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第6話:神の器

星壊災害。


 最古の記録によると15世紀から存在するものである。同時期に観測され始めた、星壊エネルギー共に突如として地球上に現れた。

 黒い靄と共に星壊の獣せいかいのけものと呼ばれる異形を生み出し、街ごと人々を蹂躙する様は悪夢としか言えないものである。




 そんな突如として混乱に陥った世界で、災害に対抗しうる不思議な力、「アーク」を持つ人々が現れ、被害を受けた各地でこう言った。 


「我々は、この時のために厳しい訓練を重ねてきた。家に伝わる伝承を元に、鍛えてきたこの力で世界を救うのだ!」


 そう言い、当時滅びかけた人類を救ったマグナ家、アルティス家、リヴェル家。

 彼らは後に天の御三家と呼ばれることとなる。 




 世界を救った彼らが中心となり創られたのが創天協会そうてんきょうかいである。

 現在でもリヴェル家を除いた御三家出身を人間が多く在籍している。昔は協会内で御三家の家名は特別扱いされていたそうではあるが、今では少しだけ周りから名前を覚えられやすくなる程度である。




 現代の近づくにつれ災害の規模、頻度が拡大していく一方、アークを持つ者も増えた来た。

 アークを発現する多くが13~20歳であり、彼らをただ世界を守る戦士にするだけでなく、年相応の活動をしてもらいたいという願いから誕生したのが、世界を救う英雄を育てる学園「学園アルゴ」である。



 そんな学園アルゴの理事長室で、自身で淹れた珈琲の香りを嗅ぎ、幸せに浸る男が一人。

 無駄な肉がついていない細身の身体。

 美しく腰まで伸びた珈琲の色とよく似た髪。 

 髪と対称的に、全身を白のスーツで着飾った男、創天協会の会長であり学園アルゴの理事長、カリーナは朝の時間お学園内で過ごしていた。


 ジリリリリッ!ジリリリリッ!


 珈琲を置いている立派な机から、低い音のベルが鳴る。

 彼がベルの付いている装置を止めると、装置から声が発せられた。


『報告します。まもなく学園長と例の者と共に帰還いたします。』


「了解。君もお疲れ様。」


 声の主から返事はなく無線は短いやり取りのみで途絶えた。

 しかし、彼にとって会話の短さは関係なく、その事実のみが何より大切であった  



 部屋の窓から外を眺め不敵に笑みを零す。


「おかえり、ミルネ。そして。」


 男は窓から離れ机に置いていた珈琲を手に取る。


「ようこそ、神の器。君はこの学園で何を視る?」



 ―――――――――― 


 純白の部屋にて二人が向き合う。

 モノクロームな制服兼戦闘用の衣服を身に纏う二人の吐く息のみが部屋に漂う。


 眼を塞いでいた青年がゆっくりとその瞼を上げ、黒い瞳が顔を見せる。

 その様子を見た正面に仁王立ちする女性が衣服の胸にあるいくつかのポケットの中から一つ開け、コインを取り出す。

 コインを指に備え青年のいる方へ向けた。


 そして。






 ピンッ!






 女性の指から勢いよくコインが弾き出される。

 弾き出されたコインは美しいスピンで風を切りながら宙を舞う。時間としては一瞬の行為、出来事ではあるが、純白の部屋と無言の二人が放つ雰囲気が空間の進行を引き延ばしていた。


 






  チリンっ  





 



 コインが落ちる。 




 落ちた音が聞こえると同時に青年が動く。


「ハァァッ!!」


 黒髪の青年、イ・リューネは地を蹴りだし、その右手に握られた短剣を、目前に迫る、長く伸びた紺色の髪が魅力的な女性へと勢いをつけ振り下ろした。


 女性は、その短剣を眺めるかのように視て、少し笑みを零す。そして自身の背丈ほどある大剣で受け止める。


「いい、鋭さだったわ・・・ねッ!!」


 女性は受け止めた短剣ごと青年を大剣で薙ぎ払い、二人だけしかいない純白の部屋の壁際まで吹っ飛ばした。 


 吹っ飛ばされた青年を光の翼が覆う。リューネは咄嗟にアークを展開させ、身を護ろうとする。

                  

 そして声を発する余裕すらなく、歯を食いしばり受け身を取った。髪が乱れ目元が隠れる。後ろまで迫った壁の位置を左腕を使って確認する。


 同時にすぐさま右手で、腰に備えられたリボルバー型の銃を取りだした。

 展開したアークから弾倉へエネルギーを送り弾丸を生成する。

 光の弾丸で満ち、輝きが漏れ出すリボルバーの銃口を大剣を構える女性に向け、躊躇うことなく発砲した。


 1発。


 2発。


 3発。


 4発。


 と、重厚な音と共に放たれた4発の光弾を追うかのように、リューネは壁を蹴り、光る翼を軌跡に変え、再び彼女の元へ駆けだした。




 迫る光弾に対し、女性は大剣を地に突き刺して盾にする。


 その隙に後ろへ回ったリューネはリボルバーから持ち替えた短剣で再び切りかかろうと両手で振りかぶった。



 背丈ほどの大剣。それを盾に使ったのだ。リューネが駆け出す瞬間は目視できるが姿は追えない。死角からの攻撃である。




 しかし、女性は地に刺した大剣から手を放し、予期していたいたかのように振り返る。

 美しく長い紺色の髪が大きく揺れ、インナーカラーで入っている白色が顔を覗かせる。

 振り返るその勢いで、拳を短剣を振りかぶった状態のリューネの顔を目掛け繰り出した。


 短剣より先に繰り出された拳。防御などできない体勢。

 その拳がリューネの顔に当たるのは必然であったが。



 乱れ、目元を覆っていた髪の隙間から透き通る蒼の瞳が覗かせる。

 全てを見通しているかのような吸い込まれる蒼の瞳が、女性の動きを、拳を、捉えていた。

 拳が当たる寸前、身体を捻って回避する。拳が頬の横を抜け、リューネの黒い髪が靡く。


 攻撃を外した二人は、一度距離を置く。


「私の視界を防ぎにきた瞬間に、ある程度予測できていたけど・・・やっぱり、いい眼を持ってるわね。リューネ。」


 女性がお褒めの言葉をリューネにかけるが当人は不満そうであった。


「・・・・・アトラ隊長、あなたアーク使ってないじゃないですか。」


 リューネの言葉通り、途中からアークを使っていたリューネと違い、アトラ隊長と呼ばれた女性は初めから一切アーク使っていなかった。


 戦士としての圧倒的な力の差が、二人の間にあることは間違いなかった。


「そりゃ幾らあなたが少し戦闘の経験があるからって、一カ月前にアークを手にした程度の人に、20年近く戦士として戦ってきた私が負けるはずないでしょ?経験の差ってものよ。」


 そういい、アトラは手首のデバイス確認する。

 何を見たのかリューネは分からなかったが、アトラが少し笑みを零したのを確認した。

 そして、そのままデバイス操作し、地下室のデジタル空間を解除する。


「リューネ!対人訓練は終わりにするわ!あなたの仲間が今からくるから、迎える準備をするわよ!地下室の後片づけよろしくね!」


 そういい残し彼女は部屋を後にする。


「はぁ、俺、何も言って無いんだけど。」


 リューネは不満の声を漏らしながらも作業を始めるのであった。

初投稿作品です。

マイペースにやって行こうと思います。

面白ければブックマーク、評価をよろしくお願いします。


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