い切りやってくれ……」
“メガヴォルグ”以上の迫力を見せる“ギガヴォルグ”にクルスとミレイユはドン引きしつつも、ランディーさんは淡々と説明している。
「いざとなれば俺やウルミナさんが助けてやる」とランディーさんは言っていたが……。
「よし!行くぞ」
「「「「ハイ!」」」」
「「ウォオオオオオオーーーン!」」
悠然と構える“ギガヴォルグ”二体は俺達を見据えていた。
そこへ……。
「【支援魔法LV.1】『アームズ&アクセレート』」
「セリカ!クルス!」
「「分かってます!」」
エレーナは【支援魔法LV.1】の『アームズ&アクセレート』を俺とセリカ、ミレイユとクルスにかけていた。
ミレイユはエレーナを守るようにその前へ立ち、俺とセリカ、クルスは二体の“ギガヴォルグ”に向かっていく。
するとクルスが着火させておいた炸裂弾数個を二体の“ギガヴォルグ”の眼前へと勢いよく撒き散らすと……。
ドォオオオン!
「「グモォオオオ?」」
爆発と破裂音、そして煙が“ギガヴォルグ”達を包んでいく。
俺達は斬りかかろうとするも……。
「ガアオォ!」
「フン!」
「グゴォオ!」
「「ハァア!」」
二体の“ギガヴォルグ“は乱雑に前脚を振り回したが、野生の勘とでも言うべきか、偶然にも俺達に当たりそうな爪を振るっていた。
俺はダッキング、セリカとクルスはバックステップやサイドステップで躱すが、数メートル先の木々まで斬り裂いていた事から、その威力の高さを肌身で感じた。
そして俺の額からは目にかかってこそいないが、掠ったために傷を受けて流血していた。
「こりゃ強いな……」
「“メガヴォルグ”と似たようなやり方ですけど、パワーが何段階も上だ……」
「同感だな……」
俺達は少し離れたところで、“ギガヴォルグ”の強さを肌身に感じ、無闇に攻め込めば確実に命を落としかねない相手であるのを悟った。
「確かに強いけどな……」
噛み付きや硬い尻尾を振るう攻撃まで混ぜてくる“ギガヴォルグ”のおっかなさを感じながらも、闘志を失う事無く動き回る。
(“ミスリルメガリザード”とやり合った時ほど絶望的じゃないかもな……)
「よし!もう一度行くぞ!」
(【ソードオブシンクロ】!)
俺は自分が持つユニークスキルである【ソードオブシンクロ】を発動し、セリカ達のパワーアップとテレパシー機能を共有した。
<俺が突っ込む!心配すんな!>
<分かりました!クルス!>
<分かっている!ミレイユ!セリカ!>
<こっちはいつでも魔法を撃てる準備を整えているわ!>
<私も大丈夫!>
「「グォオオオオ!」」
俺は二体の“ギガヴォルグ”へと突っ込んでいく。
しかし、ただの特攻ではない。
「ソラッ!」
「「ガァアアア!?」」
俺は二体の“ギガヴォルグ”へある物を投げ付けた。
クルスの進言で手に入れておいた煙幕だ。
“ギガヴォルグ”は視界が定かでないものの、狼狽してしまう事なく、匂いで場所を掴もうとしていた時だった。
「フン!」
「ハァア!」
ザシュッ!ザシュッ!
「「ガァアアア!?」」
(よし!)
“ギガヴォルグ”の二体は顔を上げながら叫び声を出し、その顔は威嚇や風格を出すためのモノとは程遠い、強い痛みを感じたような様相だった。
それもそのはず、俺とクルスが一体は右前脚、もう一体は左後脚を一本ずつ見事に切断しており、どちらも声を上げながら態勢を完全崩していた。
特にクルスは【気配遮断LV.3】を混ぜたのもあって、モンスター相手ならば完璧な不意討ちであり、二振りのロングナイフによって、脚の根元付近まで斬り裂いていた。
そして間髪入れず……。
「【氷魔法LV.2】『アイスジャベリン』!」
「【風魔法LV.2】『デルタウインドスパイラル』!」
「「グボォオオ!?」」
ミレイユとセリカよる【氷魔法】や【風魔法】で固められた槍のように鋭く圧縮された一発がそれぞれの“ギガヴォルグ”の胸辺りに深く突き刺さった。
そして……。
「【剣戟LV.2】『地雷斬』!」
「【剣戟LV.1】『隠座双突』!」
「「ギョァアアアアーーー」」
俺とクルスによる斬撃で二体の“ギガヴォルグ”の首筋や胸に強烈な斬撃を浴びせると、魔石を出しながら、その身体は光の粒子となって消えていった。
「皆、大丈夫か……?」
「私は平気です!」
「30秒も使っていなかったので、まだまだ動けますよ」
「僕もほんの少し疲れましたけど、問題ないです!」
「「……」」
30秒行ったかどうか分からない時間で済み、セリカ達は疲労感を感じているものの、一人で問題なく動けるくらいの負担で済んでいた。
闇ギルドの件から、基礎的な体力の向上をしていく鍛錬はしてきたからな。
セリカとクルスはともかく、近接専門ではないミレイユも必死でやっていたから、その地力がここで活きてきたのが分かった。
ウルミナさんとランディーさんはずっと何かを感じたような様子をしていたが……。
パンパンパンパンパン……。
「「「「「!?」」」」」
拍手をしているような音に向かって視線をやると、笑顔のウルミナさんがいる……。
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