時計のない世界
ヨッシーのショートshort「時計のない世界」
この世界には、時計がなかった。
人々は、各自おのおのそれぞれめいめい自分の時間で生活をする。
起きる時間もバラバラ、
寝る時間もバラバラ、
ましてや食事もバラバラだ。
こっちで朝ご飯を食べいる人がいれば、あっちで夕ご飯を食べている人がいる。
こっちで出勤する人がいれば、あっちで帰宅する人がいる。
午前中だったり、午後だったり、
朝だったり、夜だったり、
勝手気ままな自分時間。
あっちでバラバラ、
こっちでバラバラ、
この世界は皆、マイペース。
そんな世界だが、不思議と成り立っている。バラバラな生活は、バラバラとバラバラが組み合わさり、バババとラララになり、いつの間にかルルルになる。
まったく不思議な世界だ。
しかし、人々は満足していた。
この世界に満足していた。
自分だけの時間に、満足している…
ある日、科学者が時計を発明した。
「これは便利だ!」
人々は喜んだ。
瞬く間に、時計は社会に広まった。
正確な時間、
人々は毎日、規則正しい生活を過ごす。
正確な時間に起き、
正確な時間に朝ご飯を食べ、
正確な時間に出勤する。
電車も正確な時間に到着する。
会社
「この書類を10時30分までに作成して下さい」
必死に作成する。
間に合った。
「いや、30秒遅れたぞ。時間を守れよ!」
学校
「この問題を2時00分までに解くこと」
必死に解く。
間に合った。
「いや、12秒遅れたぞ。時間を守れよ!」
駅
「〇〇方面下り電車、到着しました〜」
「おい駅員、3秒遅れたぞ。時間を守れよ!」
時間厳守、正確な時間。規則正しい生活。
人々は、時間に追われ続けた…
疲れた
疲れた、
疲れた。
時間に正確に生きるのに、疲れた…
辞〜めた!
人々は、
また、時計のない生活に戻った。
各自おのおのそれぞれめいめい自分の感覚で生活をする。
好きな時間に起き、
好きな時間に朝食をとり、
好きな時間に仕事をする。
こっちで出勤する人がいれば、あっちで帰宅する人がいる。
朝だったり、夜だったり、
時計のない世界は、楽だ。
時計のない世界は、楽しい。
時計のない世界は……




