[短編]時計台前広場の屋台で食べたティーボーンステーキの思い出
『[短編]サイコロステーキよりティーボーンステーキとイルミネーションの思い出』(https://ncode.syosetu.com/n5378hi/)
『[短編]雪だるまハンバーグとティーボーンステーキ』(https://ncode.syosetu.com/n0674hj/)
の続編。3話目。
《あらすじ》
『やっぱり、元カレの方が好きぃ〜』と叫び、ヤケ食いにステーキ店へ行ったら、元カレと遭遇。
溶岩プレートでティーボーンステーキを堪能した。
偶然ステーキ店で再会した元カレの安則と一緒に食べて、美味しいな、と思ってしまった。
雪だるまハンバーグは安則が食べてくれた。
ご飯は残さない。それは当たり前だけど、当たり前じゃなかったりするから。
あたしは。
「…それじゃ」
「…ご馳走様でした」
そのまま時計台前で別れた。
安則は夏過ぎから急に忙しくなって、気がついたら転職していた。
あたしは何も知らなかった。
「何で黙ってたの?」
「うまくいくか分からなかったから。いいじゃん。無事に転職出来たし、給料上がったし」
「そういうこと言ってんじゃないの」
秋に燻り続けた煙が冬になって発火した。
「別に欲しいなんて言ってないじゃない!」
「今まで1回も贈ってないんだからいいだろう!」
「新しい仕事に忙しくて会えないからって、物で釣ろうとしてるなんて、サイテー!」
「可愛くない!」
そこからは売り言葉に買い言葉。
気がつけば別れると宣言して、安則の家にある荷物も全部抱えて、外に出ていた。
「…なんで連れ戻しに来ないのよ」
ぐすぐすと泣きながら、ゆっくりと銀杏の落ち葉を踏んで、街灯の下を帰った。
そのまま本当に何の音沙汰も無かった。
それなのに、『フラれたストレスでヤケ食いだ』だなんて。
「なんなのよ、一体…!」
あたしは時計台が見えなくなった距離から、急いで走って戻った。
カツカツとヒール音を鳴らしながら走ると、まだ時計台の前に安則の姿があった。
背中を向けて、空を見ている。
街灯の灯りに照らされた顔にあたしは持っていたハンドバッグを投げつけた。
「痛えっ!」
「うるさい!なんでまだいるのよ!」
はあっはあっと息が切れて、それ以上の言葉は出てこなかった。
あたしは仁王立ちのまま、息を乱して安則を見つめた。
安則はあたしの息が落ち着くまで待って、そして。
「桑名琴乃、俺ともう一度やり直して欲しい」
真剣な顔で、あたしに言った。
時計台前広場で、ティーボーンステーキを売る屋台があった時、何度も買いに行って、何度も顔を合わせたのは、今目の前にいる安則だった。
肉とビールが好き。
ただそれだけの共通点から始まった付き合いだった。
それなのに。
「今は、別の人と付き合っている」
あたしが泣きそうな顔で言えば、
「なら、別れてくれ。待っているから」
一度も見たことのない真剣な顔で言うから。
「ずっと待ってるから」
あたしは何も返す言葉が出なくて。
ぼろぼろと涙だけがこぼれた。
続きは来週24日18時!
クリスマスイブだ。さあどうしよう。
ノープランです。
感想によって結末が決まります。
*リア充滅殺団の爆破オチは、お控えください。