ある世界の話
昔々、世界は穢れで満ち、貧困に喘いでいた。
穢れから生じる瘴気の毒で土地は痩せ、瘴気から生じる化物が人々を襲った。
それを憐れんだ神は、特別な力を持つ者たち「特異者」を誕生させた。
ある者は勇者と呼ばれ、人から逸脱した力で化物を屠り人々を護った。
ある者は聖人と呼ばれ、癒しの力で毒に苦しむ土地や人々を救った。
特異者達のおかげで、人々は穢れの毒も化物も、恐れずに暮らせるようになった。
土地も徐々に豊かになり、人々の暮らしにも余裕ができた。
あるとき誰かが気づいた。
特異者が土地を癒したとて、作物が育ち難い土地があることを。
そして特異者のうち一人が死んだ。神が生み出してから何十年も経ち、年老いていたからだ。
特異者は永遠には居ないことに、気づいた。
結婚し、子を産んだ特異者がいた。特異者の子には、僅かばかりだが特異者の力が受け継がれていた。
人々は豊かになった。他の豊かさを羨み、諍いを起こすまでに。
土地をもっと豊かにするために、肥沃な土地を奪うために、簒奪者から土地を守るために。
特異者を求め、血を欲しがった。そうして特異者狩りが起きた。その結果どうなったか。
穢れが増え、瘴気の毒が濃く強くなり、そこから生じる化物も比例するように強くなった。
特異者は瘴気や化物の対応に駆り出された。だが、元々特異者は少なかった。その上特異者達は老いていた。
次々と特異者は死に行き、皆いなくなった。
残ったのは、特異者の力を受け継ぐ者。しかし彼らは、特異者の半分も能力を持たなかった。
だから世界は再び、貧困に回帰した。




