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妄想と刹那  作者: あまやま 想
第2章1
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第2章 1−1

 刹那は大学二年生になった。刹那にとって、郷土研究会は大切な居場所である。早いもので、大学に入学してから一年が経つ。郷研のメンバーもほぼ全員進級し、四年の日田が会長に、三年の笹丘が副会長になった。


 刹那は会計を任される事となった。まあ、会計と言っても大学の補助金だけで運営しているので、会費集めもなくて楽である。役員の三人を除けば、他のメンバーは定例会さえも誰も来ない状態である。月に一回ぐらい、同級生の田上たえが顔を出す程度か…。


 新歓の時期になったので細々と勧誘しているが、他のサークルのように大学通りにテントを出すようなことはしない。毎年、使い回しのポスターを新歓の掲示板に貼るだけである。不思議なもので、使い古しのポスターは実にいい味をだしている。


 どこのサークルも力作のポスターを大学通りの一番目立つ場所にある掲示板に貼るので、使い古しのポスターは明らかな異彩を放つ。多くの新入生が見向きもしない中、数名は引きつけられるように郷研の扉を叩く。刹那もそうだった。他のサークルの力作ポスターを見ていて、自らの生気を吸い取られるように感じられた。


 しかし、郷研のポスターを見て、なぜかとてもホッとしたのを今でも覚えている。会室もポスターと同じようにいい具合にくたびれていて、いるだけで癒される場所であった。


 それにしても、母が死ぬ間際に残した日記はおもったほどのインパクトはなかった。きっと、母は不器用な人だったのだろう。確かに当時三歳の娘を抱えていたとは言え、子どもがいたら仕事が見つからずに餓死に追い込まれるものなのか? 


 もし、仕事が見つからないなら、生活保護だって受けられただろうに…。不器用なくせにプライドだけは高かったようだ。もちろん、それだけが原因ではない。祖父も悪いのだ。


 母は一度、娘を連れて実家へ戻ったのに、こともあろうに祖父は母を追い返している。過去にもしもの話はないが、もしここで母が実家に戻る事ができていたら、母は今も生きていたと思う。そう思うと、ただ胸が痛かった…。

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