第1章 3-4
『まだ、日記が見つからんとって…。父さんはどこに隠したんやろうね…』
「別に出てこんでもいいけん。どんな内容なのか教えてよ。私にとっては母さんとのたった一つのつながりなんよ! 何でもいいけん教えて…。もう、どんなことが書いてあるのか、気になって妄想がすごい事になっとる」
『何が知りたいとか?』
「そうね…。おじいちゃんが見せたくないのは、おじいちゃんにとって都合の悪い事が書いてあるから? それとも他に何か理由があるの?」
またしても、祖母が黙り込む。もし、違うならすぐに否定するはずだ。否定できないと言う事は…。
「いや、言えないなら、別にいいや…。お母さんは日記の中で、私の幸せを願っとると?」
『もちろんよ。瀬奈は刹那の幸せをずっと願っとったよ。時には子育てで悩んだり、過程の事でうまくいかなかったりしたことも書いてあるけどね…』
祖母の言葉を、そのまま受け入れることはできなかった。言葉通りなら、祖父の行動は無意味である。そうでないから、祖父は刹那に日記を見せないのだ。
『父さんと話して、一部でも見せてあげられないかどうか相談してみる。これでよかね? 刹那』
「分かった。ありがとう」
とりあえず、少しだけでも母の日記の事がつかめたから、今日のところはよしとしよう。