クラスのアイドル 【月夜譚No.201】
クラスのアイドル的存在は、彼女を置いて他にはいない。
正直に言えば、顔立ちは標準的、スタイルはまあまあで、見た目だけで判断するならば、それほど目立った美人というわけではない。
しかし、その天真爛漫な性格と誰にでも分け隔てなく接するコミュニケーション能力の高さは、ともすれば埋没するであろう特性を補って尚余りあるのである。
クラスの中心で明るく輝く彼女は、男女問わずに人を惹きつける力があった。
斯くいう俺も、彼女のファンの一人である。自然発生的に生まれたファンクラブにひっそりと籍を置き、日々彼女の眩しい姿を見遣っては至福の溜め息を吐く。
決して気持ち悪いファンではない……と、思う。傍から見ればどう映っているのかは判らないが、疚しい気持ちは一つもないと断言できる。
こっそりと陰ながら彼女を応援できればそれで良い。同じクラスで彼女の姿を見られたらそれで良いのだ。
――だが、二年に上がった春。クラス発表の掲示板を見上げた俺は、そのまま地面に崩れ落ちたのだった。