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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第九ノ巻
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第九十一話 朝日が昇ったらぎゃーぎゃー、鳴くんですよ。かわいいですよね、トカゲ鳥

 きょとん、っとかわいくアイナはやや首をかしげて―――、

「!!」

 あぁっ、っと合点がいったように、まるで相槌を打つような表情になったんだよ。アイナは円卓の上の白い布巾を取り、きゅっきゅっと指を拭きふき。次にアイナは首をやや下にして、視線も下へ、そのゆったりとしたロングスカートのポケットから電話を取り出しんだ。

 アイナはトカゲ鳥なるそいつを電話で俺に教えてくれるのかもしれないな。



第九十一話 朝日が昇ったらぎゃーぎゃー、鳴くんですよ。かわいいですよね、トカゲ鳥


「―――」

 アイナは上品な手つきで水色の手帳型のカバーを開き、左手で電話を持ち、右手の指でちょんちょん、っと画面をいじる。

「・・・」

 そっか、電話か・・・。あっ、そういえば俺の電話だ。昨夜、電池の残量が三十パーセントを切ってて・・・えっと28%になってたんだっけ・・・。その、充電器をアイナに訊かないと。

「ケンタ―――これですよ」

「おっ」

 アイナはくるりとその電話を円卓の上に出して、くるりっと画面を俺のほうに。俺、その液晶画面になにが映っていても驚かないからな・・・っ!!もうすでに俺はアンモナイトとベレムナイトで充分鍛えられたぜっ。

 俺は自分にそう言い聞かせる。

「ほら」

 アイナは真正面の俺に右腕を伸ばし、右手に持った電話の画面を見せてくれる。

「どれどれ―――、っ!?」

 し、始祖鳥―――ですかっ!? 小型の肉食恐竜の姿に、鳥のような羽根。嘴じゃなくて、その口には細かい小さな歯がいっぱい生えている・・・。尻尾はトカゲの尻尾にふさふさ緑色の羽毛―――・・・。

 おふぅ、トカゲ鳥ってこいつのことかぁ・・・。トカゲの身体に虫系の翅が生えたようなとんでも生物じゃなくて少しよかった。よかったんだけど、、、なんだかなぁ。

「・・・」

 アイナは絵じゃなくて、俺に電話で撮った写真を見せてくれている。しかもその写真はどう見ても、森の中で撮られものじゃなくて、明らかに動植物園だよな・・・。だってその始祖鳥は羽根の付け根に生えた鉤爪と後ろ脚の鉤爪でがしっとソテツみたいなごわごわした木の幹にしがみ付いているんだもん。木の幹に対して背を低くして、まるで壁に止まっている蛾のような姿勢だ。そのずっと向こうに一緒に写りこんでいるのは、動物園や植物園の、なんていったらいいんだろ、、、。熱帯にだけ生息するような動植物だけを集めたガラス張りの建物の内側が映りこんでいるんだもん。

 すぅっ、っと視線をアイナの電話から食卓の上に。こ、これがその始祖鳥の卵で作った目玉焼きか・・・。ぱたっ、アイナは自分の電話の手帳型カバーを閉じる。

「朝日が昇ったらぎゃーぎゃー、鳴くんですよ。かわいいですよね、トカゲ鳥」

 ぎゃーぎゃーって・・・。あ、でもそれ、ニワトリのコケコッコーと一緒か、考えてみれば。

「あ、うん、かわいいよな・・・トカゲ鳥」

 俺は直接始祖鳥、、、いやトカゲ鳥を見たこともないし、知らないけどな。でも、アイナに合わせておいた。

 アンモナイトのときもそうだったけど、アイナって動物が好きなのかも。もし、そうだったらアイナを日本に連れていけるのなら、アイナと日本の動植物園や水族館でデートして、俺のいた日本の、地球の生き物を見せてあげたいなぁ。イルカとか、羊とか、ラットや、それらと触れ合うことのできる施設にアイナを連れていってあげたい。アイナと一緒に電話で写真を撮って―――

「っ」

 あ、そうそう、それだよ。電話だ。その電池だ。昨夜寝る前に俺に電話の電池の残りがあと28%だったんだよっ。充電器も持ってきていなくて―――

 朝食の料理に手を付ける前にアイナに、アイナに訊かないと。そんなアイナはその電話の手帳型カバーを閉じて円卓の下に持っていく途中で、その電話を自身のロングスカートのポケットに入れているところだ。

「あのさ、アイナ」

 と、俺は円卓の対面に座るアイナに、

「ケンタ?」

 自身の電話をそのロングスカートのポケットの中に仕舞おうとしていたアイナに声をかけたんだ。

 端子の規格も一緒だといいんだけど―――、俺は道着の衣嚢(ポケット)の中に右手を入れ、、、四角い俺の電話―――、おっあったあった。

「電池がなくなりそうでさ、これ」

 俺は懐の中で電話を掴んで、そのまま円卓の上に取り出して置いた。

「電話の電池?―――・・・ですか?」

 アイナはやや円卓の上に身を乗り出す。俺は自分の見慣れた電話を―――それを、アイナにも見えるように、、、え?アイナ?

「―――・・・?」

 アイナのやつ、なんでそんなにきょとんとしてるんだ? アイナは『ん??』と言いたげな様子で、すこしだけ首を傾げたんだよ。なんか俺、変な事でもアイナに言ったかな? 電話の充電池のことをアイナに訊いただけ・・・だよな?

「あっ、ひょっとして電気仕様にしているんですか?ケンタ」

「電気仕様?」

 電気仕様ってなんだよ?電話って全部電気だよな、動くのって?

「取りあえず電話の画面を見せてもらってもいいですか、ケンタ?」

 昨夜、電池の残量が28%だったからな。まだ電池が残っていればいいんだけど・・・。

「おう」

 すっと俺は手帳を開くのと同じ要領だ。それで電話のカバーを開けば、俺の電話の画面が真っ黒だったのが、それに反応して淡く点く。

 よかった。まだ電話は落ちてない。

「・・・」

 今の時間は朝7時24分か。七時起床だから、俺の普段の、学校がある平日とあんまり変わらないなんだよな。

 俺は電話の画面を開くいつもの指先の動作で自分の電話ロックを解除―――、画面には、たくさんのカラフルなアイコンが並ぶ。『アドレス帳』、『通話』、『カメラ』・・・、とかこれもいつもと同じ電話の画面だ。

 えっなんで!?

「っ!?」

 それは、このアイコンを見れば、次にこのアイコンを見て、、、というように、ほんとうに流れるように電話の上部に視線を移したときだ。電話の電池残量を示す小さいアイコン表示が100%になってるんだぜ!? だって昨日は電池残量が三十パーセントを切ってたのに? なのになんで今見たら電池残量が回復してんだよ?

「あれ? おっかしいなぁ・・・」

 確かに昨夜、電池残量のアイコンを見たときは28%だったのに・・・。今は100%だ。充電した覚えはないのに・・・。

「ケンタ―――」

 アイナは俺の目の前で、円卓の上に置かれていた布巾で自身の指をもう一度キュッキュッと拭く。

「・・・・・・」

 きっとアイナは念入りに手指に付いたパンの油やらなにやらを取るためにその白い布巾で指を拭いたんだよ。

 アイナはすっ、っと音もなく自分の席から立ち上がる。

「―――ちょっと触って見てみてもいいですか?ケンタの電話」

 対面のアイナは、、、円卓の脇を歩きつつ、席に就く俺の傍らでその歩みを止めた。

「お、おう」

 アイナに見せても大丈夫だよ。別にやましいものは入っていないよ、俺の電話。いかがわしいサイトのリンクも入っていないし、そもそもそんなサイトは見ていなかったし、日本でも。それに変な写真も入っていないからアイナに電話の中を見られても平気だ。

「まずはこの『設定』で―――」

 アイナはぎざぎざ丸のアイコン画像の『設定』を指でちょんっ、っと触り、、、するとみよーんっと上から下に、縦にいろんなアイコンが並ぶ。

「・・・」

 アイナって日本・・・いや日之国だっけか、その仮名文字も読めるんだな。だってアイナは迷うこともなく、『設定』を開いたんだもん。

「―――ちょっと待ってくださいね、ケンタ」

「あ、うん」

 それからついついっとアイナは指を上下に動かして、少し下へと画面を移動させる。


「―――、、、っ」

 俺の電話の画面を、ちょいちょいついついっ、って触るアイナの指って、、、細くてきれいな指だよな・・・っ。このアイナの手・・・、きっとアイナはハンドクリームとか使って手指の手入れをしっかりしているんだろうなぁ。俺はどうだろ?俺はいたって普通だ。水や石鹸で手を洗うぐらいのことしかしていない。

 それにこの・・・アイナの、、、なんて言ったらいいんだろ?いやみにはならないこのちょっと俺の鼻をくすぐるほんわか、ふわふわとしたいい匂い・・・。

「ケンタ―――」

 電話の画面から顔を上げれば、アイナは俺を見ていて、そんなアイナと視線が合う。

「っ。あ、あぁ―――っどした、アイナ?」

 でも、俺は内心。アイナに突然呼ばれて―――っ、でもアイナきみのその手とふわふわと漂ってくるいい匂いに惚けていたなんて・・・っ、そんなこと俺は正直に言えずに―――、平静を装ったんだよ。

 アイナは右手の人差し指をついっと一回動かし、つまり画面を下へとスクロールさせる。

「ここあるじゃないですか、ケンタ」

 そこは―――、

「うん」

 アイナが指で示しているところは電話の『設定』の一番主要な部分で、青で『オンオフ』機能がついているアイコンだ。セキュリティ設定や通知とかそんなところだ。

 すっ、っとアイナは右人差し指を、さっき自身の指でスクロールさせた俺の電話の画面の左端に並ぶアイコンに触れるか触れないかの距離で指し示す。

 でも、俺は、、、自分の電話の『設定』の中の、画面に映るそんなアイコンを見て、、、あれ?? あれ?こんなアプリのアイコンって前からあったかな?

「・・・―――??」

 俺の『オンオフ』機能が付いたアイコン―――、『機内モード』とか『通知』とか・・・そのアイコンはいいんだ。以前から『設定』にあった俺の見慣れているアイコンだよ。でも、その下だよ。その下に表示されている、見慣れないそのアイコンだよ。

 それら俺が見て不思議に思ったアイコン、俺の見慣れないそのアイコンはオンオフ機能がついたアイコンだ。アイナがその指で示す角が丸い四角いアイコンには『アニマ』と表示されているんだ。

 そのアイナの指がかかる『アニマ』のアイコンの下には『電気』と表示されているアイコンがある。

 その上下二段の二つのアイコン画像・・・。上の『アニマ』と表示されているほうのアイコン画像は同心円状に、『-』がぐるっと並んだ、ちょっと晴れ☀マークに近いかもしれない。下の『電気』のアイコン画像は充電中に現れるいつもの『雷』の表示だ。

 スライドで『アニマ』のアイコンはオンになっていて、片一方の『電気』のアイコンはオフになっている。

 まさか・・・これって―――

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