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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第九ノ巻
93/460

第九十三話 俺はパンになにをつけて食べようかな・・・

「私達の間に横たわる『異世界の壁』など取るに足らないものだと、そう確信したのです」

「食べ物だけ、だけどな」

 パンに塗る食品の名前の違いだけだけど、それ。昨日の夕食のアンモナイトもゾウリジャコも、、、見た目俺にとってはかなりの衝撃だったけど。味はおいしかった。

「え、えぇ、解っていますよ、ケンタ。高々、異世界における食文化の違いを理解し合っただけです・・・、私達」

 でも、食べ物って大事だし。アイナにそう言われてなんか俺もうれしい。


第九十三話 俺はパンになにをつけて食べようかな・・・


「―――」

 じぃっ―――、、、っとアイナは俺を見つめる。

「えぇ・・・、それでも私は先ほどのケンタとの相互理解で―――っ」

 アイナはハッとした?

「??」

 ハッとしたように一瞬目を開いたアイナは、、、そのあとその眼差しを元に戻すと、その頬を紅らめながら、その視線を横に逸らし―――。

「―――わ、私は、『私と貴方、貴方と私』とならそれを壊して共に人生を歩んでいける、そう確信したのですよ、ケンタ・・・っ」

 っ///

「お、おう・・・」

 アイナは最後まで自分の言葉を言い終える前に、ちぎりっちぎりっ指を動かし、パンを何回かちぎるとそれをぱくぱくっ―――、っと。

 あ、これ自分で言ってて、途中から恥ずかしくなったやつだな。でも途中で言うのをやめるのは気まずいし、、、やめたらやめたでかえっておかしくなるやつだ。

 ぱくぱくっ、ぱくぱくっ、っとアイナは右手でパンをちぎっては食べ、ちぎっては食べと、、、あっアイナってばっ、パンくずがぽろぽろっ。

「―――」

 アイナって、この歳でもうそんな将来の結婚のことももう間近にしっかりと意識しているんだなぁ・・・。俺はどうだろ・・・俺もしっかりと自分の将来のことを考えないと。このイニーフィネという五世界で剣士になるにあたって、なってからのことだ。


「アイナ様―――、もう少し落ち着いてお食べください」

「え、えぇ、アターシャ」

「アイナ様、どうぞ」

 っとアターシャはアイナのパン皿の横の、、、さっきは羊乳って言ってたっけ?

「あ、ありがとう、従姉さん」

 アターシャはそのアイナの杯に羊乳を継ぎ足してまた同じ場所に置いたんだ。


「・・・」

 よし、俺も食べますか。俺はアイナとアターシャから視線を外し手元を見―――って、、、そうだったよ、さっき、みんなはパンになにをつけて食べるんだろうってそんなことを思ったから、アイナはパンをどうやって食べるんだろうって、アイナの様子を見たんだった。すると、アイナはマーマレードジャムをパンにつけて食べていた。

 そうだ、アスミナさんはパンになにをつけて食べているんだろう?ふと俺は興味が湧いて、ちらりと俺はアスミナさんを見れば―――。

「へぇ―――」

 アスミナさんは、アイナのジャムとは違う。アスミナさんが自身のパンにつけているのは、真四角の薄い黄色をした、指先で摘まめるほどの大きさの立方体の・・・。うん、あれはバターをサイコロほどの大きさに切ったものだ。アスミナさんがパンに嗜んでいるのはバターだ。アイナのそのジャムとは違っていて、四角いバターをその丸いパンの窪みの中に入れていたんだ。サイコロ状のバターがその底部はパンの余熱でじんわりと溶けていて、窪みとその周囲はバターが溶け込んで、その部分だけパンがほんわり黄色くなっていてほんとにおいしそうだ。


「―――」

 アイナはマーマレードジャムだった。アスミナさんはバター。俺はどうしようかな・・・、食卓を見渡せば、、、けっこうすごい数なんだよな・・・トッピングできるいろんな調味料の種類が多い。アイナがつけていたジャムだって種類にすると、俺に一番近いいくつかのガラス器―――、そのガラス器はガラスの蓋がしてあって、ガラス器本体はプリンの容器のような形で、それが五種類ほどだ。俺から見て一番近いガラス器のジャムは淡い赤のイチゴジャムかな? そのとなりはアイナの黄金色のマーマレード。その向こうは黒・・・?なんだろあの真っ黒なジャム。それからピーマンのような鮮やかな緑色のジャムと、、、その隣は紫の。その紫はまるでアントシアニンの紫芋か、ベリーを思わせる紫のジャムが入ったガラスの器。ブルーベリージャムかな?・・・どんな味の―――?食べてみたいぞ。

「・・・・・・」

 あの紫色のやつ、、、あの五種類のジャムの瓶の中でも、なんか一際目を奪われる・・・。ま、今はいっか。他にも俺の目を惹くトッピングがあるかもしれない。

 ジャムの群れから視線を横にずらせば、そっちは小鉢に入った青のりのような緑色の粉。さすがに青のりじゃないだろ・・・じゃあ香草を粉末にしたものかな?ちいさな銀のスプーンが小鉢に付いている。

 こっちのお茶碗のような形をしたガラス器にはアーモンドのような果実が山の形で盛られている。そして、食卓の真ん中付近には・・・なんだろあれ―――、マグカップほどの大きさのガラス瓶の中には、、、まるでブドウジュースかアセロラジュースのような真紅の液体が入ってるぞ・・・、なんだろ、、、。その横の白い陶器の杯には、あわあわしたヨーグルト?のようにも見える白いどろどろの食べ物がある。

「―――」

 あのヨーグルト?もパンに付けて食べるのかな? でもここはやっぱり―――俺はあの五種類の色のガラス器に視線を戻した。

 アイナみたいにあのジャムをパンに塗って食べてみたいっ。特にあの紫っぽいジャムな。あの色合いから見て、たぶんカシスかブルーベリーのようなベリー系のジャムだろうっ―――♪。俺、一般的なジャムの中でブルーベリージャムが一番好きだ。ジャムの中に残ったベリーの実のあの食感や甘味が好きなんだ。

 あ、でもマーマレードジャムの中に入っている柑橘系のあの皮はおいしいから好きだ。ちょっとした酸味とシロップの甘味、その食感が好きなんだよな。それを知っている母さんはときどきレモンやオレンジの輪切りのシロップ漬けをときどき作ってくれたりしたっけ。

「っ」

 ふんっ、っと俺は席から立ち上がると、ジャムの一群を目指す。俺がこのパンに付けるのは、お前だッ紫!!

「ケンタ様。どの調味料をご所望ですか?」

 アターシャ?すすっと、そんな俺にアターシャが近づいてくる。

「アターシャ?」

 いや、そんなわざわざ。と、俺は内心思ったんだけど、せっかくアターシャは歩いて来てくれたんだ。アターシャの厚意をむげにできないし。

「はいケンタ様。なにかをご所望のときには私にお声かけくださいませ。さ、どうぞお席へお戻りくださいませ、ケンタ様」

 俺はアターシャにそう言われて自分の席に戻った。

「あ、うん。じゃあ、その紫のジャムを」

 俺は、指は差さずに、視線だけをその紫のジャムに向けた。えっとコンフィテューラだったっけ。

「―――っ」

 ん?アターシャ? どうしたんだろ。

「??」

 一瞬、、、アターシャの目が驚いたように見開いた? そのあとは、すぅっとアターシャはその眼差しを元に戻したんだけど―――?

「さすが、ケンタ様。御目(おめ)が高いですね」

 御目が高い?どういうこと、アターシャ?

「え?どういうこと?」

「ケンタ様がご所望のコンフィテューラは魔法王国イルシオンのシャーナ候領より取り寄せた『マナ=アフィーナ』という果実のコンフィテューラにございます」

「マ、マ―――」

 マ、『マナ=』なんだって?? え、えっと・・・あ、あやしい果物かな? 俺がその・・・マナなんとかと言いよどんでいる間にアターシャは静かに、その鮮やかな紫色のジャムが入ったガラス器を取ってくれる。しかも両手で大切そうなものを扱うのと同じ仕草だ。

「『マナ=アフィーナ』のコンフィテューラでございます、ケンタ様」

 アターシャが両手で取ってくれたその紫色のジャムが入ったガラス器。蓋も透明なガラス製だ。

「あ、うん。ありがとう、、、アターシャ・・・」

「いえ、おかまいなくケンタ様」

 アターシャはその紫色のジャムが入ったガラス器を、丁重に大事そうに両手で持って俺のところにゆっくりと、でももたもたとした動きじゃなくて、優雅と言ったらいいのかな?それとも余裕があるゆったりとした足運びで俺が座っている席まで歩いてくる。室内履きのその靴で。

「どうぞ、ケンタ様」

 そして、ことっ、っと僅かな、本当にわずかな、ガラス器が円卓に置かれる音を立て、アターシャは俺の目の前にその、紫色のジャムが入ったガラス器を静かに置いてくれた。

 その紫色のジャムが入ったガラス器のその横に、ジャムを(すく)う銀色のスプーンがガラス器の蓋のところに差さっている。しかもアターシャは俺に気を遣ってくれて、その銀色のスプーンの柄を俺が取りやすいように、俺から見て柄が右にくるようにガラス器を置いてくれたんだ。

「な、なぁ、アターシャ」

「なんでございましょう、ケンタ様」

 俺はまだ近くにいたアターシャを呼び止めた。だって、これ―――この紫色のジャムの原料の果物―――マナ=アフィーナだったか。初めて自分が食べるものの原材料を知りたい、なんて思うときもあるんだ、俺。その食べ物が、まだ自分が食べたことのない食べ物だったり、飲み物だったりしたときとか、あとは変わった珍味のような食べ物を誰かに勧められたときとかさ。

「そのマナ、、、『マナ=アフィーナ』ってどんな果物なの?」

 俺のその問いにアターシャは、すっと居住まい正す。えっと身体の向きは俺に、それから両手は重ねてお腹の上にといった感じだよ。

「はい、ケンタ様。私もそんなに詳しいわけではございませんが、『マナ=アフィーナ』という植物は胸ほどの高さの低い樹木でございます。また、その果実の大きさは指先で摘まめるほどの小さな果実でございまして、、、そうですね―――」

「・・・」

 アターシャはややっと右手を、手の平を上にして、甲を下に向けて・・・まるで水か、砂を掬うような手の平の形をとって俺にそれを見せる。

「―――、このような状態の手の平に、十数個から数十個ほどの紫色の柔らかい『マナ=アフィーナ』の果実を載せることができますよ、ケンタ様」

「へぇ―――」

 柔らかい果実ってアターシャは言ってるし、キイチゴがブドウみたいな果物なのかな?その『マナ=アフィーナ』っていう果物って。

「ちなみですが、ケンタ様―――」

 おっ、まだ少しアターシャの話が続くみたい。

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