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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第八ノ巻
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第八十七話 追憶の祖父 一

 電池残量のアイコンや電波状況のアイコンも前と同じ―――

「あ・・・」

 電池の残量が三十パーセントを切ってる・・・!! ・・・充電器―――・・・ないや。充電器は実家の自分の部屋の机の上に置きっぱなしだ。予備の充電器と予備の電池も学校の制服の内ポケットに入れっぱなしだ・・・。おわた。

 っ。これ以上残量が減るのはやばいっ。電話を見るのはやめてもう寝よ・・・っ。


第八十七話 追憶の祖父 一


 ふっ、っと俺は電話の画面を落とす。そのせいでふたたびこの部屋が暗くなる。

 俺はいそいそ、もそもそと布団の中に潜り込み―――、

「―――、―――、・・・」

 朝起きたらアイナに訊いてみよう充電器・・・と、あと祖父ちゃんのことも。俺祖父ちゃんのこと、祖父ちゃんを、忘れているわけじゃないよ?

「祖父ちゃん・・・、・・・、・・・」

 その二つ―――、明日アイナに、・・・、・・・。


//////


・・・・・・

・・・


 その横顔がかっこいい。

『っ///』

 かっこいい、僕の祖父ちゃん。祖父ちゃんはどーじょーで、木刀をせーがん?にかまえたまま―――じぃっとかっこいい目つきなんだ。

 相手はだれもいない、けど。でもときどき僕の祖父ちゃんはこうして、ひとりで木刀をこうして、えいえいってふっていることが多いんだ。

「・・・・・・」

 じぃっ・・・/// 僕も祖父ちゃんと同じすーすーする服で、僕はどーじょーのはしに座り、祖父ちゃんをじぃっ。

『おぉっ、健太っ』

 僕にきづいた祖父ちゃんは、木刀をふるのをやめて僕のほうへにこにことやってくる。

『祖父ちゃんっ♪』

 僕は立ち上がりっ―――っ!!

『わっわわっ!!』

 つるんってねっほんとだよ!! 足がつるんってなったのっ!!

『けっ健太っ!?』

 僕は下を見ておどろく、祖父ちゃんもおどろく。

『わっ・・・!!』

 僕はつるんと滑って。僕の木刀を僕はふんだんだ。だから―――つるんって僕は顔からびたんってどーじょーの床に。いたいよぉっ!! うっく、うぅ―――、いたいよ、いたいよぉっ!!

『びえぇえええええっ!!』

 だって顔だよ。顔からかたい床にぶつかったんだもんっ。とっても痛いよ!!

『だ、大丈夫か健太っ!?』

 すぐに祖父ちゃんが僕を持ち上げてだっこしてくれるけど。

『うえぇええええっいたいよいたいよっっひっくひっく・・・』

 痛いに決まってるよっ鼻おでこ。

『ほれほれっ痛いの痛いの飛んでゆけーっ』

『ひっくひっく・・・いたいよぉっうぅうっく・・・えぐっ―――』

『ほれほれっちょっと待っておれ、健太。我慢できるな?』

『っえぐ・・・う、ひっく・・・うん』

 僕は、祖父ちゃんは僕をだっこしたまま、どーじょーを出て、お母さんのとこに。お母さんに祖父ちゃんはなんで?いっぱい頭をぺこぺこしてて。そのあと僕はお母さんとびょーいんっていうとこにいっしょに行ったのはおぼえてるよ。



・・・・・・

・・・


 僕は見たんだ、祖父ちゃんといっしょにテレビを。祖父ちゃんが大好きなじだいげきのおさむらいさんが、本物の刀でずばずばって悪いやつをたおしていて。しあいで祖父ちゃんがばったばったと相手をたおしているのとおんなじだ。

 かっこいいっ///。だから僕も。

『僕、祖父ちゃんみたいなつよいケンゴーになりたいんだっ!!』

 僕は右手に木刀を持ち、腕はだらりと下げてるよ。僕は祖父ちゃんに言ってみたんだ、どーじょーで。

『それは嬉しいことを言うのう、健太よ』

『うん!!』


・・・・・・

・・・


 それから小学生になった僕は試合にも出ることができるようになったけど、いつも対戦する強いやつに、僕は今大会でも、、、今大会でも・・・また負けてしまって―――

「―――っ、、、・・・」

 じわっ。しあい会場ではがまんしてたよ。でも、でも家に帰って、うっく・・・家に帰って、道場でぽつんとっ・・・して、たらっ―――、、、なんか・・・かなしくて、くやしくてっ・・・なみだが―――。


『うっうぅ・・ひっく、えぐっ―――』

 僕はついに

『うえぇぇえええッ!! くやしいよ祖父ちゃんッ!! しあいであいつにうっく、ひっく・・・うぇええッまた、まけ、まけ・・・』

 頬をつたって、ぽたぽたっ。僕のなみだは道場の床に―――

『これこれあまり泣くではない。泣くことは大事だが泣いてばかりじゃ次へ進めんぞ? のう健太よ』

 声。祖父ちゃんの声だ。―――いつのまにどうじょうに来てたの?

『ひっくひっく祖父ちゃん?』

 僕が振り返ると、どうじょうの入り口に祖父ちゃんがいて。道着を着てて。とことこと祖父ちゃんは僕に近づいて。ぐしぐしっ、っと僕は手でなみだをふく。

『ほれ、取りなさい、健太』

 ほら、もう僕のすぐの前に祖父ちゃんはいて、僕に木刀を。祖父ちゃんは自分のほうに木刀の先、僕には持つほうを向けて。

『・・・木刀』

 僕はゆるゆるとまだ涙にぬれるその手で祖父ちゃんがわたしてくれた木刀をとったんだ。

『健太、小剱流抜刀式を―――お主に教えよう』

『祖父ちゃん・・・?』

『だが、先ずは。稽古の前の後には必ず神坐におわす剱神様に祈ることを忘れるでないぞ、健太よ』

 つるぎのかみさま? すぅっと何歩か祖父ちゃんは僕から離れて―――

『―――』

 道場の神だなにおじぎを。

『・・・っ』

 わわっ僕もあわてて祖父ちゃんと同じように神だなにぺこり、おじぎをする。ゆっくりと頭を上げた祖父ちゃんは僕に、

『まずは儂の抜刀式の所作、身のこなしをよく見ておきなさい健太』

 って祖父ちゃんは。


・・・・・・

・・・


 先日キャンプファイアから帰ってきたばかりの暑い夏の夕方。ぽたぽたっ、っと汗が僕のおでこから顎へと流れて床に落ちる。

『くそ・・・!! なんで僕はできないんだ!!』

『健太よ、少しは休もうかのう? 汗がぼとぼとだ』

 汗ぐらいになんか僕は負けないよっ。

『ううん、僕は休憩しない!! 次の秋大会で僕はあいつに勝つんだ、祖父ちゃんっ!!』

『ほんに仕方ないのう健太よ。・・・では、せめてお茶と塩分を摂りなさい』

 苦笑いの祖父ちゃんはやかんからガラスコップにその茶色い麦茶を注いでくれた。

『うん、ありがとう祖父ちゃん』

 僕は祖父ちゃんから差し出されたお茶が入ったコップを受け取り―――

『ごくごくごくっ―――』

 一気に飲む。結露がついたような冷たいお茶じゃないから一気に飲めるんだ。祖父ちゃんが言うには冷たすぎる氷が入ったようなお茶は、かえってお腹をこわすってさ。

『これ健太。もっとゆっくりと飲みなさい』

『ごめんごめんっ』

 僕はやかんの横に空になった透明のガラスのコップを置いた。そして、やかんの横に置いてある塩飴を手に取り、やぶって口の中に。透明な塩飴は俺の口の中で、からからっと僕の歯に当たる。

 それから僕は祖父ちゃんに、

『祖父ちゃんっもう一回、『抜刀式』を見せてよ、僕にっ』

『ふっ、仕方ないのう健太よ』

 にやにや、祖父ちゃんは笑う。

『なんで笑ってるの、祖父ちゃん?』

 祖父ちゃんはにこにことしながら、よいしょってやかんの横にある白いタオルをとったんだ。

『ふふっ、儂は嬉しいんだよ。健太』

 うれしい? なにがうれしいのかな、僕の祖父ちゃん。

『??』

『それはいずれ、健太。お主にも解ることだろうて。と、その前に健太、汗でも拭こうかの?』

 祖父ちゃんはその手に白いタオルを持ち、それで僕の頭を、次におでこ、その次は顎を優しくさわさわ、と。

『っ。う、うん・・・』

 お主にも分かるだろう、って祖父ちゃんはときどき僕にわからないことを言う。そんな祖父ちゃん。僕が祖父ちゃんの言ったことをわからなくても、僕の祖父ちゃんは怒ったりぶつぶつは言わないよ。


『・・・では健太、もう一度儂の所作をしっかりと見ておれ』

『うん!!』

『まずはこう―――鞘付き木刀を腰に差し、右脚を半歩前に出して腰を落として』

『―――』

 祖父ちゃんは腰をおとして。僕の目の前で祖父ちゃんは左の手を木刀に右の手で持ち手を握る。

『っ』

 祖父ちゃんの目・・・きつくてちょっとこわいっ。

『小剱流抜刀式・・・刃一閃』

『―――――――――っ///』

 でもかっこいいっ///


『どうだ、健太? しっかりと見ておったか?』

『うんッすっげー!! 祖父ちゃんすっげーッ!! これを僕ができたら毎年、決勝で毎回敗けるあいつを倒せるよッ祖父ちゃん!!』

 どうしたの?祖父ちゃん。そんなにいきなりこわくなって。祖父ちゃんのその目、目つきだよ。

『浮かれるではない健太よ』

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