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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

学校に行かなくていいんだ。

作者: 文月獅狼

 午前7時25分。僕は今、歩いている。

 僕はとある高校に地下鉄で通っている。今日は月曜日で、一番学校に行きたくない日だった。休んでしまおうかとも考えたが、皆勤賞がそれを許さなかった。

 ついさっき駐輪場に自転車を置いてきたところだ。そこから階段を下りて、今改札を通ろうとしている。事前に定期券を取り出しておこうとポケットに手を入れる。

 手慣れた手つきで定期券を機械に読み込ませて通り抜ける。駅員が「ありがとうございます」と言ってきたので、自分も軽く会釈する。しかし、おそらく気づいていないだろう。僕が通ったのは4つある改札のうちの駅員から一番遠いところだ。しかも僕と駅員の間を行く人が何人かいた。

 定期券をポケットに突っ込むと、なんとなくそのまま手もポケットに入れたままにする。あまり手をぶらぶらと動かすのは好きじゃない。

 ここから下のホームへと下りる道は4つある。2つ階段で1つエレベーター、1つがエスカレーターだ。一番近い所と一番遠い所に階段があり、次に近いのがエレベーターで、その次がエスカレーターだ。

 僕は普段から少し早めに登校している。そのため急ぐ必要もないから、一番近い階段は使わない。足も不自由なわけではないため、エレベーターにも乗らない。一番奥の階段を下りて乗る車両には同学年の苦手な人がいる。結果、消去法でエスカレーターを使うわけだ。

 受験対策のアプリや塾の広告が貼ってあるのをなんとなく見ながら道を進むと、やっと目的のエスカレーターにたどり着いた。さっき改札や駐輪場で見かけた人が前にいる。僕が乗るのとほぼ同時に1人目が降り、続いて2人目が降りた。

 僕は何となく手すりに左手を置いた。時々指だけ手すりの外に出して鉄板に触れさせ、手の先だけが置いて行かれる感覚を楽しむ。そんなことをしていると、半分ほど来たところで後ろで誰かが乗る音がした。足音はそれっきり無くなったから止まったらしい。おそらく携帯でも見ているのだろう。

 終わりに近づくにつれて右足をゆっくりと上げる。そして水平になったところで上げていた右足を下ろし、左足を上げる。ちょうどその時電車が来るというアナウンスが流れた。

 僕の定位置はもう少し先だ。だからまだ歩く必要がある。僕のいる駅は折り返し地点なので、来たとしてもすぐに出発することもない。だから余裕はあるのだ。

 エスカレーターから降りて歩き始めたころにはホームから見える所に電車がいた。

 いつも通り、なんとなくボーっとしながら歩いていると、急に右肩に衝撃を感じた。そのまま体は左に倒れ、気が付くと危険を示す黄色い線からだいぶ離れていた。

 もうどうやったって遅い。直感的にそう理解した。なぜこうなったのか、それを知るべく僕は右を見た。

 知らない男性だった。一度も見たことのない、スーツを着たサラリーマンのような男性が、両手をこちらに突き出していた。

 すべてがゆっくりに感じた。首を左に回して見ると、電車はもう目の前だった。そこで僕はこんなことを考えた。


「あ。今日学校行かなくていいんだ。」





おわり


 どーも、文月獅狼です。

 今回の話は「夏のホラー2020」のために投稿するお話です。しかしこっちは本命ではありません。本命は今頑張って考えています。今回はそのお試しのような感じです。もちろんこれが当選したらうれしいですが。

 よろしければポイント評価、ブクマ登録、感想等よろしくお願いします。

 また、「ジャック・イン・東京」「公安機密:事情聴取ファイル」という作品も上げております。そちらの方もよろしくお願いします。

 ではまた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにとっさに物事が起きるとタイトルのような反応になってしまいそうですね。 何があったかよくわからない状態だと特にそのように感じます。 ホームドアをケチる会社が多いからこその作品ですね。 ホ…
2020/08/23 15:42 退会済み
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