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Second LOVE

作者: タフィ

…離婚歴ありの24歳の山田真二。

高校を卒業して直ぐに都内の大手スーパーに就職。

鮮魚担当として配属され、レジのめちゃくちゃ綺麗な女性と結婚。

結婚後は転勤で千葉県へ。それが俺の人生の『変化』の始まりだった。

不安が8割、期待が2割だった。でも意外と住んでみると良い所。

自然も多く、案外住みやすい。住まいは会社が用意してくれた民間の賃貸物件。

初めての千葉県での生活だけど店舗が君津市、住居は木更津市。

距離感が分からなかったけど通勤が結構遠い。

その時の妻の仕事はスーパーを辞めて生命保険会社へ転職。

周りからの話だとあまり薦められない職種らしい。

お互い職場に慣れ、俺は仕事に没頭して休みも返上。これが……。

会話する事も減り、俺は仕事が終わると職場の仲間と呑みに行って

帰りは午前様。それがほぼ毎日の様な生活だった。

でも仕事はかなり集中して取り組んでいた。成績も良かった。


いつもの様に呑んで帰宅すると自分の駐車スペースに

見慣れない車が停まっていた。

何か嫌な胸騒ぎがして玄関を開けると妻の靴と男性の靴が。

深く呼吸をして靴を脱ぎリビングに向かうと飲みあけた焼酎の空瓶が…。

寝室の扉を開けると…… 知らない男と妻が……。

妻を起こし外に連れ出し状況を聞いた…。勤務している生命保険のお客さんだと…。気付くと男も外に出て来ていた。男に確認しても妻同様の内容だった…。だけど引っ掛かった、男の言葉に………。

『自分の妹の様な奴なんで、ご主人の相談にのっていたんです』

相談?焼酎の空瓶?そして… 自分の妹の様な奴?……。

俺の妻に対して、妹?あいつのどこからどこまで知ってるんだよ…。あいつの……。

男は帰って行った。千葉県の船橋で事業をやっている男だった。

そして、人生で初めて女性の頬をビンタした……。手がすごく痛かった…。


その後の妻との関係は崩れて行った。

二人の共通の知人が心配し来てくれたけどだめだった。

就職し配属先の店舗で一番綺麗だった妻。

お互いに意識していたと同僚からの言葉に背中を押され

勇気を出して告白し付き合うとこが出来た、憧れの人だったのに…。

19歳で結婚して22歳で離婚。


離婚をきっかけに転職、パチンコ店に勤務した。全然知識の無い職種。でも、給与は良かった。同僚も転職組ばかりで気さくな人や訳アリの人も。出勤は早番が7時、遅番は16時。思ったよりもパチンコ店の朝は早い。勤務形態は早番と遅番に分けられてる。営業時間が23時までだから遅番だと24時を過ぎるシフトだった。意外とハードかもしれない。

開店は10時、台、のぼり、パチンコ玉、スロットコインの準備と結構な作業量。でも、これで勤務時間の半分程は終わってしまう。休憩時間は交代で班長の指示で入る。

早番だと時間が過ぎるのが早く感じられるけど、遅番は夕方から閉店までホール。


そして、みんなが楽しみにしている歓迎会。

俺の他にも何人か入社した人がいて閉店後にチェーン店の居酒屋やカラオケBOXで

歓迎会。仕事が終わってからだから個人店はほぼ閉店。

中途組が多いから話の話題は以前の職業、あとは家族構成やプライベートな領域にまで及んだ。

パチンコ店の訳アリの人って言うのは俺の様に離婚歴ありの人が男女問わず多い事。

これにはびっくりした。シングルマザーで子供の為に少しでも収入を上げる為に転職して来た女性。

もともとパチンコやスロットが好きで転職して来た人。借金の返済の為に転職して来た人など本当に色々だった。みんな個々に理由がありパチンコ屋に転職して来た同僚達だった。


だんだんと仕事にも慣れて来た。だけど驚いた事に毎日パチンコやスロットを打ちに

お客さんは来店する事に。そんなに金を持ってるなんてどんな生活をしてるのか不思議だった。

パチンコ台の種類によって打ち方や大当たりした時の打ち方までさまざま。スロットなんて

図柄を合わせるなんて感心しながらお客さんの遊技を目にしてホールを回っていた。

店員よりもお客さんの方が台には詳しい、仲良くなったお客さんから教わったり、時には

コーヒーとかもご馳走になったりの仕事時間を過ごしていた。

お客さんも色々だった。パチンコ台のガラスを怒って叩き割る人や店員を呼んで

遠隔操作してるだとかカウンターで女の子に絡んで来たり、店の駐車場で店員が終わるのを

待ち伏せしていたり、裏社会の方々など。でも裏社会の人たちは案外礼儀正しく遊技していた。

逆にマナーの悪いお客さんに”喝”を入れてくれたり持ちつ持たれつの関係?の様だった。


驚いたのは仕事の事について役職者から…

「命の次に大事なお金を使ってもらってる意識をもって仕事をする様に…」

「我々の接客は感情の中でも一番厳しい”怒”の感情が多いお客さん相手だから…」

すごく納得したし、関心した。周りからは結構抵抗される職業だったから意外と

まともな仕事なんだと感じた。でもお客さんからは長くやる仕事じゃないよって…。


週3回くらいの頻度で来るお姉さんとは気が合った。メインがパチンコだったんだけど

打つ台が”バカボン”だった。挨拶程度だったのが、パチンコ台の会話をしたりスロットの話や。

でも数時間打ったら帰って行く。いつも独りで来て黙々と黙って打って。

店員はホールを不正行為をする輩がいないか巡回しながら回っているからお姉さんの台に行っては

話しかけて長話は禁物だからちょっと話しての繰り返し。

まずは自己紹介から名前のやり取り…

「山田真二です」

「私は明石千夏だよ」

お互い年齢や住んでる場所とかの話題になった。驚いた事に住んでいる地域が同じだった。

お姉さんはその地域でスナックのママをやっていた。しかも俺の自宅から歩いて5分くらいの場所だった。

「今度良かったら呑みに来れば!」

思った、これは営業トークだと。女性のいる飲み屋さんとかに行った経験が無いから余計に。

自分が働いてるパチンコ店のお客さんだし… かなり警戒した。

でもその警戒心もすぐに無くなっていた。何故かと言うとパチンコ店で話している時のお姉さんの

態度や言葉使いに親近感が湧いていたからかも……。

勇気を出してお姉さんのお店の扉を開けた…

「いらっしゃいませ!あっ!真ちゃん!!」

「来てくれたんだ!はい!おしぼり!」

おしぼりを出してくれる事に本当に驚いた。女性のいるお店ってこうなんだ。

「真ちゃん、今日は休みでしょ?店にいなかったもんね」

「うん、休み!来るのに緊張しんだよ!」

「なんでよ!いつも話してるじゃん!」

「そうだけど… なんか緊張するよ、休みに会うなんて!」

これが初めて千夏さんのお店に行った時の思い出かな。


女性のいるお店って偏見に似た気持ちを持っていたけど凄く真面目に仕事をしていた。

お店はそこまで広く無いけど、この日は女の子たちは6名ほどでお客さんは8名ほどだった。

千夏さんはママでパチンコを打ちに来ている時とは全く違う雰囲気だった。

常にお客さんに目配りして、従業員の女の子に指示を出したり…

「○○ちゃん、2番卓に行ってね」

「○○ちゃんは△△ちゃんと入れ替えてね」

このやり取りを俺はカウンターに座り見ていた。ママの仕事をしている姿を。

俺にも気を使ってくれて、ママはカウンターの俺の前にずっと居てくれた。

「真ちゃん、お腹空いてる?」

「もちろん、空いてるよ!」

「じゃあ、仕込んどいた餃子用意するね!」

他にもたくさんおつまみ?おかず?を出してくれた。

パチンコ店に来ている時とは別の千夏さんの一面を見て彼女への”変化”を感じていた。

俺の休みの日課は日中は出掛けたり、掃除やらで過ごして夜は千夏さんのお店に行ってた。

お酒も呑めて夕飯も食べられる。思うようになった事が…。

自分の勤めているパチンコ店と住んでいる場所にはかなりの距離がある。

車でだいたい40分、電車でも20~30分は掛かる。なのにどうして遠くのパチンコ店に…。


”朝起きてから家を出てパチンコ打って、また戻って夜の店?”

”わざわざ40分かけて?他にもパチンコ店あるのに?”


最近の俺の頭の中はこの事ばかり…。


最近は千夏さんのお店に馴染んできて他のお客さんの様にカラオケに挑んでる。

ただ苦手なカラオケだから知らない人前で歌うのはやっぱり抵抗がある。

「千夏さん、何か歌って!!俺は下手だから…」

「真ちゃん、何か聴きたいのある?」

「ん~… あっ!プリプリの”M”が良い!!」

「良いよね!よ~し!久しぶりに歌うよ!!」

上手かった、すごく上手かった。初めて歌の上手い人の歌を聴いた。

ただ音程が取れてるとかじゃなく、響いてた… 今の俺に…。

千夏さんの好きな歌手が分かった。ポルノグラフィティだった。

”歌いたいけど… ポルノかぁ… 高音だし… 無理だよ”

アップテンポのリズムで高音で、俺はカラオケが苦手だし… いや歌そのものが苦手。

「真ちゃん、これが好きなんだ”憂色”って言うの」

「音程とか一緒に合わせてあげるからやってみようよ!」

初めて聞いた曲だった。ゆっくりとしたリズムに優しいフレーズで

でも、何となく淋しい感じの雰囲気も感じた…。


休みの度に来ている千夏さんの店。独身だから夕飯と晩酌を兼ねてだったけど

休みの日課になって来ている。最近は閉店までいて最後のシャッターは俺が閉める。

背が高い事もあり俺の役目になった。なんか少し嬉しかった。

「真ちゃん、いつもありがとう!」

「こんな事別に大丈夫だよ!」

「真ちゃん、電話番号交換しようか!」

「うん!」


たぶん、二人の自宅は近いとは思うけどお酒も吞んでるし車で出かける訳にもいかず、

お店が終わると普通に帰宅するだけだった。

千夏さんの私生活は何も知らなかったし、聞く事にも抵抗が何故かあった。

聞きたくない事まで聞いてしまうんじゃないかって思っていたと思う。


平日の日中は週3くらいで千夏さんはパチンコ店に来てくれてホールを回りながら

世間話をしたり、今日の調子を聞いたりで平凡なやり取りだった。けど…

今日は踏み込んだ話をしてみた。

「千夏さん、なんでこっちにパチンコしに来てるの?」

「…こっちで彼氏と同棲してるんだ…」


”聞かなきゃ良かった……”


聞いちゃったよ。後悔…。本当に聞かなきゃ良かった…。

謎は解けたけど、聞きたくない事まで聞いちゃったよ、やっぱりね…。

直ぐに話の内容を変えた…。


休日の日課である千夏さんのお店に行ってお酒を呑んで、美味しいおかずを食べて。

千夏さんの歌を聴いて、俺は練習中の”憂色”を千夏さんのフォロー付きで歌って。

この日もいつもと変わらない閉店後のシャッターを俺が閉めて帰るとこで…


「真ちゃん、今夜はお家に遊びに行っても良いかなぁ?」

「えっ!? 別に良いけど汚いよ!」

「千夏は構わないよ!お腹少し空いたから何か買って呑みなおそうか!」


千夏さんの店の近くに24時間営業のスーパーがあった。

お客さんも少ない店内はまるで二人だけのお店の様だった。

俺がカゴを持って千夏さんが飲み物を選んでくれた。

買い物しながらカレーの話題になりオプションで何を入れてるとかの話になった。

俺は独り暮らしだからある程度の家事はやっていて、もちろん自炊もしていた。

「俺はカレーにチョコを最後に入れてるよ!」

「へ~、チーズもありだよね!」

この時、凄く千夏さんを近くに感じていた。

千夏さんは背も高く、柴咲コウに似ていてスタイルも良くて”かっこいい”女性で

俺とは釣り合わないくらい素敵な人だった。

歩いて俺の家に着いた時に何か今の状況を理解できていない自分を感じた。


「ここが真ちゃんの家かぁ、こんなに近くだったんだね!」

「でしょ!!本当に近いんだよ!俺もびっくりしたんだよ!」


買って来たお酒を呑みながら話始めた。

この日の千夏さんは何か雰囲気が違っていた…。

千夏さんから話始めた。


「…付き合って人と別れたんだ… だから今はこっちで生活してるんだ…」

「……そうなんだ」

「だからパチンコしに真ちゃんのお店に行かなくなるよ…」

「…こっちから俺の店は遠いから仕方ないよ」


意外な内容の話だった、重い内容でなんて話したらいいのか分からなかった。

でも、それ以上この話題には触れなかった…。その後は生まれ場所や地元の話だった。

1時間ほど経って千夏さんがタクシーで帰る事になり見送った。


「…真ちゃん、ありがとう。またね…」

「…うん。ありがとうだなんて… またね、おやすみ」


今までは平日の日中、千夏さんが打ちに来ていたのに…。

なんか急に仕事がつまらなくなってしまった…。

でも、休みの夜の日課は変わらずに千夏さんのお店に行っていた。

いつもの千夏さんで笑顔で居てくれて、カウンター越しに俺の前に居て、歌ってくれて。

教わっていたポルノの”憂色”は何となく歌える様になった。

なぜなら”CD”を買って通勤途中の車の中で熱唱して練習したから。

お店も閉店になりシャッターを閉めて…


「買い物して、真ちゃんのお家に寄ってもいいかな?」

「いいよ!じゃあ、今日はなにを買って帰る?」

「今日はね、千夏のおすすめのデザート買って帰ろうね」

「いいね!あとはお酒も買ってまた飲みなおしだね!」


また貸し切りの二人だけのスーパーで買い物。


「真ちゃん、千夏が好きなのはこれだよ!!」

「ん?”なめらかプリン”??」

「食べた事ある?」

「無いよ!美味しいの?」

「うん!!千夏はだ~い好き!」


千夏さんが仕事している時はかっこいい女性で頼もしい雰囲気だけど

今の千夏さんは逆で可愛くて幼くも見えて甘えん坊の様で。


今夜の千夏さんは少し酔いが回てる感じで…。

俺の直ぐ横に座って、肩で寄りかかりながら…


「真ちゃんは千夏の事をどう思ってるの?…」

「えっ!? …どうって… そりゃ… あれだよ…」

「あぁ~ 何か困ってる!!困ってるでしょっ!!」

「困るはずないでしょ!…こうやって一緒に居るんだから…」

「ならいいよ…」

「千夏ちゃんはどうなの?……」


…気づいたら、”ちゃん”付けで呼んでいた。


「…あれ?酔ったかな… 千夏は真ちゃんと居ると落ち着くの…」

「…真ちゃんは気づいたら… いつの間にか千夏の心の隙間に入って来てて…」

「…その存在が大きく… 大きくなってきてるの…」


心臓がバクバクしていた。緊張で。


「…俺も千夏ちゃんの存在が大きくなって来てるんだよ…」

「…千夏ちゃんといっしょに居るとホッとしてなんか癒してくれるんだよ…」

「…真ちゃんなら… 今夜… 千夏はいいよ…」

「…え。 …うん」


初めて千夏ちゃんの”感情”にふれた気がした…。

あれからどれ位の時間が経ったのか、千夏ちゃんは洗面所で歯磨きしていた。


「真ちゃん、千夏は歯磨きしたら帰るね!」

「えっ! うん。分かったよ」


「真ちゃん、今日もありがとう。千夏のわがまま聞いてくれて…」

「千夏ちゃんのわがままなら、俺はいくらでもいいよ」

「ありがとう… 真ちゃん…」


千夏ちゃんを見送って部屋に戻った。まだ千夏ちゃんの香水の匂いがしていた。

洗面所には千夏ちゃんの歯ブラシが俺の横に置いてあった。

…俺の中では千夏ちゃんの想いに対して素直に嬉しかった。だけど…

まだ彼氏と別れたばかりで、寂しい思いがあって甘えているだけなのかって…。


今日は珍しく二人とも日中から会うことになった。

ランチを食べに行くことになったけど、全然経験が無いから

どこに行っていいやらでとりあえず車を走らせた。

車の中では和気あいあいと面白おかしく色んな話をしていた。

そしてランチは釜めし屋にした。訪れた釜めし屋の店内は懐かしい昭和のレトロな感じだった。


「千夏ちゃん、釜めし屋でも良かったかな…」

「千夏は大丈夫だよ!」

「釜めしが苦手だったらって思って… 良かった!」


釜めしを食べる機会があまり無いので二人ともご満悦で店を出た。

車を走らせ普段あまり話をしない恋愛観の話や仕事の話をした。

やっぱり千夏ちゃんは真面目で一生懸命に物事に取り組む人で思いやりがあって。

”尊敬”できる人間だと改めて感じていた…。

女性の居る飲み屋さんで働く人に対して今までは偏見に似た印象があったけど

千夏ちゃんに出会い捉え方が多きく変わった。


数か月が経ち俺が異動する事になった。

送別会を開催してくれる事になって、みんなを驚かせ様と千夏ちゃんも呼ぶ事にした。

日曜日の夜は千夏ちゃんのお店はお休みだから参加する事ができた。

一次会はパスして二次会のカラオケ屋さんから参加した。


「今日はわたくし、山田の最後の日でもあり主役自らゲストを呼んでおります!」

「では、千夏ちゃんどうぞ!!」


みんな、呆気に取られ誰を呼んだのか、誰なのか分かっていなかった。

でも、女の子達には人気があった千夏ちゃんだったから…


「ええぇ~!? なんでぇ~!?」

「え!?え!?山さんと!?付き合ってたの!?!?」


みんな驚いていた。特に女の子たちの反応が凄かった。

先輩の役職者からも…


「山は一生分の運を全部使い果たしたな!」

「あんないい女と過ごせるなんて、凄いよ!!」


ちょっと男として鼻が高かった。

そんな俺の横でみんなに愛想を振りまいて、歌ったりしている姿を見て感心していた。

千夏ちゃんは嫌ならはっきりと断る性分だし、でも気づかっているのかなぁ…。

電車で来たくれた千夏ちゃんが俺の車を運転してくれる事になった。


「今日は… なんかごめんね」

「なんで謝るの? 嫌だったら千夏行かないし!」

「あと真ちゃんと働いてる人達にもあってみたかったし!」

「千夏がお客さんで行くのとでは違うじゃん!」

「…遠いのにありがとうね」

「みんなを見てて真ちゃんをもっと知る事できたし!」

「えぇ!?それってどう言う意味!?」

「内緒だよぉ」


普段はあまり一緒に居る事が無い二人だった。

千夏ちゃんの気が向いたら俺の家に遊びに来たり、寄ったりの関係だった。

…ただはっきり言えるのは”付き合おう”って単語はお互いに言った事が無かった。

そして千夏ちゃんに対して距離置く自分に気づいた。千夏ちゃんもそれとなく感じていると思う…。

休みの夜の千夏ちゃんの店に行く事もほとんど無くなった。携帯電話もあまりしない二人だったけど…

電話が鳴った…


「真ちゃん、今から行って良い?」

「家に居るから良いよ」

「今から行くね!あとでね!」

「うん。気を付けてね!」


久しぶりに声を聞いた気がした。

直ぐに千夏ちゃんはやって来た。


「真ちゃん、抱っこして… ギュって…」

「いいよ… おいで…」

「…うん。 真ちゃん…」

「…どうしたの…」

「…このまま ギュってしてて…」

「うん…」


しばらくして…


「千夏ちゃん、これから出かけるの?」

「…うん スロット打ちに行ってくる…」

「そっか…」

「…じゃあね 真ちゃん…」

「…うん」


千夏ちゃんに会ったのがこれが最後だった…。

どうしても踏み込めない自分が居て、千夏ちゃんの気持ちの所在ばかり気にして…

…俺は本当に千夏ちゃんが”好きだった”のに…。ずっと千夏ちゃんの気持ちを受け止めて

なかったのかも。それに気づいた千夏ちゃんから離れて行ったのかもしれない…。


しばらくして夜、千夏ちゃんの店の前を通たら店の看板は外され無くなっていた。

この時に本当に終わったんだと感じた。携帯の番号は変わってなければ通じると思うけど

俺にはそんな勇気が無かった……。


数年が経ちSNSが発達し千夏ちゃんの存在を知った。

俺はあれから転職し越して行った。千夏ちゃんはまだ地元にいた。

今度こそ勇気を出して友達申請をしたみた…。

彼女からすぐに返事が来た。


”真ちゃん、元気だった?千夏は相変わらず元気してるよ!今は結婚してお腹に赤ちゃんが

いるの。来年の2月に産まれる予定だよ。お酒呑んでる?千夏は赤ちゃんいるから禁酒中です。

段々と寒くなって来たから、チョコを入れたカレーを食べて体を冷やさない様にね。それと

食後のデザートはなめらかプリンだからね!”

















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