第1章 4-3
今回はブラックアルバイトについての訴訟である。最近は長引く不況の影響で、学生への仕送りもろくに出せない家庭も多い。生活費や学費でさえも学生自らが稼がないと、学業すらままならないのだ。
諸外国と異なり、日本の奨学金はごく一部を除いて返還義務があるものが主流だ。その多くは利子をつけて返さないといけない。日本学生支援機構は独立行政法人でありながら、やっている事は銀行の学資ローンとほとんど変わらないのだ。
できることなら借金したくないので、仕送りとバイト代でどうにかしようと思うのは当然である。しかし、その弱みに付け込んで、右も左も分からない学生を安い賃金でこき使う企業が後を絶たない。学生にとって主は学業であり、バイトは副業に過ぎない。
それなのに、企業は学生の言い分を無視して、企業にとって都合のいいシフトを組んで、大学の講義や試験を受けさせない事例が頻発している。その結果、そのような学生は留年したあげくに大学中退を余儀なくされる。これは社会にとって大きな損失だ。企業の目先の利益のために、優秀な人材の教育を受ける権利を奪う事は許されない。そこでこの訴訟では
「学業に支障が出るほど、学生を無理に働かせる企業に対して罰則を設ける」
「国に対して、返還不要の奨学金の拡充」
を求める事の二本柱で話を進めているところである。
それにしても、この国は老人に対しては多額のお金を使うのに、子どもに対しては驚くほどお金を使わない。こんな状態では少子化が加速する事はあっても、少子化を食い止める事は不可能である。子どもや若者に無理をさせて、その上で老人がおいしい思いをする構図を改めない限り、日本人はどんどん減り続けるだろう。
あと千年もすれば、この世界から日本人がいなくなって、日本と言う国もなくなると言う統計も嘘と思えないから本当に末恐ろしい。
それなのに、このことに危機感を持つ人が恐ろしいほど少ないのだ。楽観的にも程があるだろう…。それとも、何をやっても無駄だと諦めて、ただ退廃的に生きているだけなのかもしれない。