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僕たちの学校です  作者: 笠原ヤナ
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序章 Curiosity killed the cat

液体の滴る音。先も見えない暗い通路。

先程から薬品と誰のともわからない血の匂いが混ざりなんとも言えない臭いが鼻にこびりついて離れない。

「どうしてこんなことに…」

高校に入って2ヶ月、数少ない友人の一人と肝試しと称して学校の立ち入り禁止の地下に入ったばかりにこんなことになるとは。あの悍ましい場所はなんなのだ、友人に何があったのだ…。

その考えが答えに至ることはない。しかし考え続けなければ意識が持っていかれてしまいそうだ。

足を引きづり歩き続ける。この先がどこに繋がっているかなんて知らない。

したが、さっきまでの場所よりは遥かにマシだろう。

自分が人より優れているのはわかっていた。今まで人より多くを知っていたし困ることもなかった。だからこそ国内有数の私立高校に

Curiosity killed the cat―

好奇心は猫を殺すとはよく言ったものだ。飯がまずい割に口はうまいのだから、あの国は。

まさに僕はそうなるのだろう。好奇心によって何も分からずに死んでいく愚かな猫ように…。

 ____


「今から肝試し行かねー?」

まだ騒がしい教室内で読んでいた小説から声の主に視線を移す。

茶色に染めた髪、ぎこちない着崩し方の制服、開けたばかりであろうピアスの穴、典型的な高校生デビューと言うやつだろう。

「どうした圭司、まだ4時過ぎたばかりだぞ。肝試しには早すぎるだろ。それとも、こんな時間でも俺はビビれるって自慢か?」

「違ーよ!!地下に行くんだよ!」

「地下?この学校そんなところあったのか。」

広い校内、自分が知らない部屋があるのは分かるがそんな所あっただろうか?

「昨日見つけたんだよ!」

「なんか使ってないのにずっと残ってる焼却炉があるってきいて見に行ったんだ!」

興奮した様子で圭司が語る。

「そしたら、あそこいつもは錠前かかってるらしいんだけどでも、昨日は空いてたんだよ!!で、中を見てみたら階段があったってわけ!」

「いつもかかってるなら今日もかかってるだろ。昨日が特別だっただけで。」

「あ。」

こいつは馬鹿なのだろうか。

なんでこれでこの有名私立に来れたのかは不思議なところだが…、こいつのキャラには入学したてでは助けられているのだから文句は言えない。

「ま…まあ、今日も空いてるかもしれないだろ!」

「そこまで言うなら行くだけ行くか…。」

席から立ち上がりながら告げると圭司はウキウキしながら自分のカバンを漁っている。

「先行くぞ」

先に教室から出ると圭司が追ってきた。

「ちょっと暗い待ってくれてもいいのに…。」

「それ何持ってんだ?」

圭司はその懐に何かを抱えている用に見える。

「これか?これな…。じゃーーん!!」

そう言って出したのは大きな懐中電灯だった。

「もったいぶった割に普通の物だな。」

「違うんだなーこれが。」

「なんと10000ルーメンでどっかの軍でも使われてるんだって!!」

「そういうの好きだよなー、お前。」

そんなことを話していると焼却炉前についた。

「ここか。鍵ないな。」

「ほらやっぱり!」

「調子いいな、お前。」

まさか本当に空いているとも思ってなかったが、こうなっては仕方ない。

焼却炉の中を見ると圭司が言っていたように階段がある。

奥は深く、先の様子は見えそうにない。

「中はかなり暗そうだな。」

「やっぱ、この懐中電灯持ってきて良かったな〜。」

普通のでもいい気がするが、まあ楽しそうだしいいか。

「行くか。」

「お…おう。」

圭司のやつここに来てびびってるのか?声が震えている。

降り始めて5分ほど経つだろうか、かなり深いのかやっと階段の終わりに着いた。辺りは湿気がひどいのかカビ臭い。

「や…やっと着いたのか?」

圭司は懐中電灯で周りを照らしながら背を丸め言う。

こいつ誘ってきた割にかなりびびってるな。

「でも、まだ先は長そうだぞ。」

先程から懐中電灯を向けるが廊下の先は見えない。

再びしばらく歩くが周りの景色は変わらない。どこまで続いているのだろう。そう思った矢先に広間に出る。

「道は、続いてなさそうだな。」

そう声をかけた瞬間、『ゴトッ』と鈍い音が広がる。

圭司が懐中電灯を落としたのだろう。先を照らす光が消える。

「おい、圭司。落とすなよ。周りが見えないだろ?」

呼びかける声に反応がない。

「おい?どこ行った?」

先に戻った?懐中電灯も持たずに?あんなにびびっていたのだそれは考えられない。

「おい!!!」

大きく呼びかけた瞬間、首筋にちくりとした痛みが走る。

「なんだよ、いるなら悪ふざけは…。」

おかしい、意識が遠のい…て…


「痛っ!」

再び痛みを感じて飛び起きる。

足が激しく痛む。なにかで叩かれたような鈍い痛みだ。

「何が起こったんだ。」

手探りで辺りを確認すると何か冷たいものに当たる。

圭司の落とした懐中電灯だ。

地下だからだろう金属の持ち手は冷え切っている。

「よかった、壊れてはなさそうだ。」

「おい、圭司!悪ふざけもいい加減に…!」

そう言いかけたところで言葉を失う、光の照らす先、その先の光景は理解し難いものであった。

「おい、圭司なんだよこれ。悪ふざけってレベルじゃないぞ!」

わかっている、これをやったのが圭司でないことくらい。

だって、あのビビリな友人は変わり果てた姿で目の前にあるのだから。

「は…?なんなんだよこれ…。」

気づいたら走り出していた。先程痛みを感じた足がズキズキとするが構ってられない。あそこにいたら自分がどうなるかなんてわかりきっている。

しばらく走るが一向に階段が見えない。来た時もこんなに長かっただろうか?

「くそ!」

次第に痛みで足が使い物にならなくなって来た。

しかし、引きづりながらでも進むしかない。

「どうしてこんなことに…」

理解できない。考えることに意味なんてない。しかし、考え続けなければ意識が持っていかれる。

こんなことになるのなら来るべきではなかった。

正直なところ来る前は少しワクワクしていた。

何か面白いものを見れるかもと。

来るべきではなかった。見るべきではなかった。

全てもう遅いのだが。

自分の意識が落ちていくのがわかる。思考も、足の痛みでさえ鈍くなって行く。

溶ける、落ちる、沈む。

こんなところで死ぬのか……。

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