そうか、俺が
《世界が闇に覆われしとき、勇者なる者が魔の者を滅ぼす光と共に現れるであろう》
「そんな御伽噺を信じている奴がいるのかよ」
勇者とかいう魔のものたちを滅ぼす力を持った奴が本当にいたなら、今頃世界の空は青いままだったろう。
西の方から空が黒くなっていくのが見えた。
魔獣たちの出す魔力で染まってきているからだ。
「もうここまで魔獣がきたのか?!」
俺は頑丈な蔵へ逃げ込んだ。
そういえば、と思い出す。蔵の中に古びた剣があったはずだ。
幼い頃に蔵へ迷い込んだ時に見た。
それは黒く錆び付いていて、その上デカいし長い。
どんな力自慢でも振り回すどころか持つことすらままならないと言われていた剣だった。
「無いよりはマシか」
とそれを手に取る。手に取った剣は、成長して体が大きくなった今の俺にとっても相変わらずデカくて長いままだったが、
「……みんなが言うほど重くないな」
もう、そのみんなも居なくなってしまったが。
そこへ蔵の壁をぶち破り現れた魔獣が、頑丈な顎で俺の腹から下を奪っていった。
その拍子に剣が鞘から抜けた。
輝く刀身から魔獣を消しとばす光を放ち、襲い来る魔獣共を次々と薙ぎ払っていく。
大量に血を失い霞んでいく目でそれを見ていた。
「そうか、俺が勇者だったのか」
"そうか俺が勇者だったのか"を最後に言わせる為に書いてと言われたものです。ちゃんと書いたぞ。




