白きドラゴンの聖女様の転生先はボロアパートでした。そして目の前には愛しの騎士様が…いるはずなのに何かがおかしい!こんな転生、アリですか?
「なろうラジオ大賞2」応募作品なので、1000文字以内の作品になっています。
「聖女様、どうか貴女に白きドラゴンのご加護があらんことを!!」
「嫌です。皆を置いてはいけない!」
嫌がる私を転生の箱に無理矢理押し込み、彼は扉を閉めようとする。
「…レティ、愛している。君だけは生きて。幸せになって。」
私が最後に見たのは愛した人の血まみれの笑顔と背後に迫る魔物の群れだった。
そして次に私が目覚めた先は木造と思しき狭苦しい小部屋だった。
「ここは…」
「…あの~どいてもらっていいですか?」
なんだか埃臭い。物置かしら?
それに、なんだか足元がぐにゃぐにゃする。
「気づいて俺の存在。そしてどいて~。」
足元をみるとさっき別れたばかりの愛しい人を足げにしていた。
「ソラ様、ご無事だったのですね!」
「誰?アナタ誰?そしてソラ様って誰?とにかくどいて~」
慌てて飛び降りて、私はソラ様の傍に跪く。
「ソラ様、お怪我は?それに皆の者はどこですか?」
「聞いて!俺の話を聞いて!!」
急にソラ様に腕を掴まれて私は息をのむ。
愛し合っていたとはいえ私は聖女、ソラ様は私を護衛する騎士。
こんな風に乱暴に触れられることなど今までなかった。
ソラ様…ですわよね?お姿はソラ様に違いないのに…
「あっ、ごめん…えっと、君どこから来たの?ここは俺の部屋で、俺は黄瀬ソウタです。ソラ様とやらではないです。」
「うそ…」
ソラ様じゃない…??
私は…私は愛しい人を、守るべき民を魔物の群れの中に置き去りにして一人生き延びてしまったというの?
そんな、そんなことって…
堪えようのない涙が零れ、嗚咽がもれる。
見知らぬ人の前ではしたない。
そうは思っても一度零れた涙は堰を切ったように溢れ、なかなか止まらなかった。
「えっと…落ち着いた?とりあえず何か飲む?」
私が泣き止むまで黙って傍にいてくれた青年はそう言って立ち上がろうとする。
ソラ様そっくりの青年の手を掴み私は問いかける。
「ここが城ではなく、あなたがソラ様ではないというなら、あなたは誰なのですか?そしてここはどこですの?」
「だから聞いて!俺の話~!!そして、とりあえず靴をぬげ~!!」
そう言うと目の前の青年は床に突っ伏した。
これは聖女だった私とヘタレ大学生のソウタとの出会いと成長と、そして別れの物語。