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ハルマゲドンの英雄譚  作者: 谷川ヒロシ
波乱の日々の幕開け編
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第二話 講義

 現在の時刻は一一四五時。俺はMSAの待機状態である、赤いブレスレットで現在の時刻を確認したのだ。

 場所は二年二組の教室である。

 現在の座学は歴史。

 教科書を見ながら使主教官は俺に聞く。

「火星圏撤退戦――それはいつ起こったか? 天聖君、答えて」

「……分かりません」

 使主教官の出題に、俺は見栄を張らずに素直に答える。

「まったく! こんな事も分からないのかね⁉ じゃあ、ヴラウン君! 君が答えてくれたまえ!」

「五年前の二五八〇年四月十二日です! 使主教官!」

「うむ。流石ヴラウン君だね? よく勉強している。それに比べて天聖君……。君は、少しは予習したらどうかね?」

 使主教官の嫌味に、

「ですが、使主教官。歴史の勉強が天使との戦いにどう役立つのですか?」

 俺は疑問を投げ掛ける。

 俺は勉強をしていない訳ではない。だが、歴史は天使との戦いに役に立つとはどうしても思えないのでやらないだけだ。

 そして使主教官は、

「そ、それは……だね……」

 俺の疑問に答えられないでいた。

 そら見ろ……! 意味なんてないじゃないか⁉

 そこに宗谷が人差し指を立てて言う。

「馬鹿だなぁ。雪菜。座学は大事だ。特に歴史は、な?」

「どういう意味だよ? 宗谷」

「歴史はを紐解けば、天使の行動パターンや目的が見えてくる可能性があるって事だよ。雪菜」

「ほう。で、お前は分かるのか? 天使の行動パターンや目的が……」

 俺の質問に、宗谷は額に脂汗を搔く。

「も、勿論さ。雪菜」

「ほう。で、その目的は? そ・う・や?」

「人類を滅ぼす事さ」

 俺は息を大きく吸い込み、

「そんな事、誰でも分かるわ!」

 宗谷に向かって大声で叫ぶ。

 こいつは、本物の大馬鹿野郎だな……⁉

 そんなのは小学生でも分かる。

「おほん。講義を再開するぞ?」

 使主教官の声で俺は意識を授業に向ける。

「火星撤退戦以降舞台は月基地に移行している。月基地こそが現在の最前線と言っても過言ではない。勿論他の要塞でも散発的ではあるが戦闘はある。だが、一番戦闘が激化しているのは月基地だ。それは月基地が人類に残された最大の『砦』だからと言われており、この事から天使は人間を探知する能力があるようだ。また天使は知能も非常に高く、高い戦術レベルの作戦を遂行してくる。物量だけではないという事だな……」

 疑問に思った俺は、挙手をする。

「質問です。使主教官」

「何だい? 天聖君」

「高い戦術レベルの作戦って、どの程度遂行してくるのですか?」

「迂回挟撃や包囲機動等の戦術レベルは遂行してくる」

 使主教官の講義に教室内はざわつく。

「天使は物量だけじゃあないって事かよ?」

「しかも天使は通常のMSAじゃあ歯が立たない。『堕天使』化した乗り手だけしか、まともに戦えない程の強さなんだろ?」

 MSAは『堕天使』化をしなくても強力な魔導兵器だが、それでは天使には敵わないのだ。その証拠に『堕天使』化の儀式が確立されるまで、火星圏の戦いでは戦艦が主力だったらしい。MSAは補助的な役割だったとか。

「色々チート過ぎるだろ?」

 そこで使主教官が手で教本を叩いた。

「はい。喋ってないで授業を聞く。天使は非常に高度な戦術を使い、単体戦力も高い事が分かったと思う。だが奇妙な事に戦術の方は、最近の事だよ。当初、と言っても火星圏の戦いでは、戦術は使わずに物量戦だけで戦っていたという話だ」

「『堕天使』化の技術が確立する前の話だから、戦術を使うまでもないって事ですか?」

 俺の再度質問に使主教官は答える。

「そこはまだ分かっていないよ。ともかく皆、戦場に出たら気を付ける事。いいね? …………返事は?」

『はい!』

 ここで授業の鐘が鳴った。

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