私は死んだ
ヨッシーのショートshort「私は死んだ」
ギギッー、バン
私は死んだ。
交通事故だった。
交差点での出合頭、即死。
死ぬ覚悟を、する暇も無かった。
もう、目を開けることも出来ない、
もう、身体を動かすことも出来ない、
もう、指一つ動かせない…
妻が泣いている。
見たことのないぐらいの泣きっぷりだ。
普段、すれ違いの夫婦だったが、こんなに悲しんでくれるとは思わなかった。夫婦の絆は健在だったのか、
我ながら嬉しい…
しばらくすると、フワフワと身体が軽い。
気がつくと、宙に浮いている。
死ぬというのは、こんなものなのか、
風に吹かれたら飛んで行きそうだ。
透明、
物が掴めない、全てすり抜ける。
ここに居ながら、ここに居ない。
まだ、実感がない…
親戚が集まっている。
私の葬式の準備だ。
兄弟のいない私には、伯父伯母ぐらいしか親戚はいない。ましてや、子供もいない。
小さなお葬式、どこかで聞いたことがあるような。
滞りなく式が進む…
通夜が始まった。
私の写真が飾ってある。
ちょっと、首が曲がっているぞ、
もう少しカッコいい写真があったんじゃないのか?
しかも、だいぶ老けて見える。本物はもっといい男なのに、
妻に言う。
でも、聞こえない…
葬式、
お坊さんのお経が上がる。
斎場に線香の煙が漂う。
ああ、死んだんだ、
私は、本当に死んだんだ。
だんだん、そんな気持ちになってきた。
これからどうしよう、
どこに行ったらいいのだろう、
ふらふらと彷徨う。
一体、どうしたら…
火葬場に着いた。
妻が泣いている、棺にしがみついている、号泣している。
私も悲しい。でも、どうにもならない。
どうしようもない。
ウイーン、
私の棺が火葬炉の中に入っていく。
さようなら、私
さようなら、私の身体
私が私を見つめている…
ボッ、
火が着く。
熱い、
数時間後、
灰になった。
骨壷に入る。
ちょっとキツイな、蓋が閉まるだろうか、
もう少し、ダイエットすればよかった。
ギリギリだ、
どうする?
えい!
なんとか入った。
一安心…
お墓の中に入る。
暗い、
狭いな、
いつまで、ここに居るのだろう?
ずっと、ここに居るのだろうか?
天国は、何処なんだ?
解らない。
心配だ、
四十九日までか…




