それは望んだ良縁か
「殿下は…」
躊躇いがちに、しかし告げなければならないという意志をみせて彼女はその言葉を口にした。
「殿下はファリナ様と、ファリナ伯爵令嬢とご結婚されるのですか?」
目の前の彼女、ミランダ公爵令嬢と比べなくても、ファリナの後ろ盾や立場は弱い。
本来ならば婚約者として名前が上がるはずがない令嬢。
「相応しくないからね」
だから、と続ける言葉ないが、きっと察するだろう。
ミランダ嬢はその続きを促す様子もなく、そっと頷いた。
「君は、望むかい?」
花が咲くように微笑む。
裏に隠そうとした、勝利の笑みは透けて見えていた。
ファリナと過ごす時間は少しずつ減り、ミランダ嬢との時間は少しずつ増えていく。
ミランダ嬢は『友人』を使って、ファリナに言葉の毒を浴びせているらしい。
ファリナには申し訳ないとは思う、彼女はそれを甘んじて受けているから。
ファリナが私の婚約者に相応しくない、見直すべきと言う声が大きくなっていく。
やがて陛下はそれに頷いた。
ミランダ嬢を次の婚約者に据えるため、彼らは相当根回しをしていたようだ。
「殿下、ミランダを、娘をよろしくお願いいたします」
「ああ、もちろんだ。こちらこそよろしく頼むよ」
王印のある書類にサインを済ませる。
これでミランダ嬢、いやミランダと私は婚約者になったのだ。
「私は魔力なしではあるが必要な教育は受けている。王家を支え、公爵家を盛り上げていくことを約束しよう」
間抜けが当主がロクに読まずにサインした書類。
私が婿入りすると隠しもせずに書かれいる。
うめき声をあげ、思わず破かれた書類。
陛下の前で、やらかした当主。
「不敬だな」
当主は震え許しを乞うても、遅い。
いつも通りのささやかなお茶会、でももうすぐ終わるだろう。
そうだ、聞きたかったことがあったんだと彼女に話しかけた。
「君は婚約解消後、どうするか決まったのかい?」
カップを持った彼女はパチパチと瞬きし、不思議そうに聞き返してきた。
「聞いてませんか?」
はっきりとは聞いてないと返す。
「候補者を数人挙げられています。
私と結婚すれば、王都を離れることになりますから、その辺りも話して決めようかと思っております」
選択する自由があるのは彼女の功績があってこそ。
でも生まれてから共にいた彼女が此処から離れるのは寂しいものがある。
「殿下はどうされるので?」
「いくつか案があるが、国のことを考えると婿入りが良いだろうね。
良い条件の家があるから、悪いんだが手伝ってくれなか?」
実子の娘と跡取りの養子がいる家だ。
幸運なことに娘には婚約者がいない。誰を狙って空席にしているか分かるから、上手くやれば釣れるだろう。
それに跡取りとは言っても養子、あまり環境は良くないようだ。こちらにも婚約者がいないし、将来を保証すればいい。
問題は現当主の方だ。
「婿入りと知れば断わるし、彼には早めに当主の座も退いてもらいたいからね」
有り難いことに彼女の協力を得られ、父上にも協力を依頼した。
そして、ミランダ公爵令嬢とその公爵家は罠に嵌った。
野心の強すぎる、そして少しばかり無能な当主は権力の触れない場所で引退して老後を過ごしてもらうのだ。
ミランダも公爵夫人として跡継ぎの母親として相応しくないのなら、療養してもらって分家から養子なり第2夫人なりとればいい。
王家や他家の目がある結婚式で彼らは騒ぐことも出来ず、陛下から1年後に当主を交代することを命ぜられた。
すでに実権は私の手の中だが。
面倒になり、ファリナとの婚約理由を削りました。
分かりにくいかと思いましたので、補足。
殿下は魔力なしのため、魔力の多かったファリナと婚約し、魔力を共有しています。
王になるには結界のためか神との契約のためか魔力が必要なためですが、弟(時期国王)が生まれため、臣下に下る準備をしていました。
忠誠心が怪しい公爵家に目をつけ、ファリナとの婚約を円満解消。
実質的な公爵家乗っ取り、血筋は守る。ということで、忠誠心・自国愛の高い殿下。
ファリナは一人娘のため、跡継ぎです。
王家に入る予定はなく、関連した教育は受けてません。
元々解消予定の婚約でした。




