ある少女の話
少女はきっと悪くなかった。
周囲が悪かった。彼女に期待しすぎたのだ。
彼女はただの少女であったのに。
特別な力を得たのはいつだったか。とにかくまあ、彼女は神に選ばれた。
特別と言っても、神の声を聞き、他には見えぬ精霊が見え、奇跡の力をわずかばかり授かっただけである。
奇跡だって、小雨を降らすか、少し育ちが良い植物が育つか、致命傷を普通の怪我に治すと言う程度だった。
いつからだったか、
「もう少しどうにかならないのか」
誰かがそう欲を吐いた。
雨をもう少し長く、植物を実りまで育てろ、怪我は傷痕が消えるまで治せ。
人々は口々のそう言った。
少女は努力した。本を読み漁り、神に祈ったり、精霊に尋ねたりした。
誰かは言った。
「もう少しどうにかならないか」と。
天候を好きにできるように、都合の良い植物を生み出せ、若返り、死に帰りできるようになれ、と。
少女は本を読んだ。そんな知識はどこにも無かった。
少女は精霊に尋ねた。
「そんなことできるわけないよ」
少女は神に祈った。
「 」
神は何も応えなかった。
出来ないと知った周囲は怒った。口々に少女を罵った。
「嘘つき」
「出来損ない」
「なんでお前はそんなに偉そうなんだ」
少女はできるなんて一言も言わなかった。
少女はただ奇跡を授かっただけで、己の力ではなかった。
少女は偉くなりたいと一言も言わなかった。
周囲がただ持ち上げただけだった。
少女は嘆いた。
「何故人々はこうも罪深いのでしょう」と。
「人々を惑わすのであれば、このような力は要りません」
神は応えた。
力を失った少女を、周囲は初めに嘆いた。
「何故力を失ったのだ」と。
次に怒った。
「何故力を失ったのだ」と。
最後に、罵った。
「何故力を失ったのだ」と。
「これ以上あなたたちが罪を重ねないためです」
少女は目を伏せてそう言った。
「いいや、お前が罪人だ」
誰かがそう言い、皆がそれに同調した。
そうして少女はその国から消された。