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ハルマゲドンの英雄譚  作者: 谷川ヒロシ
波乱の日々の幕開け編
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第八話 来客者

 一九三〇時。俺が食堂に行ってみると、人だかりが出来ている。

 何だぁ?

 人垣をかき分けたら、そこにはでっぷりと太った食堂の主であるおばちゃんと言い争っているアメリカ人の佐官ともう一人――尉官がいた。

 佐官の方は長い金髪を一つに纏め、猛禽類の様な鋭い目が印象的な見掛けない顔だ。どう見ても二十代半ばといった処である。そしてもう一人の尉官は短い金髪に碧眼の美青年であった。

 その二人のアメリカ人はMSA用の黒いスーツを着ている。MSA用のスーツはフィットする為に、その二人のアメリカ人の肉体が、無駄のない筋肉に覆われている事を知らせてくれていた。

「だから、あんた達に食わせる飯は無いよ!」

「何故だ! 飯は余っているだろ! いいから食わせろ! いい加減にしないと殺すぞ!」

 何だ? あのアメリカ人高級将校は? 豪い物騒な言葉を使うな?

「オレの名はベルゲン=ウェイスター! 階級は少佐! 月艦隊所属の者だ! 極秘任務で此方に来ている! 協力しろ!」

 すると先に食堂に来ていた静江が、スマホで通話を始める。

「おば様。今、ベルゲン=ウェイスターという者が来ていて……はい……はい……分かりました」

 静江はスマホの電源を切り、言い争っている食堂のおばちゃんに向かって言う。

「おばちゃん。おば様……もとい、学園長から許可を貰った。その人達に飯をやって良いそうだ。それとウェイスター少佐殿」

「何だ?」

「学園長が貴方達の給料から飯代を差っ引くそうです。良いですね?」

 ベルゲンは顔を顰める。

「ケチだな。まあ、構わんが……」

「自分もそれで構いません」

 その言葉を聞いた静江は、

「それでこの学園にどの様な御用でしょう?」

 ベルゲンに問いを投げ掛ける。

「人手を借りに来た」

 そこでリーナが食堂へやって来た。それをベルゲンは見付けて、

「アメリカ人もいるじゃないか。貴様、名は?」

 リーナに問う。

「リーナ=ヴラウン訓練生です。少佐殿」

 それに対し、リーナは敬礼しながら凛然と答えた。

「そうか。では明日から我々の極秘任務に付き合え。いいな?」

 ベルゲンはリーナに命令を下す。

 そこに静江が一歩前に出て、

「リーナは明日も授業があります。それは駄目ですよ。少佐殿。どうしてもと言うなら、その任務内容を教えてくれませんか?」

 ベルゲンに質問。

 ベルゲンは舌打ちしてから言う。

「訓練校の休みは明後日だったな? では、明後日から二日間、我々に付き合え。いいな?」

「イェッサー!」

 リーナは再度敬礼をする。

 こうしてこの場は丸く収まった。

 俺はリーナの下に行く。

「良いのか? リーナ。クラス代表を決める日も近いのに……」

 クラス代表はクラスの長で、それが始まるのは後四日後だ。

 俺も一応は出なければならないが、クラス代表は静江かリーナに決まりだろうと言われている。

「うん。心配してくれてありがとう。ユッキー」

 リーナはにっこりと笑う。それを見た静江が何故かむっとする。

「どうした? 静江」

「何でもない!」

 そこへベルゲンとかいう少佐が、俺達の前の席に座った。

「ここはやかましいな? さて、先程は聞いていなかったが、貴様の名は?」

「シズエ=テンリ訓練生であります。少佐殿」

「先程は助かった。礼を言う」

 おざなりな言い方だな? この高級将校。

 ちっとも感謝していない様子で、ベルゲンとかいう少佐は静江に言った。

「しかし、この箸というものには、どうにも慣れないな……難しい」

「ええ……」

 ベルゲンともう一人のアメリカ人士官は、飯を食うのに悪戦苦闘している。今日の晩飯はご飯と味噌汁。そして鮭の塩焼きだ。

 まあ、初めて箸を使う人間には難しいだろうな。

 そしてベルゲンはリーナを見据えて、

「処でヴラウン訓練生。契約している『堕天使』の階級は何だ?」

 彼女の契約『堕天使』を問う。

「熾天使です。少佐殿」

 リーナは包み隠さず答えた。

「ふむ。なら足手纏いにはならんだろう。合格だ」

 何が合格なんだ? でも、何か大変そうだな? 俺も付き合うか……。

 俺はそう思いつつも、

「少佐殿。俺もリーナの仕事を手伝っても良いですか?」

 俺も志願する。

「貴様の名と契約している『堕天使』の階級は?」

「ユキナ=テンセイ訓練生です。契約している『堕天使』はいません……」

「契約している『堕天使』がいない? それは契約がまだという事か? テンセイ訓練生」

 俺は任務に加わる事を拒否されると思って一瞬躊躇したが、事実を告げる。

「……いえ。契約を行ったのですが、『堕天使』が現れなくて……」

 それを聞いたベルゲンは、

「貴様、天使ではなかろうな?」

 謎の言葉を吐いたのだった。

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