第十八話 強敵
よし! 成功だ!
一〇四〇時。第一アリーナにいる俺は、すぐさまリーナと静江の魔力値を確認する。
リーナは11000で、静江は13500か……。恐らくビームによる魔力消費でこうなったのだろうな……。
ビーム兵器は魔力消費が大きい。それに対し物理攻撃の剣や刀。槍等の武器は魔力消費は少ない。特殊能力でも使わない限り……。
俺はすぐさまルシフェルに指示を出す。
「ルシフェル! 俺とミリエルの魔力値を出して置いてくれ!」
【自機】――魔力値250000――
【蘇我機】――魔力値19000――
は? なんじゃこりゃ? 一桁多くないか?
俺は自分の魔力値に困惑した。
だが、気を取り直して、
「ルシフェル! プラズマライフルを出してくれ!」
水色の長剣(5)を収め、プラズマライフルを出すよう――ルシフェルに言う。
{プラズマライフル? 検索したが無いですよ? そんなものは……}
「はあ⁉ 無い⁉ そんな馬鹿な……! 母さんが装備しているって言っていたんだぞ!」
思わず俺は声を荒げる。
{無いものは無いのです! 幾ら検索しても出てこない!}
ルシフェルの回答に、
「じゃあ、何がある! ルシフェル!」
俺は使用可能な武装を尋ねる。
{検索出来たのは、高周波ブレードとアサルトライフルだけです!}
ん? だけ?
「水色の長剣(5)はどうした? ルシフェル。それに左肩に大型砲があるだろ? 大型荷電粒子砲はどうした?」
{検索しても出てこない⁉ どうなっているのですか⁉ 雪菜!}
「俺が知るか!」
と言っても、俺には分かった。恐らく誰かが、この『明星壱号機』に何かしらのコンピューターウイルスを仕込んだのだろう。
失火し、疎んじているからといって、ここまでするか?
仕方なしに、
「ルシフェル! アサルトライフルを出してくれ!」
俺は出せる武装を出す様に、ルシフェルに指示を出す。
{分かりました}
量子変換されたアサルトライフルが、俺の手に出てくる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺はアサルトライフルを撃ちまくり、弾幕を張りながらミリエルに近付く。
そして黒い長剣(5)を振りかぶった。
それと同時に、ミリエルも朱い長剣を構える。
「せやあああああああああああああああああああ!」
「はああああああああああああああああああああ!」
同時に朱と黒の長剣が鬩ぎ合う。
一進一退。ほぼ互角の攻防を繰り広げる――俺とミリエル。
俺の魔力値が削られていく。しかし、まだまだある。
それに比べて、ミリエルの魔力値は俺に比べたら、微々たるもんだ。よし! これならいける……!
だが、剣の腕は俺よりミリエルの方が上だったようで、どんどん魔力が削られていく。
くっ⁉ このままでは……!
ミリエルの連続攻撃を捌きながら、俺は打開策を考える。
ミリエルは超至近距離だ。リーナの援護射撃は望めない。ならば、
「静江! 一緒にこいつを攻撃だ!」
静江に助けを頼む。
「分かった!」
静江は直ぐに駆けつけて、野太刀(5)で突きを放つ。
それがモロにミリエルに当たる。
よし! いいぞ!
俺がそう思った時、ミリエルが武装を取り出す。
形はアサルトライフルだった。
アサルトライフル程度、中ったとしても何て事は無い。
喰らっても余裕だね!
だが、アサルトライフルからビーム弾が無数に放たれる。
げっ⁉ 何だよ! これは……⁉
俺はミリエルの武装を確認。
すると、追加武装にビームアサルトライフル(4)と重装甲(2)の文字が。
そうしている間にも、ビーム弾がくる。
それらが全弾命中。くそ! 何だよ! ありゃ!
俺は心の中で悪態を吐いて、回避行動に移る。
だが、ミリエルは俺に向けて撃ち続けながら、右手に持っている朱い長剣で攻撃して来た。
朱い長剣の一撃が当たり、魔力値を一万近く持っていかれる。
くっ! これは不味い!
俺はミリエルの連続攻撃を捌くが、ビーム弾の嵐は避けられず、その殆どが中ってしまう。
これは不味い! 本気で不味いぞ!
どんどん焦る俺に比例するかのように、どんどん己の魔力値が減っていく。
そこに静江がやって来るが、ビームアサルトライフル(4)の攻撃を喰らう。
「この! よくも……!」
魔力値が残り少ないにも拘らず、猶も突撃しようとする静江に、
「止めろ! 死にたいのか! 静江、防御に徹しろ!」
静江の魔力値を見た俺は待ったを掛け、防御に徹するよう指示を送る。
「くっ……!」
静江は悔しそうにしながらも、俺の指示に従う。
ふう~。
俺は安堵の表情になるが、そうはいかなかった。
「この!」
リーナが勝手に攻撃を始めたのだ。
しかし逆に、ビームアサルトライフル(4)の攻撃を受ける。
「ランダム回避だ! リーナ!」
リーナはランダムに回避行動を行うが、ビーム弾の攻撃を受けた。
リーナの魔力値を『見る』と、後、50だ。
く! 間に合ってくれ……!
俺はリーナの下に急ぐ。
そしてリーナの前にいき、代わりに攻撃を受ける。
「リーナ! 静江! Aピット内に行け!」
「え? でも……!」
「それじゃあ、ユッキーが一人に……!」
「いや、俺一人じゃない」
その瞬間――ファラエルさんがBピットから出て来た。