第六十六話 暴走停止
〇九二五時。第一アリーナで『毘沙門天』と戦っている雪菜、リーナ、ヴェロニカ、ファラエル、里見は苦戦していた。
『毘沙門天』の持つ特殊兵装【革命】の圧倒的なスピードの所為である。
「ファラエルとさっちゃんは、VIP席を護ってくれ!」
雪菜の指示に里見は、
「それは無いやろ⁉ ユッキー!」
反論するが、ファラエルに窘められる。
「里見。VIP席にいる人達を殺害されたらわたし達の負け。その護りを任せているのよ? 雪菜は」
「……了解や」
里見がOKを出した処で、
「じゃあ、行くぜ!」
「OKよ」
「了解」
雪菜、リーナ、ヴェロニカの三人は、『毘沙門天』に向かっていく。
まず、先手はヴェロニカだった。
多目的誘導ミサイルで攻撃。両手に散弾銃を持ち、休まず『毘沙門天』に向かって飽和攻撃を再開する。
だが、それらの攻撃を『毘沙門天』は【革命】のスピードで躱しきった。
そこへリーナが加わる。
だが、凄まじいスピードで『毘沙門天』はそれらを回避。ビームライフルでリーナを攻撃するが、【イージス】の小さなレンズより放たれた無数のレーザーにより防がれる。
そして射撃体勢に入った『毘沙門天』に対し、雪菜は背後から、
「散弾炎!」
無数の黒い炎の炎弾を出す。
『毘沙門天』は、プラズマフィールドを展開するが、Aクラスの特殊能力を防ぐ程ではなかった。
『毘沙門天』は吹き飛ばされ、VIP席に向かっていく。
それを見た雪菜が、
「しまった!」
後悔するが、もう遅い。
『毘沙門天』は、態勢を立て直してVIP席に向かって野太刀(5)を構える。
「絶対切断!」
再びアリーナのバリアを切り裂かんとするが、
「させない!」
ファラエルが、レーヴァテインで受け止めた。
通常の神装なら切り裂かれるが、ファラエルの持つのは神が与えた神器だ。
超新星爆発にも匹敵する力を秘めた超兵器である。その力はまさしくEXクラスの特殊能力でも斬る事は出来ない。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
雪菜はファラエルの前に立ちはだかる『毘沙門天』に向かって、八連撃技の『連枝』を使う。
プラズマフィールドで、ある程度緩和されるが、雪菜の狙いは魔力切れを起こす事にある。
狙い通りに『毘沙門天』の魔力は削れた。
『毘沙門天』の残りの魔力は1250だ。
『毘沙門天』は、武装を野太刀(5)と電磁投射小銃に切り替える。
(後一撃……!)
雪菜は突きの態勢に入るが、その前に『毘沙門天』が【革命】を使う。
不意を突かれた雪菜とファラエル。
『毘沙門天』はそのままVIP席に向かって、三度アリーナのバリアを切り裂こうと突き進む。
そこへ里見が、
「させるかい!」
薙刀(5)を振り回す。
スピードが付いていた為、急には止まれず、真面に里見の攻撃を受けてしまう。
更にアサルトライフルで『毘沙門天』を攻撃。
止めに雪菜が天理神明流二刀術重突進二連撃技――『絶空』を使用。
『毘沙門天』の魔力値はゼロになり、その動きを停止させた。
洗脳開始から三五分の出来事である。
因みに洗脳率は97%であったが、停止させた為に洗脳は直ぐに解けていった。